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第一章「戦力外の男」
第十話 「B級との戦い」
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この街の近郊にはダンジョンが無数にある。当然だ。ここはそれらの攻略のために作られた街なのだから。
主要な大開口は三つある。
ベルナールたちが戦うのは北の開口「ラ・ロッシュ」。
東には「サント・ロペ」。西には「シス・フール」が魔境への口を開けていた。
他に小物が出てくる未確認の開口は無数だ。
地上を徘徊する大型の魔物も定期的に出没するので、北の奥地、山岳部付近には大開口も間違いなく存在していた。
翌朝、ベルナールは再び噂の魔物がいる北東へと向かう。腐っても元冒険者だ。本能は生きている。
「まったく俺は……」
やはりAだのB級だの聞けば血が騒ぐ。
幸い仕事は順調で月末の家賃の支払いは楽勝だが、思わぬ稼ぎにありつけるかもしれないとの勘に従ったのだ。
魔物を狩って、報酬を得ていた冒険者の性だと苦笑する。
道を進むと森の中に何人かの冒険者の姿が見える。どうやら東に所属する冒険者のようだ。噂の魔物を探しているのだろう。
「あれじゃあ駄目だな……」
おそらく探査の魔力に秀でている魔法使いがパーティーにいるのだろうが、たぶんC級程度の魔物が引っ掛かって探しているのだ。
残存気配でAかB級と混同しているようでは、まだまだ経験が足りない。
じきに分かるようになるさ、とベルナールは微笑して更に一人、奥へ奥へと進む。
少ない魔力で戦いの残滓を探る。雰囲気で魔力の行使跡を感じるのだ。
ベルナールも多少の探知魔法を使える。
「こっちか……」
道を外れてしばらく歩くと木の枝の折れた跡、草地が少々踏み荒らされた場所を見つける。
「これか……」
普通なら人が数人通った跡にしか感じないが、ベルナールはここが戦いの始まりと読んだ。
「人数は四人程度のパーティー……か」
敵の痕跡は少ない。やはり空を飛ぶ相手のようだ。
森を抜けると荒れ地になった。所々の岩が炎に炙られたように変色している。
「敵はB級の――上位種……ドラゴンかっ!」
パーティーは数戦交えながら山岳部へと移動していた。その動きには迷いも澱みもない。この獲物に臆することなく一直線に討伐に向かっている。
B級上位の魔物にこのような対処ができるパーティーは、ここのギルドでは限られている。ベルナールは色々な意味での、馴染みの顔を思い出す。
「あいつらか……」
丘の稜線の向こうに魔力の煌めきが断続している。
今まさに戦闘中のようだったが、戦いの軌跡を追いかけて来たベルナールには一昼夜の追尾と戦闘で、もうこのパーティーが限界を超えつつあるのがよく分かった。
敵は森林地帯から相手を誘い出すように荒野に突出し、冒険者たちもそれに乗ったのだ。
「ちっ!」
果たして成算があって乗ったのか、勢いだけで突き進んだのか? ベルナールは思わず舌打ちした。
刃の上に身を置くような戦いは、この程度の相手とするものではない。
今日は遊びを楽しむように戦わねば、更なる高みは望めないぞっ! と小一時間ほど説教したい気分になりながら、ベルナールは走り出した。
「やれやれ……、なんて状況だよ」
小高い丘を登って見下ろす状況は、戦いが途中で中断している奇妙な光景だった。
漆黒のB級ドラゴンはうずくまり微動だにしない。ただしまだ生きてはいる、活動停止の状態だ。
丘を駆け下りながら、ベルナールは状況を確認する。
パーティーのメンバーは全員で四名。全てが倒れてこちらも動かない。
怪我をしているふうでもない。魔力切れで力が入らないのか、気を失っているようだ。ドラゴンはそのような力を使う。
