三題噺を毎日投稿 3rd Season

霜月かつろう

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電子マネー・美術館・復讐

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 美術館に来ていた。決して大きくはない公共施設。それも地方の有名な芸術家もいないような施設だ。正直期待はしていなかった。期待していなかったのだけれど、あまりの新しさに驚いてしまった。

 入場料が取られなかった時点で少し疑問には思ったのけれど、中に入るなりその仕組みは理解した。

 展示物の説明文にQRコードがあり、電子マネーで決済ができるようになっていた。どうやら気に入った作品があればその場で投げ銭をするシステムらしい。それが作者のところへ行くのか美術館のところへ行くのか。それとも割合が最初から決まっていて互いのところへ行くのか。理解できなかったが大方の予想はできる。

 しかし、どこにも投げ銭をしないで出る人も多いだろう。分かる人が支払えば他多数は無料でみることができるということか? 無料で見れるならそのまま出てしまおう。そう心に決めた。

 そうしてゆっくり鑑賞しようとしていたのだけれど、あっという間に出口へとたどり着いてしまった。無料で抜けると決めたらあんまりジロジロと鑑賞するのが申し訳なくなってしまったのだ。

 そそくさと回って正直あんまり楽しめないまま、出口へとたどり着く。

「お客様は本日一度も支払いをされておりませんので、こちらで入場料のお支払いをお願い致します」

 突然あらわれた係員さんにそう声をかけられて言葉を失った。えっ、一度も支払わなかったら入場料を取られるのか。そんなこと聞いていない。そもそもどうやってそんなこと判別しているのだ。入り口からずっと見張っていたとでも言うのか。

 たしかに他のお客さんは少なくて出来ないこともないだろうが、スマホを向けるだけで支払わないことだってできる。それこそお客さんひとりに対して係員ひとりつかなくてはならないだろう。そんな様子はまったくなかった。

「えっと。支払いましたけど……」

 どうせわからないだろうとっハッタリをかましてみる。

「いえ、お支払いはされていませんね。当館は最新の技術ですべてのお客様の行動を監視カメラで追跡させていただいております。間違いありません。説明は入り口ですべて説明させていただいたはずですが……?」

 確かにそんな説明をしていたような気がしてきた。どうせどこも一緒だろうと適当に聞き流していた。

 渋々払うと、もう一度入ってちゃんと鑑賞してやると言う復讐心が湧いてきていた。
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