128 / 145
行燈・一輪挿し・ギャンブラー
しおりを挟む
行燈《あんどん》から漏れでる光は、まろやかになり包むようにしてこちらまで届く。淡い光なんて言葉が似合う雰囲気の中。畳の上でこの場の全員が真剣な眼差しを向けている先は赤と黒が並んだマット。そのマットの上には大量のチップが置かれている。
置かれている場所には数字が書かれている。
そして着物に身を包んだ女性の一挙手一投足に集中する。若い女性だ。おそらくここの運営に雇われたのだろうが、それだけで十分の実力であることはうかがえる。実際、これだけの人に囲まれれば普通はたじろいだりもするだろうけれど、どうどうとしている。
そして右手を構えると。勢いをつけてその右手の中に潜ませておいた金属のボールを勢いよく回転するルーレットへと投げ込んだ。その瞬間だれもが息を呑むのが分かる。全員でそのボールの行方を見守る。
先輩ってギャンブル好きでしたよね?
会社の後輩からの突然の誘いの切り出しはそんな一言だった。たしかにそんなような話しをしたことがある。でもそれはちょっと話の趣旨がズレて認識されている。ギャンブル自体が好きってわけじゃない。行動の指針としてギャンブル寄りの思考をしてしまうと言うだけだ。
分の悪い賭けが嫌いじゃない。人生の選択もそんな風に決めて来た。受験も、就職も。周りなら選択しないようなところを選んだ。ちいさいところで言えば昼食の店選びだってあえてレビューが低い方を選んだりもする。それはちょっとしたスリルを味わいってだけだ。
それがまさか、本当のギャンブルをすることになろうとは。
こんなに赤と黒を意識したことは人生でない。赤いか黒いかだけで人生が変わってしまうと感じるのも初めてだ。
ルーレットをやったことなんてない。賭け方すらも知らなくて恥ずかしながら後輩へ聞いた。色々考えた結果最初は、手堅く色だけで賭けようとしたら、後輩に少し笑われたのだ。
全然ギャンブル好きって感じじゃないですね。
イラッとして手持ちのチップをすべて賭けたとき、周りがざわついた。そりゃそうだ。あり得ない金額。なんなら全財産だ。これまで積んできたものをすべて失うつもりの賭け。
赤。
その色に賭けたのは単なるゲン担ぎ。まるで一輪挿しのように髪の毛に刺さっているかんざしがディラーである女性が入ってきたときから目立っていたのだ。行燈の明かりに照らされ、ひときわ目立つ赤い色をしている。
それを見たときから最初は赤に賭けようと決めていた。
赤よこい、赤。赤しかないだろ。50%の確率で当たるのだ。増え額は少ないけれど、同時に十分な額でもある。しかし外せば真っ逆さま。決して分の悪い賭けではない。けれど賭けているものが大きすぎて釣り合っていない。
だからこれは分の悪い賭け。
俺は生粋のギャンブラーなのだ。それを見せつけるように後輩に視線を送るが、後輩の視線はボールの行方に釘付け。
ボールが止まる寸前だったのだ。慌ててルーレットへと視線を戻す。
赤か黒か。
最期。悲鳴のような叫び声を聞いた。
それが誰のものだっのか。覚えていない。薄暗い空間からはっきりとした光を浴びる場所をへと出たとき。自分がまるで生まれ変わったみたいに思えた。
置かれている場所には数字が書かれている。
そして着物に身を包んだ女性の一挙手一投足に集中する。若い女性だ。おそらくここの運営に雇われたのだろうが、それだけで十分の実力であることはうかがえる。実際、これだけの人に囲まれれば普通はたじろいだりもするだろうけれど、どうどうとしている。
そして右手を構えると。勢いをつけてその右手の中に潜ませておいた金属のボールを勢いよく回転するルーレットへと投げ込んだ。その瞬間だれもが息を呑むのが分かる。全員でそのボールの行方を見守る。
先輩ってギャンブル好きでしたよね?
会社の後輩からの突然の誘いの切り出しはそんな一言だった。たしかにそんなような話しをしたことがある。でもそれはちょっと話の趣旨がズレて認識されている。ギャンブル自体が好きってわけじゃない。行動の指針としてギャンブル寄りの思考をしてしまうと言うだけだ。
分の悪い賭けが嫌いじゃない。人生の選択もそんな風に決めて来た。受験も、就職も。周りなら選択しないようなところを選んだ。ちいさいところで言えば昼食の店選びだってあえてレビューが低い方を選んだりもする。それはちょっとしたスリルを味わいってだけだ。
それがまさか、本当のギャンブルをすることになろうとは。
こんなに赤と黒を意識したことは人生でない。赤いか黒いかだけで人生が変わってしまうと感じるのも初めてだ。
ルーレットをやったことなんてない。賭け方すらも知らなくて恥ずかしながら後輩へ聞いた。色々考えた結果最初は、手堅く色だけで賭けようとしたら、後輩に少し笑われたのだ。
全然ギャンブル好きって感じじゃないですね。
イラッとして手持ちのチップをすべて賭けたとき、周りがざわついた。そりゃそうだ。あり得ない金額。なんなら全財産だ。これまで積んできたものをすべて失うつもりの賭け。
赤。
その色に賭けたのは単なるゲン担ぎ。まるで一輪挿しのように髪の毛に刺さっているかんざしがディラーである女性が入ってきたときから目立っていたのだ。行燈の明かりに照らされ、ひときわ目立つ赤い色をしている。
それを見たときから最初は赤に賭けようと決めていた。
赤よこい、赤。赤しかないだろ。50%の確率で当たるのだ。増え額は少ないけれど、同時に十分な額でもある。しかし外せば真っ逆さま。決して分の悪い賭けではない。けれど賭けているものが大きすぎて釣り合っていない。
だからこれは分の悪い賭け。
俺は生粋のギャンブラーなのだ。それを見せつけるように後輩に視線を送るが、後輩の視線はボールの行方に釘付け。
ボールが止まる寸前だったのだ。慌ててルーレットへと視線を戻す。
赤か黒か。
最期。悲鳴のような叫び声を聞いた。
それが誰のものだっのか。覚えていない。薄暗い空間からはっきりとした光を浴びる場所をへと出たとき。自分がまるで生まれ変わったみたいに思えた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》
小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です
◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ
◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます!
◆クレジット表記は任意です
※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください
【ご利用にあたっての注意事項】
⭕️OK
・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用
※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可
✖️禁止事項
・二次配布
・自作発言
・大幅なセリフ改変
・こちらの台本を使用したボイスデータの販売
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる