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土いじり・バースト・城壁
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土いじりが趣味になったのはいつからだったか。久しぶりにそんなことを思い返してみる。ひとりきりになったとき。庭の広さが気になって仕方なくなり始めた。最初は気分を紛らわせるために始めたことだ。でも次第に楽しくなっていってしまって、気が付けばうねができ、そこへ種を植え、毎日のように成長するそれらを楽しみにするようになっていった。
いくつかの季節を超えたころ、挫折が訪れる。楽しみにしていた庭の畑の成長が芳しくないのだ。前まではすくすくと成長していたのに中々大きくならないし、すぐに枯れてしまう。
不思議に思っていたが、すぐに土いじりをし始めてから栄養を与えていないことに気が付いた。何度も育てていればそりゃ土から栄養がなくなってしまう。どこかでそんなことを教わった気がする。
これだから素人は。と言われかねないけれど、実際しょうがないと思う。まあ、そんなことを言ってくる人もいないのだけれど。
家は妙なところにあるのだ。城壁の中と言う、珍しい場所。
家を建てたときはそんな場所だなんてだれも知らなかった。確かに城下町だったし、すぐそばに城はある。けれど、家は城の敷地ではないと誰もが思っていた。なのに、調査が進むにつれ、城壁の痕跡が見つかっていったのだ。余計な調査なんてしなければよかったのにといなくなったあの人がよくぼやいていた。
その反発心もあってあの人は土地をかたくなに譲ろうとしなかった。そればかりか城壁の中にあるのだから、管理者をやらせろと無茶な要求までした。その無茶な要求が通ったのは地域の活性化を目指していた地方都市特有の問題と、あの人のそれなりの実績が評価されたのだろう。
しかし、そんなに都合よく進んだことも順調というわけにはいかないのだ。管理者という役割は意外と仕事が多い。あの人はそれを理解していなかったらしい。いつの間にかやらなければならないことで時間は埋め尽くされ気が付いたらバーストしていた。
たまらず逃げ出したあの人は今も帰ってこない。残った仕事は外注に出して、やりくりしているので時間は作れるし、お金は入ってくるだし、比較的気ままな生活を送れている。
あの人はすべて自分自身でやろうとしたからいけなかったのだ。
これだから素人はと言われたところで、分かりません。助けてくださいと言えばよかったのだ。ほんとそれだけだったのに。
さて、畑に栄養をあげるのはどうすればいいのか誰かに聞きに行こうかね。
そうゆっくりと立ち上がったところで、家のチャイムが鳴った。
はて。来客予定はなかったのだけれど。そう不思議に思いながら玄関へと向かった。
いくつかの季節を超えたころ、挫折が訪れる。楽しみにしていた庭の畑の成長が芳しくないのだ。前まではすくすくと成長していたのに中々大きくならないし、すぐに枯れてしまう。
不思議に思っていたが、すぐに土いじりをし始めてから栄養を与えていないことに気が付いた。何度も育てていればそりゃ土から栄養がなくなってしまう。どこかでそんなことを教わった気がする。
これだから素人は。と言われかねないけれど、実際しょうがないと思う。まあ、そんなことを言ってくる人もいないのだけれど。
家は妙なところにあるのだ。城壁の中と言う、珍しい場所。
家を建てたときはそんな場所だなんてだれも知らなかった。確かに城下町だったし、すぐそばに城はある。けれど、家は城の敷地ではないと誰もが思っていた。なのに、調査が進むにつれ、城壁の痕跡が見つかっていったのだ。余計な調査なんてしなければよかったのにといなくなったあの人がよくぼやいていた。
その反発心もあってあの人は土地をかたくなに譲ろうとしなかった。そればかりか城壁の中にあるのだから、管理者をやらせろと無茶な要求までした。その無茶な要求が通ったのは地域の活性化を目指していた地方都市特有の問題と、あの人のそれなりの実績が評価されたのだろう。
しかし、そんなに都合よく進んだことも順調というわけにはいかないのだ。管理者という役割は意外と仕事が多い。あの人はそれを理解していなかったらしい。いつの間にかやらなければならないことで時間は埋め尽くされ気が付いたらバーストしていた。
たまらず逃げ出したあの人は今も帰ってこない。残った仕事は外注に出して、やりくりしているので時間は作れるし、お金は入ってくるだし、比較的気ままな生活を送れている。
あの人はすべて自分自身でやろうとしたからいけなかったのだ。
これだから素人はと言われたところで、分かりません。助けてくださいと言えばよかったのだ。ほんとそれだけだったのに。
さて、畑に栄養をあげるのはどうすればいいのか誰かに聞きに行こうかね。
そうゆっくりと立ち上がったところで、家のチャイムが鳴った。
はて。来客予定はなかったのだけれど。そう不思議に思いながら玄関へと向かった。
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