三題噺を毎日投稿 3rd Season

霜月かつろう

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マシュマロ・薬・くすぐり

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「ねえ。マシュマロ焼こうよ」

 寒いのこらえながら小さな火をみんなで囲んでいた。冬休みの雪上キャンプを思いついたのは誰だったのだろう。メンツ一番のイケメンか。そのイケメンが狙っている学校の高嶺の花か。ムードメーカーだったような気もすれば知識も豊でしっかりものの学級委員長だったか。

 誰だって構わないのだけれど。まさか、こんなにも用意されたものをこなすだけのものだとは想像と少し違っていた。

「ねえ。焼きすぎじゃない?」

 これは学級委員長。

「ばーか。焦げ目がついたほうが美味しそうだろ?」

 これはムードメーカー。

「焦げは苦味も増すのでよくないと思いますけど」

 そして、これは僕だ。そしてその発言によってみんなの視線が一斉にこちらを向く。目立たないのに口をはさんだりなんかしたから、気に触ったのだろうか。

「お前もしゃべったりするんだな」

 イケメンが高嶺の花に同意を求めている。そんなこと言われたのは初めてだ。いや、しゃべったのが初めてなのか? もしかして。

「そうよね。授業中当てられた時に声を聞いたことはあったけれど。しゃべっているのを聞いたのは初めてかも」

 これは高嶺の花。そんな認識なのにどうして誘ってくれたのだろう。誘ってくれたの学級委員長だ。

「私が誘ったの。なんだか暇そうだったし。結構いろんなこと知ってるから、便利かなって思って。せっかく同じクラスなのに、このまま卒業なのも勿体なくない?」

 学級委員長が一通り說明してくれる。その声で耳をくすぐりを受けているようで、ちょっと身震いしてしまう。

「ふーん。確かにあれ建てるのもなんか効率よく動いてたもんな」

 ムードメーカーが褒めてくれる。雪で作ったドーム型の建物。イグルーと呼ばれるそれは今日の寝床でもある。

「あれで寝るのチョット怖くない? 寝ている間に潰れたら生き埋めだよ?」

 高嶺の花がムードメーカーに近寄る。それがイケメンはちょっと気に食わなかったみたい。

「そんなの大丈夫だろ。なんだったら埋められても大丈夫なくらい俺が温めてやるよ」

 寒さが増した気がした。

「はいはい。ミステリ事件じゃあるまいし、薬なんかを飲んで寝るなんてことしなきゃ大丈夫だよ。大体、このツアーの目玉なんだから楽しまなくちゃ」

 学級委員長の言葉にみんながやれやれと言った様子でそれぞれ納得したみたいだ。

「それじゃあ、だれがどのイグルーで寝るかじゃんけんね。三つあるから、ふたつは二人でひとつは一人。わかった?」

 学級委員長がそのまま仕切る。そうなのだ。どうしてそんな風にできているかわからないがそんなイベントもあった。イケメンは高嶺の花と一緒になりたがっているし、ムードメーカーは学級委員長を狙っている。まあ、僕はきっとひとりだろうと思っていたのに。じゃんけんで決めるなんて聞いてない。

「最初はグー。じゃんけん」

 ドキドキする暇もなく、手を出す。グーが二人にチョキが一人、パーが二人だ。

「よしっ」

 イケメンが小さくガッツポーズ。

「ひとりってマジかよ」

 ムードメーカーは肩を落としている。

「ねっ。今夜はよろしくね」

 耳元がくすぐられているな感覚に寒さが吹き飛んだ気がした。
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