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 この世界に来て、一週間が経ちました。

 そう、この世界です。私は、ここが別の世界だということを認めました。



 だって、この世界は私がいた世界より明らかに発展しています。移動手段一つとっても、見たことも聞いたこともないものを使うのです。列車や車と呼ばれるもの。名前も聞いたことがないそれを見て、私はここが過去ではないことを認めることにしました。



 別に、過去にこだわりがあるわけではありませんから。





 私は、彼に自分自身のことを包み隠さず話しました。約束では、マギを見せてはいけないということでしたので、話すだけにとどめました。話していけないのは、飼育員様だけですからね・・・屁理屈だとは思いますが。



 それから、彼の好意で彼の家においてもらっています。

 彼は貴族の子息で、家のことはメイドや執事などが行うからと、私は自由に過ごさせてもらっていますので、文字を勉強することにしました。

 文字は、前の世界でも少しだけ学びましたが、この世界で使っている文字は全く別物で、一から学ぶことになりました。



 この世界では、識字率というものが高いらしいですが、私の世界では低く私が多少学んだくらいでも重宝される程度です。

 なぜ私が文字を学んでいたかというと、それが魔物園の必修科目だったからです。他にも、チェスや詩なども学びました。



 とりあえず、どこに出ても恥ずかしくない程度に学びたいと思います。そのためにはまず、文字を覚えることが先決でしょう。



 文字さえ覚えれば、本を読むだけで知識を得られます。







 もう少し、この家・・・屋敷での生活をお話ししましょう。

 彼の家族は関りがなく、遠目から彼の姉と思われる人物を見ましたが、他の家族は見たことがありません。いるにはいるそうですが。



 彼は、学生という身分らしく、朝食を食べ終えると夕食までどこかへ出かけていきます。最初は狩りに出ているのかと思いましたが、それは休日に行くようで・・・私と出会ったのは休日だったようですね。



 なので、私は夕食まで一人でいるため文字を覚えるために、絵本を読んでみたり彼が書いてくれた文字を眺めたりしました。

 彼が書いたのは、私の名前と彼の名前、魔物、リスフィ、マギといった、私が彼に話した内容に関する単語です。これはもうすでに覚えましたが、肝心の彼の名前はいまだに読めません。



 文字は覚えました。文字だけは。読み方が分からないのですよ。





「これが、リリ・・・そして、これが俺の名前だ。」

「・・・長いですね。」



 私の名前の何倍あるのでしょうか。彼の名前は文字数が多いです。



「家名もあるからな。」

「そうですか。」

「あぁ。」

「・・・」





 と、いうように・・・結局彼の名前の呼び方はわからなかったのです。だからと言って、聞くのは気が引けます。

 そんなこんなで、彼のことを心の中では「彼」と呼び、面と向かっては「あなた」と呼ぶ生活が一週間続いて、慣れました。もう、これで最後まで行こうかと思います。



 ようは、相手に伝わって、自分が分かればいいのですから!





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