三題噺を毎日投稿 3rd Season

霜月かつろう

文字の大きさ
上 下
116 / 145

箱・花粉・山

しおりを挟む
 空っぽになったティッシュ箱の山を見て自分の症状のひどさに頭を抱えたくなる。

 昨日は暖かったしなぁ。

 花粉症を発症がしたのはいつかなんて覚えていない。気がついあたら鼻はむずむずするし、ティッシュを鼻に押して受けていた。あまりに子どものころなので当然みんなもおなじ時期があるのだと思っていた。

 それが花粉症だとしったのは大人になってからだ。

 それも年々ひどくなっている気がするので、空っぽになったティッシュ箱を積み上げてみたら自分でも目を疑うほどに積み上がっている。

 当然のことだが、市販の薬は飲み続けている。病院で詳しい検査をしたことはないが、いったところですぐに治すことができるわけでもないので足を運ぶのをためらっているのだ。

 で、結局。こうやってティッシュを消費し続けることしかできない。ゴミ箱の中もかんだあとのゴミで溢れそうになっている。

 これが鼻だけならいいのに、目からも涙が出るし、頭も痛くなり、歯茎もじんじんしてくる。もう熱がでてても驚きやしない。まったくもって風邪の症状と何も変わらない。

 ほんと勘弁してほしいよ。今日中に終わらせなきゃいけない作業もあるというのに。ちっとも症状は収まる気配を見せない。

 しかたなくパソコンの前に座ってキーボードに手を置くがすぐさまティッシュ箱に手が伸びる。そして積み上がる箱。

 この箱が自分の中からは触れだす水分を吸い込んでくれたのだ。その犠牲には感謝しなくてはならない。だが、だからといってどうにか成るわけでもない現状に頭を抱える。

 いくら犠牲を払ったところで何かが軽くなるわけではないのだ。とってもとっても水分は顔面から抜けていき続ける。するとコップの水を飲み干す。するとまだで始める。この無限ループ。でもティッシュは無限ではない。

 ふと、水分も無限ではないのかもしれない。自分の身体からすべての水分が抜け出ていってしまう可能性だってあるのか。そう思い始めると段々と怖くなってきた。

 もしかしたらこのまま動けなくなってどうにもならなくなる未来が待っているのかもしれない。そう思わせるだけの力が積み上げられたティッシュ箱にはあった。

 明日、少しでも元気になったら病院を調べてみよう。

 そう決めた瞬間だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》

小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です ◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ ◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます! ◆クレジット表記は任意です ※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください 【ご利用にあたっての注意事項】  ⭕️OK ・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用 ※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可 ✖️禁止事項 ・二次配布 ・自作発言 ・大幅なセリフ改変 ・こちらの台本を使用したボイスデータの販売

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

意味が分かると怖い話【短編集】

本田 壱好
ホラー
意味が分かると怖い話。 つまり、意味がわからなければ怖くない。 解釈は読者に委ねられる。 あなたはこの短編集をどのように読みますか?

処理中です...