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第二章「戦い続ける男」

第六十三話「アルマの世界」

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 アルマは早起きして、急いでホテルでの朝食を済ませた。通りに出て街の中央区画から北へ向かって歩く。そして北ギルドを見つけて中に入った。

 要領はレディスから聞いていたので、一直線にクエストの掲示板へと向かう。すでにそこには多くの者たちが群がっていた。

「おい、今日は何にする?」
「ダンジョンは人が多すぎてダメだぜ」
「北東はまだ封鎖かあ……。やっぱり西に行く?」
「小物をたくさんでやるか?」

 などと話しながら、この街の冒険者たちがクエストを物色している。アルマは指揮官の指示で行動するので、自分で獲物を選べるなどが新鮮であった。

 人のいない端に行き掲示板を見と、スライムや小動物系魔物のクエストが張られている。

「こんなものもあるのか……」

 農家の畑を荒らすので、と書かれていた。

「ん? 昨日のチ――、いや、アルマじゃないか」
「おっ、確かデフロット……」

 掲示板を見ながらパーティーで話し合っていたデフロットがアルマに気が付く。

「何やってんだ。クエストを受けるのか?」
「いや、私は冒険者登録をしていない。ただの見学だ」
「ふーん……」

 アルマは獲物を横取る話を思い出す。ベルナールは冒険者の糧と言っていた。クエストをするつもりはなかった。

「だったらヘルプで手伝ってもらえないかしら? ねえ!」
「そうよ。五人いればイケるかも」
「うん、確率は上がるよ! 試してみよう」

 ステイニーの提案にローレットとドルフィルも同意する。アルマは話が読めない。

「いや、パラパラとB級、C級程度がいるんでな。包囲して狩れないかと話してたんだが四人じゃ足りん」
「五人でやってみましょうよ! うまく行くかも――。どうかしら?」

 アルマを見つめながらステイニーは誘うように言った。

 いつも二人でやっていた訓練が、一体の魔物を追い込む為に、四人編成にされた。そしてこれは複数を五人で追い込もうという作戦なのだ。自分の訓練にもなるとアルマは思った。

 決して一人では戦うなとレディスにクギを刺されていたが、他のパーティーをヘルプするのなら一人ではない。戦える! 指示違反ではない。アルマはニンマリとした。

「いいだろう。手伝わせてもらおうか!」
「よしっ!」

 デフロットは即決して、即席のパーティーが出来上がった。


「飛んで行かないのか?」
「力はなるべく温存するんだ。今日使える魔力には限りがある。攻撃以外に使うなんてもったいないぜ!」

 五人で森の小道を歩きながら、デフロットはそんなことも知らないのかと言う。

 騎士団は小部隊で分かれても、常に援護が可能な距離で戦う。この広大な森に散った冒険者たちでは互いに援護もままならない。だからこその鉄則なのだろう。

「なるほど……」

 それに個別のパーティーは仲間ではなく、互いに競い合っている。その辺が軍との違いだろう。

「魔力が切れてトドメを刺し損なったら、最後に獲物を横取りされるぜ!」

 デフロットはA級手前のドラゴンを討伐した時の話をする。最後はベルナールに良いところを持っていかれたと苦々しげに言った。

「そうか! 私も初めて会った時に横取りされたのだ!」

 今度はアルマがシャングリラ開拓地での話をする。

「そうだろ! おっさんはそういうヤツだ」
「デフロット! 私たちは助けてもらったのよ。ヘンなこと言わないの!」
「まっ、まあ……、そうとも言うかな?」

 ステイニーに怒られたデフロットはしどろもどろになる。ドルフィルとローレットはそのやりとりを聞いて笑う。

「ベルは強い奴の獲物なら横取りしても構わんと言っていたが……」
「よし! いつか俺も、おっさんの獲物を横取りしてやるぜ!」

 ひとしきり噂話が終り本日のクエストの話となった。

 デフロットたちはいつも四人でひとかたまりになり、遠中距離攻撃、防御、接近戦をそれぞれ担当する。今回はおのおのが、それぞれの力を発揮して魔物を押さえ込むのだ。

 アルマもそれを、こなさなければならない。デフロットから簡単なアドバイスがあった。

「私は魔法使いウィザードだが、剣も剣士フェンサー並には使える。騎士だからな」
「ふ~ん、騎士ってそんなモンなのか……」


 目的地に到着して、アルマとデフロットたちは散開した。すでに探知した複数の魔物を包むように森を移動する。

 広い範囲に五、六ほどの魔物がいた。全てCからB級の範囲だ。アルマたち五人はジリジリと包囲を狭めていく。

 最初の接触は弓使いアーチャーのローレットによる弓矢の攻撃だ。続いて魔導士ソーサラーのドルフィルが魔導弾の攻撃を始め、アルマもそれに続く。魔法使いウィザードのステイニーは障壁を次々に展開し、包囲を突破しようとする魔物を阻んだ。

 デフロットは剣闘士グラディエーターらしく、切り込みと離脱を繰り返し剣の魔力で獲物を削ぐ。

 そしてかたまりつつある魔物の中心にデフロットが突っ込んだ。

 二匹を倒し飛び上がると、魔導弾と矢の集中攻撃で一匹が倒れる。更にアルマが切り込み、デフロットが再び攻撃に参加し残りの二匹も倒した。

「上手くいったぜ、我ながら鮮やかなモンだ……」
「アルマが遠距離も接近戦もこなせるので助かったわね」
「騎士ってのは便利と言うか器用だよなあ」

 アルマはまたニンマリとする。

 騎士団では褒められたり感心されたりなどは、あまりないのだ。
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