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古の魔法・アイドル・ブレーキ
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「なあ。知ってる? 放課後のアイドルってやつ」
放課後に学校で歌が聞こえてくる。それはアイドルのよう上手で美しい声。だから学校にアイドルがいる。そんな噂は聞いたことはあるけど眉唾ものだと思っていた。だって実際に歌声を聞いたことはないし、そんなアイドルみたいな女の子を学校で見たことは無かった。
「知ってるけどさ。そんなアイドルみたいな子がいたらすぐに広まるだろ。そんな子見当たらないよ。それに歌がうまいって言っても合唱部以外にそんないないだろ?」
「合唱部かもしれないじゃないか。それに歌がうまいの隠しているだけかもしれないぜ」
「合唱部にアイドルみたいな子はいないじゃないか。みんな地味っていうか。かわいい子なんてみたことないぜ」
いつのまにか言葉のブレーキを踏み忘れていた。思わずあっと声がこぼれて、教室を見渡す。幸い放課後ということもあってこちらの会話を聞いている連中はいなかったみたいで助かった。
「そんなことないだろ。同じクラスのほら。あの子とか」
友人が視線で示したのは髪の長い黒髪の女の子だ。小柄でメガネを掛けて確かに合唱部だった気がする。前髪が目の辺りまで垂れているのに加えてうつむき加減なことが多いので顔をよく見たことはない。でもアイドルっぽくないのだけはたしかだ。
「地味じゃん」
「違うって。俺たまたまみたことあんの。雨の日。朝登校するときにちょっと降られちゃってさ。官女も同じだったと思うんだけど。濡れた髪をかきあげたわけよ。そしたらびっくり。可愛いんだって」
テンションが高い友人を冷ややかな目で見つめるのだけれど。対して効果がないくらいに盛り上がっている。
そんなに可愛いのかな。ついつい視線を向け続けてしまう。ふと、その女の子が急に視線を上げてこっちを見た。
視線が交差する。とっさに顔を伏せたけけど。手遅れなのは間違いない。だってちゃんと目があったもんな。
変なやつだと思われてないか心配になるが、こちらを見向きもしないで教室からでて行った。カバンも持っていたしちょうど帰宅するところだったんだろう。
それっきり会話も違うことへと切り替わったのですっかり頭から抜け落ちていた。なのにそれは不意打ちだった。
数日後のすっかり遅くなった放課後。あたりには誰も見当たらない。その放課後で歌を聞いた。明るくて元気がある声。聞いているうちに一緒に元気になってしまいそうなパワーもある。聞いたこと無い曲。もしかして例のアイドルってやつだろうか。
気になったところで急に声が消えた。
やめちゃったのかな。そう思っていたら見覚えがある顔を目の前を走り去っていった。
えっ。今のって。友人と話をした例の合唱部の女の子だ。もしかして彼女が歌っていたのだろうか。気になって仕方がない。まるで古の魔法にかかってしまたみたいに、それから毎日彼女のことを考える日々が始まった。
放課後に学校で歌が聞こえてくる。それはアイドルのよう上手で美しい声。だから学校にアイドルがいる。そんな噂は聞いたことはあるけど眉唾ものだと思っていた。だって実際に歌声を聞いたことはないし、そんなアイドルみたいな女の子を学校で見たことは無かった。
「知ってるけどさ。そんなアイドルみたいな子がいたらすぐに広まるだろ。そんな子見当たらないよ。それに歌がうまいって言っても合唱部以外にそんないないだろ?」
「合唱部かもしれないじゃないか。それに歌がうまいの隠しているだけかもしれないぜ」
「合唱部にアイドルみたいな子はいないじゃないか。みんな地味っていうか。かわいい子なんてみたことないぜ」
いつのまにか言葉のブレーキを踏み忘れていた。思わずあっと声がこぼれて、教室を見渡す。幸い放課後ということもあってこちらの会話を聞いている連中はいなかったみたいで助かった。
「そんなことないだろ。同じクラスのほら。あの子とか」
友人が視線で示したのは髪の長い黒髪の女の子だ。小柄でメガネを掛けて確かに合唱部だった気がする。前髪が目の辺りまで垂れているのに加えてうつむき加減なことが多いので顔をよく見たことはない。でもアイドルっぽくないのだけはたしかだ。
「地味じゃん」
「違うって。俺たまたまみたことあんの。雨の日。朝登校するときにちょっと降られちゃってさ。官女も同じだったと思うんだけど。濡れた髪をかきあげたわけよ。そしたらびっくり。可愛いんだって」
テンションが高い友人を冷ややかな目で見つめるのだけれど。対して効果がないくらいに盛り上がっている。
そんなに可愛いのかな。ついつい視線を向け続けてしまう。ふと、その女の子が急に視線を上げてこっちを見た。
視線が交差する。とっさに顔を伏せたけけど。手遅れなのは間違いない。だってちゃんと目があったもんな。
変なやつだと思われてないか心配になるが、こちらを見向きもしないで教室からでて行った。カバンも持っていたしちょうど帰宅するところだったんだろう。
それっきり会話も違うことへと切り替わったのですっかり頭から抜け落ちていた。なのにそれは不意打ちだった。
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気になったところで急に声が消えた。
やめちゃったのかな。そう思っていたら見覚えがある顔を目の前を走り去っていった。
えっ。今のって。友人と話をした例の合唱部の女の子だ。もしかして彼女が歌っていたのだろうか。気になって仕方がない。まるで古の魔法にかかってしまたみたいに、それから毎日彼女のことを考える日々が始まった。
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