124 / 145
トカゲ・三面鏡・馬の骨のお面
しおりを挟む
「えっ。なにこれ。馬の骨のお面?」
彼氏の家に初めて訪れるなり見事に驚いてしまい口にしてしまった。いや、だって1LDKの部屋の入口にあるものではない。
「ねえ。これって本物なの?」
驚いたことすら気にもしないで部屋の奥へと進んでいってしまって、慌てて引き止める。
「えっ。ああ。本物だよ。それがどうかしたの?」
ひとりで驚いている自分がおかしいのかと思うほどあっさりした返事だ。訪れた人たちは全員同じ反応をするんじゃないかと思うのだが、違うのだろうか。
「どうかしたって。なんでこんなの飾ってあるのよ。普通じゃないって」
「なんだよ普通って。自分の常識を押し付けんなよ」
ちょっと不機嫌になっている辺りが意味が分からない。不安になりながらも慌ててあとを追う。
「ねえってば。どういうことなのって」
リビングに足を踏み入れた瞬間再び、驚いて身体が硬直してしまった。
部屋中が民族的なもので飾り付けされており、異様な空間が広がっていたのだ。その中でも目に飛び込んできたのは大きな三面鏡だ。鏡自体はそんなに驚きはしないが、その前に置いてあるものが問題だった。
大きな木彫りの人形。それを民族的なものを感じる。東南アジアの島とかにありそうな造形をしている。それが三面に映し出されて儀式でもしているかのような光景。
「えっ。何この部屋」
思わず本音が口から飛び出た。聞かれでもしたらもっと機嫌を損ねかねない。おそるおそる、彼の様子を伺うけれど、気にしていない様子だったのでホッとする。
「ねえ。これって趣味なの?」
止まらない好奇心はその質問をしてしまう。
「ああ。趣味っていうか、産まれてからずっとこんな感じだからさ。こうじゃないと落ち着かないんだよね」
え。そうなんだ。そうとりあえず頷くことしか出来ない。ちょっと付き合ったこっとを後悔し始める。
別れようかな。そう考え始める。
「どうしたんだよ。とりあえずそこ座れよ」
そこ? 彼は椅子に座ったけど他に座る場所なんてない。
「そこってどこ?」
「そのトカゲだよ。クッション代わりにつかえるからさ」
トカゲ? とっさに想像したのは可愛らしいぬいぐるみ型のクッション。けれど……。彼が指さしたのはオオトカゲの剥製。はっきりとその皮の感触も残ってそうなそれに座れというのだ。
「うん。とりあえず別れよ。ちょっと私は選択を間違ったみたい。じゃね」
「おいっ。とりあえずってなんだよ。俺が何したって言うんだよ」
「うん。それが分かったら、また声かけてね。じゃ」
馬の骨のお面にもう一度驚きながら、彼の家を慌てて立ち去った。
とりあえずで付き合うのはもうやめよう。そう決意していた。
彼氏の家に初めて訪れるなり見事に驚いてしまい口にしてしまった。いや、だって1LDKの部屋の入口にあるものではない。
「ねえ。これって本物なの?」
驚いたことすら気にもしないで部屋の奥へと進んでいってしまって、慌てて引き止める。
「えっ。ああ。本物だよ。それがどうかしたの?」
ひとりで驚いている自分がおかしいのかと思うほどあっさりした返事だ。訪れた人たちは全員同じ反応をするんじゃないかと思うのだが、違うのだろうか。
「どうかしたって。なんでこんなの飾ってあるのよ。普通じゃないって」
「なんだよ普通って。自分の常識を押し付けんなよ」
ちょっと不機嫌になっている辺りが意味が分からない。不安になりながらも慌ててあとを追う。
「ねえってば。どういうことなのって」
リビングに足を踏み入れた瞬間再び、驚いて身体が硬直してしまった。
部屋中が民族的なもので飾り付けされており、異様な空間が広がっていたのだ。その中でも目に飛び込んできたのは大きな三面鏡だ。鏡自体はそんなに驚きはしないが、その前に置いてあるものが問題だった。
大きな木彫りの人形。それを民族的なものを感じる。東南アジアの島とかにありそうな造形をしている。それが三面に映し出されて儀式でもしているかのような光景。
「えっ。何この部屋」
思わず本音が口から飛び出た。聞かれでもしたらもっと機嫌を損ねかねない。おそるおそる、彼の様子を伺うけれど、気にしていない様子だったのでホッとする。
「ねえ。これって趣味なの?」
止まらない好奇心はその質問をしてしまう。
「ああ。趣味っていうか、産まれてからずっとこんな感じだからさ。こうじゃないと落ち着かないんだよね」
え。そうなんだ。そうとりあえず頷くことしか出来ない。ちょっと付き合ったこっとを後悔し始める。
別れようかな。そう考え始める。
「どうしたんだよ。とりあえずそこ座れよ」
そこ? 彼は椅子に座ったけど他に座る場所なんてない。
「そこってどこ?」
「そのトカゲだよ。クッション代わりにつかえるからさ」
トカゲ? とっさに想像したのは可愛らしいぬいぐるみ型のクッション。けれど……。彼が指さしたのはオオトカゲの剥製。はっきりとその皮の感触も残ってそうなそれに座れというのだ。
「うん。とりあえず別れよ。ちょっと私は選択を間違ったみたい。じゃね」
「おいっ。とりあえずってなんだよ。俺が何したって言うんだよ」
「うん。それが分かったら、また声かけてね。じゃ」
馬の骨のお面にもう一度驚きながら、彼の家を慌てて立ち去った。
とりあえずで付き合うのはもうやめよう。そう決意していた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》
小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です
◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ
◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます!
◆クレジット表記は任意です
※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください
【ご利用にあたっての注意事項】
⭕️OK
・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用
※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可
✖️禁止事項
・二次配布
・自作発言
・大幅なセリフ改変
・こちらの台本を使用したボイスデータの販売
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる