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第一章「未知なる異世界」~八人の転移者~

第三十話 「チート冒険者のサーヤ その四」/キョウ(伊集院京介)

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 それからはできるだけ互いに休みを合わせ、複数人で最低クエストを選んで森に入った。

 今は全員再生品の短い剣を持ち、俺たちなりに研究しながら魔獣との戦いに励む。


 少女冒険者、恐らくはかなりの実力者のサーヤは、講師としてこんな俺たちによく付き合ってくれた。

 全てではないが時々現場に顔を出してはアドバイスをしてくれ、自分の経験などを語ってくれる。

「しかし、日本の中学生まで転移したなんてなあ……」
「それも未来からなんて――、いや、信じるしかないけどね」

 信用しているとはいっても、トモとミッツはやはり半信半疑だ。

 目の前で言われて本人のサーヤも苦笑いしている。

「それはこちらも同じよ。あなたたち、過去から来た人間です、って言って誰か信じてくれると思うかしら?」
「そりゃあ無理だろ。この姿じゃ」

 俺と皆は自分たちの姿を見て笑った。


 いつものように小物の魔獣、せいぜいプーレ程度を狙って魔力の発揮とコントロールを練習する。

「僕みたいな格闘好きとしては、この短い剣は好きだよ」

 ミッツは折れた剣の中から特に短い剣を選んで、再生して使っている。

「切っ先が自由に伸びるのなら、かえって使いやすいな」
「確かに森の中ならこの剣は使い勝手が良いよ。俺は二刀流に挑戦したいけどね」

 トモにとってはそれが憧れなのだろう。すでに二人共に、俺と同じぐらいに魔力を使いこなす。

「皆上達が早いわね。やっぱり現代人の方がこんな力はイメージしやすいのかしら……」
「まあなあ、映画なんかで超能力みたいな力は散々見てきたから」
「そうね、念じるよりも想像する方が皆に合ってるみたいね」

 小物の魔獣を狩るには十分ではある。しかし、なんとかしてサーヤのような力に少しでも近づきたい。

「この上を目指すとしたら何が必要なのだろうか……」
「教えてできることじゃないのよね。人それぞれで強くなっていくのよ」

 勿体を付けている訳じゃないのだろう。その何かは個々で違うのだろう。

「それぞれ自分で見つけろということか?」
「そうね、個性は皆別なのだし」


 小物を見つけては狩り、時々はプーレを見つけて倒す。サーヤは周囲を警戒しつつ、皆の動きに目配せをした。

「この人数ならパーティーを組めるわね」

 ゴードは暁の旅団を率いているが、俺たち初心者の集まりでパーティーを名乗っても恥ずかしいだけだ。

「全員ゴブリンじゃあな、魔法使いなんていないし」
「魔力だけで剣使いをサポートする人もいるけど。主に女性ね」
「私は自分でも戦いたいわ」

 コトネもミッツと同じような剣を使う。確かに彼女なら男子顔負けで戦えるだろう。

「私はそのサポートをやってみたいけど……」

 今はアヤノも短剣を持ち小動物系ならば倒すことができた。魔力もあるので相手の動きを止めての手助けはできるだろう。
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