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4 家
しおりを挟む大きな家に来ました。ここは、きっと彼の家なのでしょう。
門をくぐると、数名の男性が近づいてきます。私より先に馬から下りた彼は、軽く腕を広げてこちらを見ます。
「受け止めるから、俺に向かって飛び降りれるか?」
「はい。」
私は躊躇なく馬から飛び降りて、彼の腕に飛び込みました。彼は、しっかりと私を抱きとめて、ゆっくりと降ろしてくれます。
「立てるか?」
「はい。」
私がしっかりと地面に立つと、彼はゆっくりと離れていきました。
「坊ちゃま、そちらの方は?」
「拾ってきた。」
「坊ちゃま!?」
「馬を頼む。あと、この子は整えたら俺の部屋に連れてきてくれ。」
振り返った彼が、私の頭に手を置きました。
「しばらく離れるが、余計なことは話すな。・・・とりあえず、俺以外とは「はい、いいえ」で会話をしておけ。」
「はい。」
「俺以外とは、な?」
「はい。」
「・・・」
複雑そうな顔をして、彼はどこかへと行ってしまいました。
「私は、執事長のバルマと申します。それでは、ご案内いたします。」
「はい。」
バルマ・・・覚えられますかね。実は、彼の名前ももう忘れてしまって・・・馬の名前はマカと2文字で覚えやすかったのですが、彼は5文字以上ありましたよね・・・なんとか、なんとか・・・と区切っていたのは覚えていますが。
この・・・バルマでしたら知っていると思いますが、彼に会話を禁止されているので聞くことはできませんね。
途中でバルマと別れた私は、メイドと呼ばれる女性に体を洗われました。その際、首輪を外されそうになったので必死に抵抗しました。
何も言われていませんが、この首輪を外すのは危険だと私にもわかります。そうです、飼育員様に言われたからではなく、魔法の効果が切れて羽が現れてしまうので。
魔物だということは、隠すべきでしょう。
それから、かわいいワンピースを着せられて、私は彼のもとまで案内されました。
羽があるはずですが・・・特に問題なく服を着られたのは不思議ですね。
「そこに座ってくれ。食事にしよう。」
案内されたのは、彼の執務室らしいですが、ここで食事をとるようです。
私が彼の正面のソファに腰を掛けると、目の前のテーブルに次々と食事が運び出されました。あたたかそうで、豪華な食事。思わずお腹が鳴ってしまいます。
「よかった。主食は人間ではないようだな。」
「そ、そんな、食べませんよ!?」
「だよな。」
2人きりになって最初の一言がこれだったので、かなり驚きました。まさか、私たち魔物の主食が人間だと思われているなんて。人間・・・他の魔物はわかりませんが、私たちリスフィは、人間に近い姿をしています。そんな私たちが人間を食べるなんて、あり得ないでしょう。共食いですよ?
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