三題噺を毎日投稿 3rd Season

ダイナー・召使い・言語道断

　そこはよくあるアメリカンダイナーだった。

　出された料理もありきたりなものばかり。それが目当てで入ったのだから特段文句もあるはずもない。胃袋にしみていく脂分がたまらない背徳感がたまらなくいい。

「おいっ。いつになったら頼んだ料理が出てくるんだ。こっちとは腹が減ったから来てるんだ。さっさとしてくれ」

　そんな怒号が飛び交うのも珍しいことでもない。あらっぽい客が多いし、それを来にするような店でもない。

「ああ。そうだろうよ。腹が減っている以上、こっちの言うことを聞かないと後回しにされちっまうよ。それが当然わかった上での態度なんだろうよ」

　騒がしい客を避けて、次々と料理を運ぶ給仕は毅然とした態度で対応し続ける。小柄な女性であるにも関わらず屈強な男たちに気圧されている様子が微塵もない。その堂々としている様子に誰もが押し黙る。

　けれど、それも一瞬だ。だってこんなやりとりは毎日のように繰り返されている。

「よぉし。いいこだ。給仕は召使いじゃないんだ。美味しくご飯を食べたいんなら。こっちの言うことを聞くんだな」

　そこまでしも明日にはきっと元通りだ。騒がしい連中が、騒がしく食事の催促をするのだ。変わらない日常。それこそがこのダイナーで食事をする醍醐味でもある。家でひとりで食事をしていたときには絶対に味わえなかったものがそこにはあった。

「そこのお前も。ひとりでゆっくり食べれると思ったら言語道断だ。こっちへきて、食事を楽しむんだな」

　巻き込まれたけれど。決してそれが嫌な訳では無い。そのことがなんとも言えない心地よさを与えてくれていた。