三題噺を毎日投稿 3rd Season

霜月かつろう

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当主・常習・酒乱

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 当主の姿を見かけなくなってから、しばらくの時間が経った。屋敷で働いている使用人達も徐々に噂をする機会が増えていっているのが分かる。やれ当主様が病気だの。奥様と盛大な喧嘩をして怒って出ていってしまったとか。跡継ぎである息子の破天荒ぶりが近所の話題になってしまい、恥ずかしさのあまり顔を出せないとか。そもそもすでに亡くなっていて、跡継ぎ争いに決着がつかずに公に出来ない。なんて話まである。

 すべてが眉唾物のようで、すべてに現実味がある。

 それはこの屋敷がこの地方で一番大きな敷地面積を誇り、代々継承される名家の住まう場所だからにほかならない。

 普通の家だったら鼻で笑ってしまいそうな話にもどこか無視できない説得力がある。

 そして使用人の中でも特に当主に近しい人達はみんなが口を揃えて閉じっぱなしだ。

 質問は一切受け付けませんの一点張り。その態度が噂の広がりと多様性を膨らませている。それを分かっていても具体的な対策が練られないのだから。本当に当主様になにかがあったのだろう。そうに違いないと決めつけていしまっている。

 当主は特に変わったところはない人だ。多少、頑固だったとは思うが使用人ひとりひとりに気を使ってくれる優しい人だ。屋敷も大事にしていたし、人との関わりを大切にする責任感のある人だ。酒乱でもないし、健康にも気を使っていた。急に倒れる要素は少ないように思えた。

 ひとりいろいろな想像を膨らませてもなにも導き出せやしない。大体、使用人のひとりが必死に考えたところでなにか答えにたどり着けるはずもない。たどり着いたところでなにかが出来るわけでもない。

 息子であればこんなことは常習犯で、姿を見せないこともしょっちゅうだ。しばらく姿をみなくても心配もされない。

 あれ? ふと思い当たる。実際姿を見ていない息子。彼はこの非常事態にどこへ……。
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