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Wi-Fi・曇り空・ゴルフ場
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ゴルフ。社会人になってからは縁のないスポーツだと思っていた。商談に参加するような会社でもなく、趣味として行うにはお金がかかり過ぎる。そんなところからゴルフは自分からは遠い存在になった。
でも、今はゴルフ場に向かっている。ただし自らの意志ではなく連れられてだ。
それは突然の一言から始まった。
『なぁ。ゴルフって面白いのかな』
友人のその一言はなんとなく飛び出したはずだ。でも、その返事がきっと友人に火をつけた。
『やるぞ。ゴルフ』
なんでかは全く分からない。友人の中で何かが灯っていた。ゴルフに向かうと決まったのはその日のうち。行くのは今週末。
あまりに急な展開に断ることも忘れて気付けば今日を迎えていた。おとなしく車の乗ってここまで来てしまっているので、自分もまったく興味がないわけじゃないらしい。
あいにくの曇り空。そこだけが懸念点だ。随分寒くなった気候も相まってクラブを握る手がかじかんでしまいそうだ。
「なあ。それにしてもゴルフのやり方って知ってるのかよ」
初心者ふたりでゴルフ場に行くのはいくらなんでも無謀だ。友人は多少なりとも練習してきたのだろうか。
「知るわけないだろう。行って聞いてみるさ。それでもだめならネットで調べればいい。それで楽しめないなら、ゴルフを楽しむ才能がなかったってことで諦めるさ」
まったくもって訳が分からない超理論だ。
「そんなのに俺は付き合わされているのか」
会社人になって数年。友人と呼べるのは隣で車を運転している奴だけ。決して付き合いが悪いとかそういうのではない。入った会社があまりコミュニケーションをとらなくてもいいようなところだったのだ。プライベートには介入しない。飲み会なんてもってのほか。趣味の時間を有意義に楽しみたまえ。そういう会社だった。
でもそれは無趣味な人にとっては苦痛でもある。
毎日のようにプライベートをどうやって過ごすか悩む日々。そんな会社だったから友人なんて増えるはずもなくて、同じような無趣味同士が一緒に居るだけの関係。
だからこういう無鉄砲な計画も初めてではない。タピオカを作りたいとか言い出したこともあればスカイダイビングに挑戦したこともある。
「まあまあ。いつもの事だろ。文句言うなよ。それに不安ならもう調べ始めてもいいんだぞ。ゴルフのスイングってのは難しいらしいからな」
調べてどうにかなるような物か。そこで気付く。
「おい。ここ電波届いてないぞ。どうすんだよ」
「それは不味い。ゴルフ場にWi-Fiが完備されていることを祈るしかないじゃないか」
いや。ゴルフ場に完備されていたってホールを周っている間はきっと圏外だ。そんなんで楽しめるのだろうか。
「って。おい、みろよ」
流石に焦る。白い粒が空から落ちてきているのだ。標高が高いところに来ているとはいえ、驚きだ。
「雪かよ。この車、スタッドレスじゃないんだが……帰るか?」
突然の提案。確かにつもりでもしたらゴルフ場に缶詰め状態になる。それは遠慮したいところだ。そもそも乗り気でなかった身としてはありがたい提案。
「練習場にでも行こう。ホールを周るのはまた今度ってことで」
「ああ。そうしよう」
なにせ天気も調べられない状況だ。それが賢明な判断だと言えた。
「あっ。でもゴルフ場のキャンセル料は貰うからな」
友人が引き戻そうとするハンドルを押さえた。
「いや、やっぱり雪だろうが何だろうがゴルフするぞ」
毎回のように行っている弾丸チャレンジにはひとつのルールがある。勝敗を決めて勝ったほうが負けた方の料金をおごると言うもの。ただしキャンセルの場合はお互い払うことになる。
今月は負け続けで実のところお財布の中身はすっからかんだ。ここはどうしても勝っておきたい。
「ははん。やっぱりゴルフは自信があったんだな。知ってるんだぞ。インターハイ全国出場選手だってことくらい。まあ、そんなに言うなら付き合ってやろう」
結局、圧勝したのだけれど。なんだか腑に落ちない結果だ。そのことを問い詰める気にもなれず、缶詰め状態になったゴルフ場でのんびりしていると友人が近づいてきた。
