三題噺を毎日投稿 3rd Season

アマチュア無線・風車・免許

　風車は小屋だと思って近づいたのだけれど、最近の風車がそんんわけもなく。近代的な風力発電に切り替わっていて小屋ではないし、作業用の扉がひとつあるだけ。それも鍵がかかっていて部外者がはいれるはずもなかった。

　逃げ場を求めてここまでやってきたというのに。あてが外れた。

　車を運転していて遠くに風車が見えたからきっと小屋だと思ったのは偏った情報の接種をしていたからか。日本に風車小屋があるはずがないんだ。

　人気がない方向を目指していて見えた建物はその風車だけだった。車の免許も持たず、逃げているのにはのっぴきならない理由がある。というか、日本はもう終わってしまったのだ。

　街に異変が訪れたのは突然のことだった。緊急ニュースに映し出された映像は作り物としか思えないものが映し出されていた。

　街を徘徊する獣たち。それは少しの遠慮もなく人々を襲っている。最初は動物園からでも逃げ出したとか、誰かが飼っていたペットが逃げ出したとか、言われていたが。途切れることなく現れ続ける獣たちに。徐々に危機感が強まっていった。獣って言っても種類は様々だったけれど。小さくても狼。大きいと虎やライオンまで現れていたので猛獣に近い。

　もちろん警察も自衛隊も対処にまわったのだけれど、いくら倒しても終わりが見えなかった。そしてそれは日本だけじゃなく世界へと広がっていった。その先に待っているのは世界の終わりだ。

　人間たちが住む世界はなくなってしまったのだと誰もが思っている。それが現状。

　途中で拾った無線で定期的に発信はしているけれど、反応はない。都合よくアマチュア無線をかじっていたかっらこんなことができるが他にもおなじ様な人がいなくては話が始まらない。そしてそんな都合のいい話はやっぱり起こり得ないのだ。

　ひとりじゃなくなったところでどうすることもできやしない。だったらさっさと諦めてしまった方が楽なんじゃないかとすら思う。

　土埃を上げながら近づいてくる獣たち。

　それを見ながら、やっぱりまだ死になくない。諦められない。と車に飛び乗り次の場所を目指す。そこに希望があることを信じて。