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撃破・筋肉・送迎
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いま起きていることを把握するので脳の処理が一杯一杯。それどころか自分が今置かれている状況を理解することも出来ない。
『お迎えに上がりました』
学校から帰ろうとしたところでそう突然スーツ姿でサングラスの男たちに囲まれたときからずっと頭がパンクしそうだ。お迎えってどこに連れて行かれるのだ。高そうな車に無理やり乗せられることが送迎だとでも言うのか。こんなの拉致じゃないか。
「あ、あの。僕は一体どこへ……?」
その質問はひとりのスーツ姿にギロリと睨まれ、縮こまってしまってそれでおしまいだった。どうやら質問に答えてくれる気はないらしい。体格差がエグい。同じ生物かと思うくらいひとつひとつの筋肉の大きさが違う。いや、筋肉だけじゃない。骨だってきっと違う。それが両側に座っているのだ圧迫感で妙な感覚になっていく。
ああ。火葬場から出てくる骨の量を想像して自分の骨壷がいかにすっからかんか容易に浮かんできて、慌てて振り払う。窮地に陥るとよく分からない妄想が捗るのだろうか。
そう言えば、この車はまったく揺れないな。高い車だとこんなにも乗り心地が違うものなのか。いや、それくらい違いが出るものに乗っていると思うと緊張が増す。いや、もはや緊張が続きすぎて逆にリラックスしてきたかも。
そしてそれは突然起こった。
「おいっ!」
右側のスーツが叫んだのと同時に左側のスーツが置いかぶさってきた。次に衝撃、その跡に破裂音、ガラスが砕け、降り注ぐけれど分厚い筋肉に守られて痛くはない。けど、何が起きたのかは全く理解できていない。あれだけ揺れなかった車がずっと揺れている。
「おいっ。応戦しろ! 撃破されるぞ!」
物騒な声が飛び交う。やっぱり頭はパンクしっぱなしだ。考える余地もない。
「ここで死なせたりしたら、この国が終わるんだぞっ。ちゃんと応戦するんだ!」
とんでもない言葉が聴こえてきてもうなんだか訳が分からない。さっきまで普通に学生生活を謳歌していて、試験に不安を覚え、友人と遊んで、部活をそれなりに頑張って、好きな人がいて。普通に生活していただけなのに。どうしてこんな目に。
「ちゃんとした場所に着いてからお話しようと思いましたが、こんなことになってしまったので今お伝えします」
覆いかぶさっているスーツの人が急に声を出してきた。
「アナタにはこの国を背負っていただきます。今はよく分からないでしょうが全力でサポートさせていただきますのでご安心ください」
意味がわからない。
「飛び降りろっ! 爆発するぞ!」
その声とともにいきなり抱えられてそのまま浮遊感。そこから爆音と爆風が襲ってきて自分がどうなったのか分からないまま意識が遠のいている。
まったくもって頭の中が整理できない。夢であってくれ。そう願う。
『お迎えに上がりました』
学校から帰ろうとしたところでそう突然スーツ姿でサングラスの男たちに囲まれたときからずっと頭がパンクしそうだ。お迎えってどこに連れて行かれるのだ。高そうな車に無理やり乗せられることが送迎だとでも言うのか。こんなの拉致じゃないか。
「あ、あの。僕は一体どこへ……?」
その質問はひとりのスーツ姿にギロリと睨まれ、縮こまってしまってそれでおしまいだった。どうやら質問に答えてくれる気はないらしい。体格差がエグい。同じ生物かと思うくらいひとつひとつの筋肉の大きさが違う。いや、筋肉だけじゃない。骨だってきっと違う。それが両側に座っているのだ圧迫感で妙な感覚になっていく。
ああ。火葬場から出てくる骨の量を想像して自分の骨壷がいかにすっからかんか容易に浮かんできて、慌てて振り払う。窮地に陥るとよく分からない妄想が捗るのだろうか。
そう言えば、この車はまったく揺れないな。高い車だとこんなにも乗り心地が違うものなのか。いや、それくらい違いが出るものに乗っていると思うと緊張が増す。いや、もはや緊張が続きすぎて逆にリラックスしてきたかも。
そしてそれは突然起こった。
「おいっ!」
右側のスーツが叫んだのと同時に左側のスーツが置いかぶさってきた。次に衝撃、その跡に破裂音、ガラスが砕け、降り注ぐけれど分厚い筋肉に守られて痛くはない。けど、何が起きたのかは全く理解できていない。あれだけ揺れなかった車がずっと揺れている。
「おいっ。応戦しろ! 撃破されるぞ!」
物騒な声が飛び交う。やっぱり頭はパンクしっぱなしだ。考える余地もない。
「ここで死なせたりしたら、この国が終わるんだぞっ。ちゃんと応戦するんだ!」
とんでもない言葉が聴こえてきてもうなんだか訳が分からない。さっきまで普通に学生生活を謳歌していて、試験に不安を覚え、友人と遊んで、部活をそれなりに頑張って、好きな人がいて。普通に生活していただけなのに。どうしてこんな目に。
「ちゃんとした場所に着いてからお話しようと思いましたが、こんなことになってしまったので今お伝えします」
覆いかぶさっているスーツの人が急に声を出してきた。
「アナタにはこの国を背負っていただきます。今はよく分からないでしょうが全力でサポートさせていただきますのでご安心ください」
意味がわからない。
「飛び降りろっ! 爆発するぞ!」
その声とともにいきなり抱えられてそのまま浮遊感。そこから爆音と爆風が襲ってきて自分がどうなったのか分からないまま意識が遠のいている。
まったくもって頭の中が整理できない。夢であってくれ。そう願う。
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