三題噺を毎日投稿 3rd Season

空気正常機・神格化・ブレンド

　信者にどれだけ、熱意を伝えるか。今日の仕事はそこに注力していけば問題ないはずだ。もはや信者たちはそのフェーズまで順調に育っている。それはこれまでの努力が報われたからにほかならない。

　空気正常機と名付けられたその機械を販売するのが今回のセミナーの目的だ。空気を洗うのではなく正常な状態に戻してあげるという機能を持った機械だ。

　販売していてなんだが正直どんな機能なのか分かっていない。そもそも空気が正常な状態とはなんだ。時分で説明していて理由が分からなくなることもある。と言うか毎回自分にツッコミながら説明をしている。それでも熱は込めなくてはならない。非常に厄介な仕事。これど、ここまでみんなよく頑張った。熱を込めれば売れるところまできたのだ。

　最初はそんなことはなかった。だれもが空気を正常になんて信じるなんてしなかっった。信じるようになったのはひとえにみんなで作り上げた教祖のカリスマ力の賜物だ。

　教祖の影響力はもはや神格化したと言っても過言ではない。どんな機能を持っているか分からない空気正常機だって売れる。それも信じられないくらいに。

　色々な神をブレンドしたみたいな教祖を支える教団。その実体は徐々に大きくなりつつある。それはそれで新たな問題も出てくる。信者たちがそれぞれの教祖を作り出し始める。理想を押し付け合うのだ。

　ふっ。そんなことを考えなきゃいけないなんて贅沢な悩みだと、過去の自分が知れば思うだろう。思えば遠い所まで来た。

　さて、そろそろ時間だ。教祖が教祖になるために大きく息を吸い込む。普通の人間から神へ変化するための儀式。

　空気を正常にしなければ組織は空中分解してしまうのだ。ただしい姿に戻さなくてはならないのだから。