三題噺を毎日投稿 3rd Season

霜月かつろう

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カーテンレール・LED・ゾンビ

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 窓の外をボーっと眺めていた。特にすることがないから。そう自分に言い聞かせながらだ。外に出てはいけないと両親にきつく言われている。世界は変わってしまったの。そう一言だけ付け加えながら言葉にしたその両親の表情はこれまでに見たことがないくらい動いていなかった。

 テレビは真っ黒のままだ。最初のうちはずっと緊急ニュースを放送していたけれど、いつの間にか、電波が届かなくなったらしい。通電はしているので、おおもとの配信自体がされていないのだろう。

 それくらい人類の余裕はなくなっている。

 電気だっていつまで通電しているか分からない。発電所には人が集まっていると言う話もあったし、必死に守ってくれているのかもしれない。でもそんなことも全部予想でしか無い。

 ゾンビと呼ばれる者が世界中に現れたのは突然のことだった。そんなの映画の中だけだろっと最初はみんなフェイクニュースだとハナから決めつけた。それくらい荒唐無稽だったのだ。

 でも、ゾンビは今、街を徘徊し続けている。間違いなくその数を増やしながらだ。

 見下ろす通学路には見覚えのある顔がいくつか見受けられる。

 なんであんな姿になっちゃうかな。

 それは嫌悪感によく似ているが少し違う。そこに同情と恐怖が混じっているのだ。

 あんな姿になりたくない。けれど、それも時間の問題。

 家の部屋のLEDライトがちらつく。電球はまだ変えたばかりだから、きっと大本の電気の供給が危ないのかもしれない。

 ちらつきでゾンビたちが気がつく可能性もあったのでカーテンを勢いよく閉めた。カーテンレールがきしむのが分かる。自分がどれだけ荒っぽくなっているのを自覚して少し落ち込む。

 分かっているのだ。もう世界が終わってしまったことに。もうどうしようもないところまで来ている。あとはゆっくりと終わる瞬間を待ち続けるだけ。

 逃げたくてもどこにいったらいいのか分からないし、そもそも家から出ることだってままならない。

 外の情報が少なくなると自然と家の中のことが気になる。うめき声をあげながら徘徊し続ける両親の気配に。全てをシャットダウンするように布団に包まった。

 このまま何も考えないまま静かに最後を迎えたい。そう願った。
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