「まっ。たまにはこうやって返しておかないとな。唯一の友人が付き合い悪くなっちまう」
なんだその超理論は。そんなことなら最初から賭け事にしなければいいのだ。そう口にするのも野暮だと思い。寒さを紛らわせるためにあったいコーヒーを口に流しこんだ。
でも、今はゴルフ場に向かっている。ただし自らの意志ではなく連れられてだ。
それは突然の一言から始まった。
『なぁ。ゴルフって面白いのかな』
友人のその一言はなんとなく飛び出したはずだ。でも、その返事がきっと友人に火をつけた。
『やるぞ。ゴルフ』
なんでかは全く分からない。友人の中で何かが灯っていた。ゴルフに向かうと決まったのはその日のうち。行くのは今週末。
あまりに急な展開に断ることも忘れて気付けば今日を迎えていた。おとなしく車の乗ってここまで来てしまっているので、自分もまったく興味がないわけじゃないらしい。
あいにくの曇り空。そこだけが懸念点だ。随分寒くなった気候も相まってクラブを握る手がかじかんでしまいそうだ。
「なあ。それにしてもゴルフのやり方って知ってるのかよ」
初心者ふたりでゴルフ場に行くのはいくらなんでも無謀だ。友人は多少なりとも練習してきたのだろうか。
「知るわけないだろう。行って聞いてみるさ。それでもだめならネットで調べればいい。それで楽しめないなら、ゴルフを楽しむ才能がなかったってことで諦めるさ」
まったくもって訳が分からない超理論だ。
「そんなのに俺は付き合わされているのか」
会社人になって数年。友人と呼べるのは隣で車を運転している奴だけ。決して付き合いが悪いとかそういうのではない。入った会社があまりコミュニケーションをとらなくてもいいようなところだったのだ。プライベートには介入しない。飲み会なんてもってのほか。趣味の時間を有意義に楽しみたまえ。そういう会社だった。
でもそれは無趣味な人にとっては苦痛でもある。
毎日のようにプライベートをどうやって過ごすか悩む日々。そんな会社だったから友人なんて増えるはずもなくて、同じような無趣味同士が一緒に居るだけの関係。
だからこういう無鉄砲な計画も初めてではない。タピオカを作りたいとか言い出したこともあればスカイダイビングに挑戦したこともある。
「まあまあ。いつもの事だろ。文句言うなよ。それに不安ならもう調べ始めてもいいんだぞ。ゴルフのスイングってのは難しいらしいからな」
調べてどうにかなるような物か。そこで気付く。
「おい。ここ電波届いてないぞ。どうすんだよ」
「それは不味い。ゴルフ場にWi-Fiが完備されていることを祈るしかないじゃないか」
いや。ゴルフ場に完備されていたってホールを周っている間はきっと圏外だ。そんなんで楽しめるのだろうか。
「って。おい、みろよ」
流石に焦る。白い粒が空から落ちてきているのだ。標高が高いところに来ているとはいえ、驚きだ。
「雪かよ。この車、スタッドレスじゃないんだが……帰るか?」
突然の提案。確かにつもりでもしたらゴルフ場に缶詰め状態になる。それは遠慮したいところだ。そもそも乗り気でなかった身としてはありがたい提案。
「練習場にでも行こう。ホールを周るのはまた今度ってことで」
「ああ。そうしよう」
なにせ天気も調べられない状況だ。それが賢明な判断だと言えた。
「あっ。でもゴルフ場のキャンセル料は貰うからな」
友人が引き戻そうとするハンドルを押さえた。
「いや、やっぱり雪だろうが何だろうがゴルフするぞ」
毎回のように行っている弾丸チャレンジにはひとつのルールがある。勝敗を決めて勝ったほうが負けた方の料金をおごると言うもの。ただしキャンセルの場合はお互い払うことになる。
今月は負け続けで実のところお財布の中身はすっからかんだ。ここはどうしても勝っておきたい。
「ははん。やっぱりゴルフは自信があったんだな。知ってるんだぞ。インターハイ全国出場選手だってことくらい。まあ、そんなに言うなら付き合ってやろう」
結局、圧勝したのだけれど。なんだか腑に落ちない結果だ。そのことを問い詰める気にもなれず、缶詰め状態になったゴルフ場でのんびりしていると友人が近づいてきた。
「まっ。たまにはこうやって返しておかないとな。唯一の友人が付き合い悪くなっちまう」
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