ベルナールはドラゴンと対峙したまま力尽きてうつ伏せに倒れている、このパーティーのリーダーらしき剣闘士に歩み寄った。
主要な大開口は三つある。
ベルナールたちが戦うのは北の開口「ラ・ロッシュ」。
東には「サント・ロペ」。西には「シス・フール」が魔境への口を開けていた。
他に小物が出てくる未確認の開口は無数だ。
地上を徘徊する大型の魔物も定期的に出没するので、北の奥地、山岳部付近には大開口も間違いなく存在していた。
翌朝、ベルナールは再び噂の魔物がいる北東へと向かう。腐っても元冒険者だ。本能は生きている。
「まったく俺は……」
やはりAだのB級だの聞けば血が騒ぐ。
幸い仕事は順調で月末の家賃の支払いは楽勝だが、思わぬ稼ぎにありつけるかもしれないとの勘に従ったのだ。
魔物を狩って、報酬を得ていた冒険者の性だと苦笑する。
道を進むと森の中に何人かの冒険者の姿が見える。どうやら東に所属する冒険者のようだ。噂の魔物を探しているのだろう。
「あれじゃあ駄目だな……」
おそらく探査の魔力に秀でている魔法使いがパーティーにいるのだろうが、たぶんC級程度の魔物が引っ掛かって探しているのだ。
残存気配でAかB級と混同しているようでは、まだまだ経験が足りない。
じきに分かるようになるさ、とベルナールは微笑して更に一人、奥へ奥へと進む。
少ない魔力で戦いの残滓を探る。雰囲気で魔力の行使跡を感じるのだ。
ベルナールも多少の探知魔法を使える。
「こっちか……」
道を外れてしばらく歩くと木の枝の折れた跡、草地が少々踏み荒らされた場所を見つける。
「これか……」
普通なら人が数人通った跡にしか感じないが、ベルナールはここが戦いの始まりと読んだ。
「人数は四人程度のパーティー……か」
敵の痕跡は少ない。やはり空を飛ぶ相手のようだ。
森を抜けると荒れ地になった。所々の岩が炎に炙られたように変色している。
「敵はB級の――上位種……ドラゴンかっ!」
パーティーは数戦交えながら山岳部へと移動していた。その動きには迷いも澱みもない。この獲物に臆することなく一直線に討伐に向かっている。
B級上位の魔物にこのような対処ができるパーティーは、ここのギルドでは限られている。ベルナールは色々な意味での、馴染みの顔を思い出す。
「あいつらか……」
丘の稜線の向こうに魔力の煌めきが断続している。
今まさに戦闘中のようだったが、戦いの軌跡を追いかけて来たベルナールには一昼夜の追尾と戦闘で、もうこのパーティーが限界を超えつつあるのがよく分かった。
敵は森林地帯から相手を誘い出すように荒野に突出し、冒険者たちもそれに乗ったのだ。
「ちっ!」
果たして成算があって乗ったのか、勢いだけで突き進んだのか? ベルナールは思わず舌打ちした。
刃の上に身を置くような戦いは、この程度の相手とするものではない。
今日は遊びを楽しむように戦わねば、更なる高みは望めないぞっ! と小一時間ほど説教したい気分になりながら、ベルナールは走り出した。
「やれやれ……、なんて状況だよ」
小高い丘を登って見下ろす状況は、戦いが途中で中断している奇妙な光景だった。
漆黒のB級ドラゴンはうずくまり微動だにしない。ただしまだ生きてはいる、活動停止の状態だ。
丘を駆け下りながら、ベルナールは状況を確認する。
パーティーのメンバーは全員で四名。全てが倒れてこちらも動かない。
怪我をしているふうでもない。魔力切れで力が入らないのか、気を失っているようだ。ドラゴンはそのような力を使う。
ベルナールはドラゴンと対峙したまま力尽きてうつ伏せに倒れている、このパーティーのリーダーらしき剣闘士に歩み寄った。
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