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 どこを見ても建物がある場所に来ました。

 本当に、右を見ても左を見ても正面を見ても、建物があります。建物がないのは上・・・



「高い・・・」

「商業ビルだ。あっちに見えるのがホテルで、もっと先に見える白い建物がデパートという、建物の中にある商店街みたいなものだ。」

「はぁ・・・とにかくすごいですね。」

「お前がいた世界よりは、発展しているようだからな。いろいろ驚くことはあると思うが、なるべく声は上げないように。そうだ、俺の腕に捕まっていろ。」

「は、はい。」



 私は彼の腕にしがみつきました。実は、ちょっと怖かったりしています。だって、こんなに大きな建物に囲まれているんですよ?威圧感があるんです!



「お化け屋敷に行った、みたいになっているな。」

「お化け屋敷?」

「・・・今度行こう。まずは、子供向けの遊園地から行って、いずれ絶叫アトラクションがあるところにも行くか。」

「よくわからないですが、よろしくお願いします。」

「あぁ、任せろ。とにかく今日は、買い物でもするか。服は・・・量販店で買うが、数着はオーダーメイドで仕立てる。靴も10足くらい・・・そのうち2、3足はオーダーメイドにする。」

「???」

「お前は、とりあえず人間社会に慣れてくれればいい。」

「わかりました。」



 まず私たちが向かったのは、デパートと呼ばれる場所です。

 そこで、色々な服を見て、靴を見て、彼は私に似合うものを選び買いました。私の好みを聞かれたのですが、私の好みというものが分からなくて彼に任せた結果です。

 どうやら、彼のイメージでは、私は白が似合うようです。ひらひらのかわいい白い服だとか、スカートだとかを選んでくれました。次に多かったのはピンクです。



「さすがに、下着は自分で選んでくれ。俺はここで待っているから。」



 デパートの雰囲気に慣れてきた頃、彼はそう言って下着を売るお店に私を送り出しました。なぜこのお店だけ一人でなのか不思議でしたが、きっと一人でも買い物ができるようにと練習をさせてくれているのだと思いました。



「・・・これ、何でしょうか?」



 ほとんどの商品に、パンツと対になるような独特の形をしたものが売っています。パンツと別々に売っている物もあれば、一緒になって売っている物もあるので、おそらくそろえて買うものなのでしょう。



「・・・あ。」



 ふと、店内にある絵を見れば、女性がパンツの対になっている布で胸を隠しています。こうやって着る物なのだと理解して、両方購入することにしました。

 色は・・・汚れの目立たないものにして、これとこれで。



 彼に言われた通り10着選んでレジに向かいました。

 前の店で、彼に教えられて会計を済ませたので完璧です。この黒いカードを出せばいいのです!



「お客様、サイズはこちらでよろしかったでしょうか?」

「???」



 サイズ?

 そういえば、洋服を買ったときにもそのような言葉を聞きました。



「ご試着してみてはいかがでしょうか?」

「えーと、試着って何ですか?」

「あそこの試着室で、商品を試しに着ていただくことができます。自分に合ったサイズがどうかは、試着していただいた方がわかるかと。」

「そうなんですね。なら、試着させてください。」

「かしこまりました。こちらへどうぞ。」



 それから、四苦八苦しながら試着を済ませて、自分のサイズとやらを把握しました。どうやら、最初に選んだサイズは小さすぎたようです。

 あれを買っていたら、胸が苦しくて仕方がなかったです。店員さんに感謝ですね!



「無事買えたようだな。」

「はい!これで買い物は完璧ですね!カード、ありがとうございました!」

「それはお前のカードだ。」



 カードを返そうとする私に、彼は当然のように言いました。



「え、でもこれ・・・大切なものですよね?私がもらっていいのですか?」

「あぁ、お前のものだからな。そうだ、財布も買っておくか。あとは、バッグも。」

「???」

「そのカードをしまっておく入れ物と、さらにそれをしまう入れ物だ。ポケットに入れておくのは不用心だからな。わかったら買いに行くぞ。」

「はい!」



 人間とはこういうものなのでしょうか?



 清潔な寝床、おいしいご飯。たくさんの洋服、靴。優しく接せられて、心がくすぐったくなるような日々。

 これが、人間の世界。



「・・・」



 どうして、私はリスフィに生まれたのでしょうか。

 なぜ、人間と魔物は違うのでしょうか。



 その答えは、いまだに出ません。





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