三題噺を毎日投稿 3rd Season

海外ドラマの１２シーズン・バターコーヒー・刑期

　刑期を終えた人間が娑婆にでたときの顔があまりに晴れ晴れしていて、どんな気持ちなのか気になってしまった。それが演技なのを忘れてしまうくらいだ。彼が刑務所に入ったのはファーストシーズンの時だ。あれから十年以上も前のことだ。あの時は、なんで刑務所に入らなきゃいけないのかを理解できないくらい子どもだった。それが今は、ちゃんとその理屈を頭で考えながら感慨深くなっているのだ。

　それくらいの月日が流れている。それを実感できるのも長い間が続いているドラマにのめり込み続けているから得られる特権だ。周りから知らないと言われ続けても追い続けた甲斐があったというものだ。

　追い続けている海外ドラマの１２シーズンのクライマックス。ファーストシーズンの主要人物の帰還によってこれからの展開が大きく変わっていくのだと思うと、心が踊るのが分かる。

　そんな中エンドロールが流れていく、背景は刑期を終えた彼が街を歩き続けているシーンが流れている。娑婆の空気を楽しむかのようにひたすらに街を眺めて続けている。そしておもむろにカフェへと足を運んだ。そしてもおもむろにバターコーヒーを頼むのを見て衝撃が走った。

　手元にあるコーヒーカップに入っているバターコーヒーに視線を落とす。

　気がつけば入れて飲んでいたものだ。どうして飲み始めたのかすっかり忘れていたのだけれど、急に思い出した。彼の真似をしていたのだ。

　そんなこと頭から等に抜け落ちていたことに驚きを隠せず、それくらい日常とかしていたことに喜び、こらから起きるであろう彼の活躍を楽しみにするのだ。

　けれど、いつまでたっても１３シーズンは始まらなかった。頓挫してしまったのだと言う憶測が飛び交ったが信じはしなかった。あれが最終回だなんて誰も思っちゃいない。これからが楽しみだったはずだ。バターコーヒーを飲み続け、延々と待ち続ける日々。それは次第に、悪くないものだと思えるようになる気がした。