27 / 145
一騎当千・お香・電波
しおりを挟む
はるか昔、一騎当千と呼ばえる人たちがいた。文字通り一騎。つまりひとりで千人に値する力の持ち主ってことだ。現代にとってそんなことになる状況は考えられないと思っていた。
しかし、今見ている光景はまさに現代の一騎当千なのだろう。凄まじい勢いで敵を圧倒している……ように見える。正直良く分からないのだ。けれど彼の指が止まらない限り彼が生き残り続けているのは確かだ。多人数の対戦型オンラインゲーム。目の間に座ってひたすらにキーボードとマウスの操作を続けている彼が遊んでいるゲームの総称だ。
ゲームの名前も最初に聞いたのだけれど、長くて、カタカナばかり。とてもじゃないが一度聞いただけじゃ覚えられなかった。
バトルロイヤル形式のゲームはランダムに落とされたマップで出会ったプレイヤーとの闘いを繰り返しながら進んでいく。その途中で武器や魔法を入手しながらゲームごとの成長を繰り返していく。そうして最後のひとりになるまで闘いを繰り返していくのだ。
でも、ルールは分かっていても何が起きているのかは理解できない。ひたすらに動き続ける画面を見てるだけで酔いそうになる。それに加えて理解できないのだ。正直見ていて面白いとは思えなかった。
『これからの会社のイチオシのタイトルだから。しっかり勉強するように』
そう言われて仕方なく見ているものの、なぜ押さなくてはらないのか、なぜ勉強しなければいけないのかも理解していない。それも全部、妙なお香のせいだ。匂いを嗅いでいれば仕事能率が上がると言う怪しげなそれを会社全体に取り入れたのは社長の一存だ。それは確かに仕事能率を上げた。様々な業種を取り込みあっという間に事業は巨大化。莫大な売上を動かし始めた。
でも、急激な成長はひずみを産んだ。今の状況だってそのひずみの影響でしかない。自分がその一部になっている自覚のないまま進んでしまっている状況はよくないと思っているが。思っているだけ。この仕事だってきっと誰かがなんとかして、先に進む。
「このお香。すごいっすね。いつもと全然、動きが違うや。なんか怪しいものでも入ってるのかと疑っちゃうくらい」
目の前の彼は余裕そうに軽口を叩いている。画面を見ればビクトリーの文字。いつの間にか勝負に勝ったみたいだ。
「ええ。それはすごいんです。それがあれば人類は何処へだって行ける」
それが会社のスローガンだ。いつの間にか、何も考えなくても口にするようになっていた。
「はは。なんか電波じみてますけど。嘘じゃないって感じします。では、これからもよろしくお願いしますね」
全部このお香を広めるため。会社なんてそのカモフラージュに過ぎないのだと、気がついていても、永遠に気づかないふりをしなくちゃいけない。
……きっとそれが正しいことなのだ。
しかし、今見ている光景はまさに現代の一騎当千なのだろう。凄まじい勢いで敵を圧倒している……ように見える。正直良く分からないのだ。けれど彼の指が止まらない限り彼が生き残り続けているのは確かだ。多人数の対戦型オンラインゲーム。目の間に座ってひたすらにキーボードとマウスの操作を続けている彼が遊んでいるゲームの総称だ。
ゲームの名前も最初に聞いたのだけれど、長くて、カタカナばかり。とてもじゃないが一度聞いただけじゃ覚えられなかった。
バトルロイヤル形式のゲームはランダムに落とされたマップで出会ったプレイヤーとの闘いを繰り返しながら進んでいく。その途中で武器や魔法を入手しながらゲームごとの成長を繰り返していく。そうして最後のひとりになるまで闘いを繰り返していくのだ。
でも、ルールは分かっていても何が起きているのかは理解できない。ひたすらに動き続ける画面を見てるだけで酔いそうになる。それに加えて理解できないのだ。正直見ていて面白いとは思えなかった。
『これからの会社のイチオシのタイトルだから。しっかり勉強するように』
そう言われて仕方なく見ているものの、なぜ押さなくてはらないのか、なぜ勉強しなければいけないのかも理解していない。それも全部、妙なお香のせいだ。匂いを嗅いでいれば仕事能率が上がると言う怪しげなそれを会社全体に取り入れたのは社長の一存だ。それは確かに仕事能率を上げた。様々な業種を取り込みあっという間に事業は巨大化。莫大な売上を動かし始めた。
でも、急激な成長はひずみを産んだ。今の状況だってそのひずみの影響でしかない。自分がその一部になっている自覚のないまま進んでしまっている状況はよくないと思っているが。思っているだけ。この仕事だってきっと誰かがなんとかして、先に進む。
「このお香。すごいっすね。いつもと全然、動きが違うや。なんか怪しいものでも入ってるのかと疑っちゃうくらい」
目の前の彼は余裕そうに軽口を叩いている。画面を見ればビクトリーの文字。いつの間にか勝負に勝ったみたいだ。
「ええ。それはすごいんです。それがあれば人類は何処へだって行ける」
それが会社のスローガンだ。いつの間にか、何も考えなくても口にするようになっていた。
「はは。なんか電波じみてますけど。嘘じゃないって感じします。では、これからもよろしくお願いしますね」
全部このお香を広めるため。会社なんてそのカモフラージュに過ぎないのだと、気がついていても、永遠に気づかないふりをしなくちゃいけない。
……きっとそれが正しいことなのだ。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》
小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です
◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ
◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます!
◆クレジット表記は任意です
※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください
【ご利用にあたっての注意事項】
⭕️OK
・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用
※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可
✖️禁止事項
・二次配布
・自作発言
・大幅なセリフ改変
・こちらの台本を使用したボイスデータの販売
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる