91 / 145
ドクター・キャンディ・ジャパニーズ
しおりを挟む
自分をジャパニーズだと強く自認したことはない。そんなことをしなくても揺らぐことが生きていて無かったし、きっとこれこらからもない。だからそう思うのは今だけなのだ。
「アー、ユー、ジャパニーズ?」
そう問いている人は間違いなくジャパニーズではない。顔立ちはヨーロッパを彷彿とさせる。金色の髪と、青い瞳からもそれは間違いなことを示している。それはいいのだ。けれど、なんで話しかけてきているのかはわからない。
大体まわりもみんな日本人だと言うのにどうして自分に狙いをつけたのだ。周りにいる人達だって全員日本人だろうに。
そう辺りを見渡して、その理由に思い当たる。だれも目の前の人に目を合わせようとしていない。唯一目を合わせて微笑んだのが自分だったのだろう。まったく。そんな人情が足りない国だったかここは。
「あ。ええ。ジャパニーズですよ。どうかしましたか?」
まあ、今更無視するわけにも行かないのでとりあえず話をしてみることにする。話しかけておいて日本語が分からないわけじゃによな? それだけが心配だ。
「おお。助かりました。ジャパニーズを求めていたのですよ。他の人達は返事をしてくれなくて。困ってました」
よかった。日本語は通じるようだ。けれど怪しさは確かにある。妙なことに巻き込まれる予感もある。
「ああ。それはよかったのですが。なんのようなのでしょう」
「おお。実は私ドクターでして。実験に付き合ってくれる人を探しているのです。協力してくれませんか?」
怪しさが一気に増した。実験て人体実験ってことか? こんな道端で? そんな怪しい話はないよ。流石に信用がなさすぎる。
「えっと。なにをすればいいんでしょう?」
そう思っていてもとりあず話だけでも。そう思ってしまうのはきっと臆病なだけだ。今更断ったりなんかしたらどんな反応をされるのか分かったものではない。
「おう。このキャンディを食べてくれるだけでいいのです。そして感想を教えてください」
「キャンディ? 感想って味のですか?」
「そうです。私、ドクターキャンディね。実験対象は多いほうがいい」
もしかして実験って試食のことなのか。味見だけでいいなら。
「これがそのキャンディ」
包まれているまあるいそれをつい受け取ってしまった。ドクターはじっとこちらを見ている。食べるのを待っているようだ。期待の視線を向けられている。
きっと大丈夫だ。怪しいけど変なものを食べさせられるわけじゃない。包から出てきたキャンディの色はピンク色で特段変わった様子はない。
思い切って投げ込むように口へ放り込んだ。
そして訪れたあまりの衝撃にキャンディを吐き出した。よく分からないのだけれど、辛いとかそんなレベルでない刺激が口の中に広がったのだ。
「ケホっ。こ、これは一体?」
「ああ。まだダメでしたか。また再調整しないと」
こちらのことを気にする様子もなくドクターは走り去ってしまった。そして、アスファルトの上に転がったキャンディが消えているのに気がつく。
あれ?
先程までキャンディがあった場所に黒い穴が開いている。自分が口にしたものがなんなのか考えたくなくてその場を逃げるように駆け出した。
それからしばらくして、なぞのキャンディを食べさせてくるドクターが動画投稿サイトで都市伝説のような扱いをされているのを見つけて、何も知らない振りをした。
もう関わりたくない。
「アー、ユー、ジャパニーズ?」
そう問いている人は間違いなくジャパニーズではない。顔立ちはヨーロッパを彷彿とさせる。金色の髪と、青い瞳からもそれは間違いなことを示している。それはいいのだ。けれど、なんで話しかけてきているのかはわからない。
大体まわりもみんな日本人だと言うのにどうして自分に狙いをつけたのだ。周りにいる人達だって全員日本人だろうに。
そう辺りを見渡して、その理由に思い当たる。だれも目の前の人に目を合わせようとしていない。唯一目を合わせて微笑んだのが自分だったのだろう。まったく。そんな人情が足りない国だったかここは。
「あ。ええ。ジャパニーズですよ。どうかしましたか?」
まあ、今更無視するわけにも行かないのでとりあえず話をしてみることにする。話しかけておいて日本語が分からないわけじゃによな? それだけが心配だ。
「おお。助かりました。ジャパニーズを求めていたのですよ。他の人達は返事をしてくれなくて。困ってました」
よかった。日本語は通じるようだ。けれど怪しさは確かにある。妙なことに巻き込まれる予感もある。
「ああ。それはよかったのですが。なんのようなのでしょう」
「おお。実は私ドクターでして。実験に付き合ってくれる人を探しているのです。協力してくれませんか?」
怪しさが一気に増した。実験て人体実験ってことか? こんな道端で? そんな怪しい話はないよ。流石に信用がなさすぎる。
「えっと。なにをすればいいんでしょう?」
そう思っていてもとりあず話だけでも。そう思ってしまうのはきっと臆病なだけだ。今更断ったりなんかしたらどんな反応をされるのか分かったものではない。
「おう。このキャンディを食べてくれるだけでいいのです。そして感想を教えてください」
「キャンディ? 感想って味のですか?」
「そうです。私、ドクターキャンディね。実験対象は多いほうがいい」
もしかして実験って試食のことなのか。味見だけでいいなら。
「これがそのキャンディ」
包まれているまあるいそれをつい受け取ってしまった。ドクターはじっとこちらを見ている。食べるのを待っているようだ。期待の視線を向けられている。
きっと大丈夫だ。怪しいけど変なものを食べさせられるわけじゃない。包から出てきたキャンディの色はピンク色で特段変わった様子はない。
思い切って投げ込むように口へ放り込んだ。
そして訪れたあまりの衝撃にキャンディを吐き出した。よく分からないのだけれど、辛いとかそんなレベルでない刺激が口の中に広がったのだ。
「ケホっ。こ、これは一体?」
「ああ。まだダメでしたか。また再調整しないと」
こちらのことを気にする様子もなくドクターは走り去ってしまった。そして、アスファルトの上に転がったキャンディが消えているのに気がつく。
あれ?
先程までキャンディがあった場所に黒い穴が開いている。自分が口にしたものがなんなのか考えたくなくてその場を逃げるように駆け出した。
それからしばらくして、なぞのキャンディを食べさせてくるドクターが動画投稿サイトで都市伝説のような扱いをされているのを見つけて、何も知らない振りをした。
もう関わりたくない。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》
小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です
◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ
◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます!
◆クレジット表記は任意です
※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください
【ご利用にあたっての注意事項】
⭕️OK
・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用
※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可
✖️禁止事項
・二次配布
・自作発言
・大幅なセリフ改変
・こちらの台本を使用したボイスデータの販売
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる