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クリームソーダ・番傘・人生
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田舎ではないが都会ではない。そんな地方都市の駅前を歩いていて小さな喫茶店にどうしてだか目が行った。その理由はすぐに気がついた。
黒板だ。
喫茶店の前にお知らせ用の黒板が置かれていてそこの、チョークで描かれている絵が上手だったのだ。
文字ではなく絵だ。もちろん字もとても上手に描かれている。スパゲティやトーストなどの軽食が中心みたいで可愛らしい文字でメニューが書かれている。店主のセンスが感じられるいい黒板だ。気になって入りたくなる。
「なんかいい感じのカフェだね。入ろっか」
友人は私に聞いているようで、そうではない。確認もせずに勝手に入っていてしまう。今回は私も気になっていたのでいいのだけれど、あまり気になっていないところでもそんな行動が多い友人だけれど。付き合いは長いし相性が悪くない訳じゃない。一緒にいて楽しいし、踏み出せないときもこうやって変わりに踏み出してくれことがある。
「いらっしゃいませー」
明るく小気味よいリズムで店員さんが迎え入れてくれる。さほど広くない店の中は居心地が良さそう。入ってよかった。そう思える。
注文するものは最初から決まっている。黒板に美味しそうに描いてあったクリームソーダだ。この店に入った目的。お冷を持ってきてくれた店員さんに早速注文すると一息つく。
「それでさ。どうなった? 例の彼と」
どうにもなりやしない。ちょっと一緒にいてちょっといい感じになっただけだ。
「なんにも……」
「あー、また何も無かったんだ」
でも、全部私の勘違い。ちょっとのいい感じは相手にとってはなかったことだったみたいになんの連絡もない。きっと何かがダメだたんだ。
「気にすること無いよ。そのうち良い人が見つかるよ」
そのうちっていつだろう。そんな風にのんびり構えている間に人生終わっちゃうよ。
「うん」
「さては納得してないな。未練がましいやつめ。いい人紹介してあげよっか?」
その提案はすぐさま断る。それは碌なことにならない。友人がいいと思った人とは反りが合わないのだ。それは不思議なことだ。友人としての相性はいいのだけれど男の趣味はちっとも合わない。
「そっか。仕方ないね。まあ、いいよいいよ。そのうち良い人現れるって」
そういう人だって良い人が見つかっていない。それなのにこの差はなんなのか。
「おまたせいたさいましたぁ」
念願のクリームソーダ。ふたりも同じ注文。それを挟んで一緒にいればなにもかもが楽しい。
「だからそれでいいんだよね」
それも人生。それもクリームソーダ。それも番傘。
「この番傘かわいいねっ」
クリームソーダのクリームに刺さった番傘。黒板に描かれていた通りで微笑ましくなる。これこれ。これが可愛くてこの喫茶店に入ったのだ。それで満足。
黒板だ。
喫茶店の前にお知らせ用の黒板が置かれていてそこの、チョークで描かれている絵が上手だったのだ。
文字ではなく絵だ。もちろん字もとても上手に描かれている。スパゲティやトーストなどの軽食が中心みたいで可愛らしい文字でメニューが書かれている。店主のセンスが感じられるいい黒板だ。気になって入りたくなる。
「なんかいい感じのカフェだね。入ろっか」
友人は私に聞いているようで、そうではない。確認もせずに勝手に入っていてしまう。今回は私も気になっていたのでいいのだけれど、あまり気になっていないところでもそんな行動が多い友人だけれど。付き合いは長いし相性が悪くない訳じゃない。一緒にいて楽しいし、踏み出せないときもこうやって変わりに踏み出してくれことがある。
「いらっしゃいませー」
明るく小気味よいリズムで店員さんが迎え入れてくれる。さほど広くない店の中は居心地が良さそう。入ってよかった。そう思える。
注文するものは最初から決まっている。黒板に美味しそうに描いてあったクリームソーダだ。この店に入った目的。お冷を持ってきてくれた店員さんに早速注文すると一息つく。
「それでさ。どうなった? 例の彼と」
どうにもなりやしない。ちょっと一緒にいてちょっといい感じになっただけだ。
「なんにも……」
「あー、また何も無かったんだ」
でも、全部私の勘違い。ちょっとのいい感じは相手にとってはなかったことだったみたいになんの連絡もない。きっと何かがダメだたんだ。
「気にすること無いよ。そのうち良い人が見つかるよ」
そのうちっていつだろう。そんな風にのんびり構えている間に人生終わっちゃうよ。
「うん」
「さては納得してないな。未練がましいやつめ。いい人紹介してあげよっか?」
その提案はすぐさま断る。それは碌なことにならない。友人がいいと思った人とは反りが合わないのだ。それは不思議なことだ。友人としての相性はいいのだけれど男の趣味はちっとも合わない。
「そっか。仕方ないね。まあ、いいよいいよ。そのうち良い人現れるって」
そういう人だって良い人が見つかっていない。それなのにこの差はなんなのか。
「おまたせいたさいましたぁ」
念願のクリームソーダ。ふたりも同じ注文。それを挟んで一緒にいればなにもかもが楽しい。
「だからそれでいいんだよね」
それも人生。それもクリームソーダ。それも番傘。
「この番傘かわいいねっ」
クリームソーダのクリームに刺さった番傘。黒板に描かれていた通りで微笑ましくなる。これこれ。これが可愛くてこの喫茶店に入ったのだ。それで満足。
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