22 / 145
尾瀬・コカ・コーラ・氷河期
しおりを挟む
「ねえ。尾瀬に行きたいんだけど……ねえっ! 聞いてる?」
いつだってこうだ。聞いて欲しいことだけ、そうやって強めの口調で責めてくる。なのにこっちの言いたいことは聞いてくれやしない。尾瀬の話だってそうだ。ついこの前、こちらから尾瀬の話を振った。その時はふーんとも言わなかった。こちらの話を聞いてすらいないんじゃないかと思う。
それなのに急に尾瀬に行きたいだって? 冗談じゃない。こちらの行く気はすでの削がれているし、今は夢中になっているものが他にもある。そう。パソコンに入れたばかりのゲームに一生懸命なのだ。サービスを開始したばかりのゲーム。ラウンドを繰り返し、毎回武器や防具を購入、編成を行い規定ラウンドの勝利を目指す。日々、バージョンアップを続け、ランキングが入れ替わる。ゲームが始まったばかりの今だからやりがいがある。この状況で外出なんて信じられない。
「おーい。聞いてますかー? おーい」
しつこさは増していく。このまま答え続けなかればどうなってしまうのか気になってきた。
今、規定ラウンドの最後。これに勝利できるかどうかでランクが上がるかどうかが決まる。気合を入れ直すためにコカ・コーラを喉に流し込む。炭酸が喉で弾けかゆみにも似た痛みが弾ける。
気合は十分。最後の戦いに向けて、武器、防具、道具を整理する。持っていける数は決まっている。相性がいい組み合わせは出来ているが、最後のひとつを何にするか悩む。攻撃をひとつ加えるか、防具を入れてダメージを微量に軽減するか、道具を入れて回復をするか。
どれも一長一短。相手次第ではでれも勝利につながるし、どうれも負けいつながる。
「ねぇっってば。尾瀬行くよ! 尾瀬! ほら。準備して」
「って。今からかよっ! そんなにすぐに出立できるわけないだろっ」
「はぁん。ようやっと反応した。ずっと氷河期なのかと思ったよ」
何が氷河期だ。いくら冷え切ったとしてもずっと一緒にいるやつが何を言うか。それに、勝手に今行くことにしやがって。
「ほら。これ押せば決着が突くんでしょ」
彼女はスタートのボタンをクリックしてしまう。準備が整う前に対戦が始まる。最高ランクに行けるかどうかの瀬戸際でどうしてこんなことに。ちゃんと話を聞いてあげればよかったのか。もう全て遅い。終わった。また、コツコツとランクを上げなくてはならない。
「ああ。分かったよ。行くよ。行く。すぐに準備するから待ってろ」
そう準備するし始める旅にパソコンの前を離れた。そうして準備を進める。
「ねえ。画面になにか出てるよっ!」
どうせ負けたときの画面だろ。そう思って荷物を持ってきたのだけれど。
「マジかっ!」
荷物を投げ捨てパソコンの前に張り付く。トップランカーまであと少し。氷河期もまだまだ続きそうだ。
いつだってこうだ。聞いて欲しいことだけ、そうやって強めの口調で責めてくる。なのにこっちの言いたいことは聞いてくれやしない。尾瀬の話だってそうだ。ついこの前、こちらから尾瀬の話を振った。その時はふーんとも言わなかった。こちらの話を聞いてすらいないんじゃないかと思う。
それなのに急に尾瀬に行きたいだって? 冗談じゃない。こちらの行く気はすでの削がれているし、今は夢中になっているものが他にもある。そう。パソコンに入れたばかりのゲームに一生懸命なのだ。サービスを開始したばかりのゲーム。ラウンドを繰り返し、毎回武器や防具を購入、編成を行い規定ラウンドの勝利を目指す。日々、バージョンアップを続け、ランキングが入れ替わる。ゲームが始まったばかりの今だからやりがいがある。この状況で外出なんて信じられない。
「おーい。聞いてますかー? おーい」
しつこさは増していく。このまま答え続けなかればどうなってしまうのか気になってきた。
今、規定ラウンドの最後。これに勝利できるかどうかでランクが上がるかどうかが決まる。気合を入れ直すためにコカ・コーラを喉に流し込む。炭酸が喉で弾けかゆみにも似た痛みが弾ける。
気合は十分。最後の戦いに向けて、武器、防具、道具を整理する。持っていける数は決まっている。相性がいい組み合わせは出来ているが、最後のひとつを何にするか悩む。攻撃をひとつ加えるか、防具を入れてダメージを微量に軽減するか、道具を入れて回復をするか。
どれも一長一短。相手次第ではでれも勝利につながるし、どうれも負けいつながる。
「ねぇっってば。尾瀬行くよ! 尾瀬! ほら。準備して」
「って。今からかよっ! そんなにすぐに出立できるわけないだろっ」
「はぁん。ようやっと反応した。ずっと氷河期なのかと思ったよ」
何が氷河期だ。いくら冷え切ったとしてもずっと一緒にいるやつが何を言うか。それに、勝手に今行くことにしやがって。
「ほら。これ押せば決着が突くんでしょ」
彼女はスタートのボタンをクリックしてしまう。準備が整う前に対戦が始まる。最高ランクに行けるかどうかの瀬戸際でどうしてこんなことに。ちゃんと話を聞いてあげればよかったのか。もう全て遅い。終わった。また、コツコツとランクを上げなくてはならない。
「ああ。分かったよ。行くよ。行く。すぐに準備するから待ってろ」
そう準備するし始める旅にパソコンの前を離れた。そうして準備を進める。
「ねえ。画面になにか出てるよっ!」
どうせ負けたときの画面だろ。そう思って荷物を持ってきたのだけれど。
「マジかっ!」
荷物を投げ捨てパソコンの前に張り付く。トップランカーまであと少し。氷河期もまだまだ続きそうだ。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》
小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です
◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ
◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます!
◆クレジット表記は任意です
※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください
【ご利用にあたっての注意事項】
⭕️OK
・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用
※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可
✖️禁止事項
・二次配布
・自作発言
・大幅なセリフ改変
・こちらの台本を使用したボイスデータの販売
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる