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さそり・家康・背表紙
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徳川家康。
その肖像画を教科書で初めて見たとき、正直こんな人が天下を取ったのかと驚いたのを覚えている。それも非常に長い間をトップに君臨するのだ。不思議なものだと思う。だって、家康が天下を取らなかったら自分も生まれない可能性だって高かったのだ。そう思うと不思議でならない。
教科書をパラパラめくるけれど、どれもこれも同じなんだなと思うと感慨深い。この中のひとりでも欠けていたら今が変わってしまっていたのかと思うと、やっぱり不思議でならない。
「なに悩んでるんです?」
後ろから声をかけられて驚きはするが、態度には出さないように気を付ける。ショートカットの女の子は同い年のはずなのにちょっぴり若く見えた。
春。新しい生活の第一歩でそんな醜態はさらしたくはない。
「う、ううん。新しい教科書眺めているだけだよ」
「そう? その割にはずっと悩んでたみたいだったから」
とてもじゃないが、教科書に載っている歴史上の人物を見て、自分の生まれた意味を考えていたなんて。言えやしない。
「そうかな。そんなことないよ?」
言えないのだからごまかすしかない。
「そっか。ねえあなた何座? 私はさそり座なんだけどね」
「えっと。うお座だよ」
突然の質問に戸惑いながらも一応思い出しながら答える。星座占いってやつかな。あんまり気にしたことないんだよな。
「ほんとっ? 相性バッチリだよ。これからよろしくね」
初めての場所で知らない友達が出来た。これもまた、偉人がひとりでもいなかったりしたらこの出会いもなかった可能性だってあるんだ。
「うん。よろしくね」
そう手を差し出した。後ろの彼女もおなじように手を差し出してくれる。そして握り返してくる。その手は優しくて柔らかかった。
「あれ? ねえ。その背表紙なんか変じゃない?」
そう思っていたら急にそんな指摘をされた。驚いて確認する。歴史の教科書なのに、背表紙には数学の文字。あれ。誤植ってこと?
「えっと。これって私だけ?」
「そうみたい。私の教科書は普通」
「で、でも、中身があってるから大丈夫だよね」
よく分からないが慌てる。きっと交換もしてくれるはずなのになんでか不安になってたまらない。
「大丈夫。ほら、中身一緒……?」
あれ。ホントだ。違うかもしれない。もしかしてひとりでも教科書に載っている人が違ったらこんなことになっていなかったなのかもしれないと。そう思ってしまった。
その肖像画を教科書で初めて見たとき、正直こんな人が天下を取ったのかと驚いたのを覚えている。それも非常に長い間をトップに君臨するのだ。不思議なものだと思う。だって、家康が天下を取らなかったら自分も生まれない可能性だって高かったのだ。そう思うと不思議でならない。
教科書をパラパラめくるけれど、どれもこれも同じなんだなと思うと感慨深い。この中のひとりでも欠けていたら今が変わってしまっていたのかと思うと、やっぱり不思議でならない。
「なに悩んでるんです?」
後ろから声をかけられて驚きはするが、態度には出さないように気を付ける。ショートカットの女の子は同い年のはずなのにちょっぴり若く見えた。
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「う、ううん。新しい教科書眺めているだけだよ」
「そう? その割にはずっと悩んでたみたいだったから」
とてもじゃないが、教科書に載っている歴史上の人物を見て、自分の生まれた意味を考えていたなんて。言えやしない。
「そうかな。そんなことないよ?」
言えないのだからごまかすしかない。
「そっか。ねえあなた何座? 私はさそり座なんだけどね」
「えっと。うお座だよ」
突然の質問に戸惑いながらも一応思い出しながら答える。星座占いってやつかな。あんまり気にしたことないんだよな。
「ほんとっ? 相性バッチリだよ。これからよろしくね」
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「うん。よろしくね」
そう手を差し出した。後ろの彼女もおなじように手を差し出してくれる。そして握り返してくる。その手は優しくて柔らかかった。
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