67 / 145
パトラッシュ・激辛・誘拐
しおりを挟む
「パトラッシュ。もう疲れたよ」
「なに言ってんだよ。大げさな」
大げさじゃない。疲れたのは確かだ。確かにパトラッシュ、疲れたよだといかにも死んでしまう前と思われるのか。いや、冗談じゃないか。それくらい分かって欲しい。そして同じくらい助けを求めていることも分かって欲しい。
先輩に突然連れてこられたのはカレー屋さん。お祝いだからと半ば強制的にだ。なんのお祝いかも分からないまま椅子に座らされた。その中には同期も数人いるのだけれど、どうやらお祝いされるのは自分だけだと言うことが話の流れで分かっていった。
注文もいつの間にか終わっていて、カレーが届くまでの間に、なんのお祝いをするのかも効いて回ったのだけれど誰もが知らないの一点張り。じゃあ、誰が言い出しっぺなのかと聞いても知らないとしか言われない。そうやって心が折れたときに漏れたのがその一言だ。
「おっ。カレー来たぜ」
次々とテーブルの上に置かれていくカレーを見ていて違和感を覚える。
「なんか僕のだけ色違くない?」
ひとつだけ明らかに辛そうな色をしている。
「まあ。お祝いだし? 特別の超激辛カレーだよ」
恒例。恒例。みたいな声もどこからか聞こえてくる。恒例ならなんのお祝いか知ってそうなものだけれど、誰もが無視してくる。
「これを食べなきゃいけないんですか?」
「そう。それが恒例。ちょっと辛いけど、残すとここの店長さんめっちゃ怒り出すから完食してね」
優しくそう言われたけれど、到底優しくない内容。
きっとそんなに辛くないんだ。見た目だけだよ、きっと。そう試しに口に運んでみた。
一口でヤバいのが分かる。口の中がしびれにも似た感覚で何も感じなくなる。いや、そうじゃあい。確かに旨味だけは感じ続けている。それがあまりにも美味しいカレーだと言うことは間違いない。
「おめでとう。これで君もデビューすることが出来た」
周りが一斉に拍手し始める。それは一体どういうことなのだ。
「このカレーを食べられる人は限られている。そして君はその限られた人に選ばれたんだ」
辛さと旨さ、そして周りの異様さに頭が混乱してく。これは何がおこっているのだ。
そんなことを考えている間にもカレーを食べる手は止まらない。身体が食べたがっているのだ。
「次は誰を誘拐してこようか?」
不意にそんな言葉が聞こえてくる。どういうことだ。誘拐? 次? 僕はどうしてここでカレーを食べているのだ。
誘拐された? 誰に? この人たちに? いくら考えても思い出せない。次第に考えることもやめる。食べることを身体がやめてくれないから。そうしてどれくらいのカレーを口に運んだのか分からない。辛いと思いながらも気がつけば完食してしまった。
胃の中がおかしくなりそう。それ以上に身体が次のカレーを求めてもいる。
パトラッシュ。もう疲れたよ。
「なに言ってんだよ。大げさな」
大げさじゃない。疲れたのは確かだ。確かにパトラッシュ、疲れたよだといかにも死んでしまう前と思われるのか。いや、冗談じゃないか。それくらい分かって欲しい。そして同じくらい助けを求めていることも分かって欲しい。
先輩に突然連れてこられたのはカレー屋さん。お祝いだからと半ば強制的にだ。なんのお祝いかも分からないまま椅子に座らされた。その中には同期も数人いるのだけれど、どうやらお祝いされるのは自分だけだと言うことが話の流れで分かっていった。
注文もいつの間にか終わっていて、カレーが届くまでの間に、なんのお祝いをするのかも効いて回ったのだけれど誰もが知らないの一点張り。じゃあ、誰が言い出しっぺなのかと聞いても知らないとしか言われない。そうやって心が折れたときに漏れたのがその一言だ。
「おっ。カレー来たぜ」
次々とテーブルの上に置かれていくカレーを見ていて違和感を覚える。
「なんか僕のだけ色違くない?」
ひとつだけ明らかに辛そうな色をしている。
「まあ。お祝いだし? 特別の超激辛カレーだよ」
恒例。恒例。みたいな声もどこからか聞こえてくる。恒例ならなんのお祝いか知ってそうなものだけれど、誰もが無視してくる。
「これを食べなきゃいけないんですか?」
「そう。それが恒例。ちょっと辛いけど、残すとここの店長さんめっちゃ怒り出すから完食してね」
優しくそう言われたけれど、到底優しくない内容。
きっとそんなに辛くないんだ。見た目だけだよ、きっと。そう試しに口に運んでみた。
一口でヤバいのが分かる。口の中がしびれにも似た感覚で何も感じなくなる。いや、そうじゃあい。確かに旨味だけは感じ続けている。それがあまりにも美味しいカレーだと言うことは間違いない。
「おめでとう。これで君もデビューすることが出来た」
周りが一斉に拍手し始める。それは一体どういうことなのだ。
「このカレーを食べられる人は限られている。そして君はその限られた人に選ばれたんだ」
辛さと旨さ、そして周りの異様さに頭が混乱してく。これは何がおこっているのだ。
そんなことを考えている間にもカレーを食べる手は止まらない。身体が食べたがっているのだ。
「次は誰を誘拐してこようか?」
不意にそんな言葉が聞こえてくる。どういうことだ。誘拐? 次? 僕はどうしてここでカレーを食べているのだ。
誘拐された? 誰に? この人たちに? いくら考えても思い出せない。次第に考えることもやめる。食べることを身体がやめてくれないから。そうしてどれくらいのカレーを口に運んだのか分からない。辛いと思いながらも気がつけば完食してしまった。
胃の中がおかしくなりそう。それ以上に身体が次のカレーを求めてもいる。
パトラッシュ。もう疲れたよ。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》
小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です
◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ
◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます!
◆クレジット表記は任意です
※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください
【ご利用にあたっての注意事項】
⭕️OK
・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用
※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可
✖️禁止事項
・二次配布
・自作発言
・大幅なセリフ改変
・こちらの台本を使用したボイスデータの販売
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる