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三題噺・出がらし・育苗箱
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育苗箱が転がっているのを横目にだれもいない道を歩く。道と言っても舗装されているわけでは無い。人が踏み鳴らして出来た道だ。どれくらいの月日をそうしていれば後も固くなるのか、想像しようとして、ちっともその光景が浮かんでこなかった。
いつの時代からこの地域で農家をしていたのかは聞いたこともない。先祖代々なのかも分かりやしない。じいちゃんあたりが急に思いついて農業を始めていても驚きはしない。それとも近くに街道が通っている以上、昔から農業だったのか。その昔っていつだ。想像は膨らむようで穴だらけの風船に空気を入れているようでちっとも膨らみはしない。
その時から素材は違えど育苗箱もあったのだろうか。それも想像できない知識が足りない。急にやれと言われた農業に大して歴史的興味もなければ今考えている内容もただの現実逃避。これからどうやってこの広大な農業地を管理していけば良いのか。ぼんやりと頭を巡らせる。
優秀な兄弟たちはみんな自分たちのことで忙しく、働き始めると実家に寄り付きもしなくなった。だから最後まで実家で暮らしていた自分に選択権はなくお鉢が回ってきた。
出がらしのような自分をかわいがってくれた親に大して感謝の意を込めてちゃんとやらなくてはとも思う。けれど思うだけだ。現実になにから手を付けて良いのか五里霧中。頼る相手もいない。
三題噺のようにお題を与えられて思い付けばいいのになと思う。創作界隈ではそう言う練習法があるのだ。三つのお題で即興で話をつくる。それをなんどかやったことがあったけれど。思い通りになったことはない。でも、方向性はお題で決まるのだ。
現実もお題が降ってきて方向を示してくれないかなと思う。それこそ足元の道のように固められた道を進みたいと。そう思う。
そんなことを言っているから兄弟の出がらしだなんて言われるのだろうな。自虐的に笑うけれどそれを見てくれる人もいない。
ここにはずっとひとりだ。これからは。
今日明日でどうにかなるわけでもない。ゆっくり、ぼんやりと考え続けるしか無い。そう頭を働かせながら畑を取り囲むように伸びる道を、ひとり歩き続けた。
いつの時代からこの地域で農家をしていたのかは聞いたこともない。先祖代々なのかも分かりやしない。じいちゃんあたりが急に思いついて農業を始めていても驚きはしない。それとも近くに街道が通っている以上、昔から農業だったのか。その昔っていつだ。想像は膨らむようで穴だらけの風船に空気を入れているようでちっとも膨らみはしない。
その時から素材は違えど育苗箱もあったのだろうか。それも想像できない知識が足りない。急にやれと言われた農業に大して歴史的興味もなければ今考えている内容もただの現実逃避。これからどうやってこの広大な農業地を管理していけば良いのか。ぼんやりと頭を巡らせる。
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