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除霊・PS5・速度制限

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 随分とPS5も入手しやすくなったものだと実感していた。最初に買った当時は抽選をしなければ購入できなかった。何度も何度も抽選に申し込んでは落選。ようやっと手に入れたときは喜びのあまり飛び上がってしまったのを覚えている。

 それからというものほぼ毎日電源を入れたくさんのゲームをプレイした。サブスクでゲームが出来る時代。やることに困りはしなかったし、やりたいゲームはどんどん積み上がっていった。

 それが原因かは分からないけど、びっくりするくらいすぐに故障した。修理はできないと言われ、再度購入することにしたのだ。高い買い物だけれど後悔はしていないし、躊躇もなかった。まだまだやりたいゲームがたくさんあるからだ。家に帰って色々セットアップをしなくてはいけないし、遊ぶまでの道のりはもうちょっとある。

 インターネット回線の速度制限もまだまだ余裕があるはずだし、今夜一晩掛けて必要なものをダウンロードしておきたいところだ。やり途中のゲームが沢山あるのだ。毎日こなさなくてはならないゲームもある。それらをこなすのが最優先だけれど、果たして間に合うのだろうか。

「ちょっとそこのあなた。お待ちなさい」

 そんなことを考えていたら電気屋の前で知らないおじさんに声を掛けられた。スーツだし、サラリーマンにしか見えないのだけれど、話し方と腕に巻いている大量の数珠がちょっとだけ怪しくも見える。

 なので、とりあえず無視することにした。

「ちょ、ちょっと待ってくださいって。あなたつかれてますよ」

 疲れてる? 就かれてる? 突かれてる? 何にしても初対面の人に言われることではない。無視して正解だ。

「悪霊に憑かれているので除霊しないと、今持っているPS5もすぐに壊れますよ!」

 その言葉にピタリと足が止まった。聞き捨てならない事を言われた。

「なんですって?」
「はぁはぁ。なんで逃げるんですか。あなたPS5が壊れたばかりですよね。それはあなたが取り憑かれているからです。その悪霊を除霊しないと同じ結果になります。なので、除霊をしましょう」

 胡散臭いことには変わらないが、言っていることは当たっている。無視するわけにもいかない。

「それって本当なのかよ」
「ええ。もちろん。でなければ、あなたのPS5が壊れたことや買い直したことを知るはずもないでしょう?」

 それりゃそうだ。確かに説得力はある。

「除霊ってあんたがしてくれるのか?」
「ええ。もちろん」
「いくらだ? ふっかけたらただじゃおかないぞ」
「もちろん無料で大丈夫ですよ。ただ、時間が掛かるのでそのPS5を一晩預けてもらえますか?」

 一晩だと。そんな事したら積み重ねてきた連続毎日ログインボーナスが途絶えてしまう。

「お断りする。大体、買ったばかりのPS5に取り憑いてるってのは胡散臭い。騙そうとしたのかもしれないけど残念だったな」

 自分自身を除霊するって話なら信じていたかもしれない。

「ちょ、後悔しますよ」
「はっ。どうだかね」

 そう立ち去った。でも、早速そのよる後悔することになるのだ。

 原因不明の故障。保証期間だったので交換はできたのだけれど、毎日のログインボーナスは結局途絶えてしまった。

 ほんとに取り憑かれているのか。分からないまま、PS5は動き続けている。
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