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オカマ・罠・合法
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罠と聞いてなにを思い浮かべるかは人それぞれだと思う。狩りに使う本格的な罠だったり、子どもの頃に仕掛けた落とし穴だったり、授業中の先生の何気ない一言にテスト範囲を騙されたり、ハニートラップだったり、カードゲームだったり。けれど、目の前に置かれているその罠は明らかにそれらとは一線を画している。
街の人がひとりやっと通れるかどうかの細い裏路地に置かれたのはオカマがひとり。ただ立っているとか、たばこを吸うために潜んでいるとか、そう言う話じゃない。だっているわけじゃないんだ。明らかに置かれているんだ。それも道を塞ぐようにこちらを見ている。
オカマは筋肉質だ。ドレスっぽいものをきてるがぴったりとしていて、胸筋が浮かび上がっている辺り、生々しさを感じる。
オカマはぴくりとも動かない。そこにあるだけというのを体現しているかのようだ。死んでいる可能性だってあるが、黒目は動いていてこちらを補足しているので生きているのは間違いない。
罠だと認識できるのは、近づいたら捕まえられてどこかへ送られるを見たからだ。送られたのはさきほどまで一緒にいた友人だ。オカマがいるのもお構いなしに進んでいったらすごいスピードで捉えられて隣に置いてあるゴミを入れるはずの大きめの箱の中に入れられた。普通ならその箱の中で騒いでいる声が聞こえそうなものなのだが、聞こえてきたのは遠ざかっていく友人の叫び声だった。どこかへ送られているっていうのはそこから判断した。
まるで獲物を捉える蜘蛛みたいな存在。それは間違いなく罠だ。それも合法ではない方法で構築されたもの。
対峙していても動く気配がない以上、ここから離れてしまえばいいだけなのだが、友人がどうなったのか確認することもなく離れて良いものかという疑問が残る。それは後味が悪いものだ。
であるならば、やることはひとつ。虎穴に入らずんば虎子を得ずだ。
走り出す。オカマへと突撃する気持ちで。それもつかの間、一瞬で太い腕に身体を絡め取られるように宙に浮かされる。そのまま、箱の中へ放り投げられる。あまりに完璧すぎる動きに惚れ惚れする。
そうして待っていたのは衝撃で、でも、箱の中は傾斜になっていて緩やかに下っている。そこを転がり落ちるようにして、世界が回り続けるのを必死に耐えた。
気がついたら目の前に友人がいた。そしてそこは先程までいた街と何ら変わらないただの裏路地。そこにオカマもいない。友人と互いに顔を見合わせ同時にうなずいた。
今回のことは忘れてしまおう。そう帰路についた。
街の人がひとりやっと通れるかどうかの細い裏路地に置かれたのはオカマがひとり。ただ立っているとか、たばこを吸うために潜んでいるとか、そう言う話じゃない。だっているわけじゃないんだ。明らかに置かれているんだ。それも道を塞ぐようにこちらを見ている。
オカマは筋肉質だ。ドレスっぽいものをきてるがぴったりとしていて、胸筋が浮かび上がっている辺り、生々しさを感じる。
オカマはぴくりとも動かない。そこにあるだけというのを体現しているかのようだ。死んでいる可能性だってあるが、黒目は動いていてこちらを補足しているので生きているのは間違いない。
罠だと認識できるのは、近づいたら捕まえられてどこかへ送られるを見たからだ。送られたのはさきほどまで一緒にいた友人だ。オカマがいるのもお構いなしに進んでいったらすごいスピードで捉えられて隣に置いてあるゴミを入れるはずの大きめの箱の中に入れられた。普通ならその箱の中で騒いでいる声が聞こえそうなものなのだが、聞こえてきたのは遠ざかっていく友人の叫び声だった。どこかへ送られているっていうのはそこから判断した。
まるで獲物を捉える蜘蛛みたいな存在。それは間違いなく罠だ。それも合法ではない方法で構築されたもの。
対峙していても動く気配がない以上、ここから離れてしまえばいいだけなのだが、友人がどうなったのか確認することもなく離れて良いものかという疑問が残る。それは後味が悪いものだ。
であるならば、やることはひとつ。虎穴に入らずんば虎子を得ずだ。
走り出す。オカマへと突撃する気持ちで。それもつかの間、一瞬で太い腕に身体を絡め取られるように宙に浮かされる。そのまま、箱の中へ放り投げられる。あまりに完璧すぎる動きに惚れ惚れする。
そうして待っていたのは衝撃で、でも、箱の中は傾斜になっていて緩やかに下っている。そこを転がり落ちるようにして、世界が回り続けるのを必死に耐えた。
気がついたら目の前に友人がいた。そしてそこは先程までいた街と何ら変わらないただの裏路地。そこにオカマもいない。友人と互いに顔を見合わせ同時にうなずいた。
今回のことは忘れてしまおう。そう帰路についた。
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