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58「第三の令嬢」
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突っ込んで来たユルクマのシャキーン爪が魔獣を捕らえる。が、体はバラバラになるが小物に分裂。
融合が解けるだけか。いや、気を取られるな。僕の敵は目の前の三体だ。だけど、こっちは一人。いきなり無理筋過ぎるだろ。まずいな……。
『時間を稼ぐである』
僕だって、せめてそれくらいはね……。
動物の皮膚を持つ人間の体。胸や腕には獣の顔。頭には角。体の表面にいくつもある気泡が弾ける。完全になるには、もうちょっと時間がかかるのか……。
これが魔人。
右端のヤツが剣を具現させた。先手必勝だ。やるしかない。
あっ!
ユルクマが猛獣の本能で襲いかかる。右手の爪が更に巨大化した。
強化? いや感心している場合ではない。僕も負けじと突撃し、だめもとで剣を打ちかける。お約束の展開だけどこれしかないと、魔人とチャンバラバトルを展開した。
魔人の動きはまだ鈍い。まあ、時間稼ぎにはなるか……。
視界の端にお父さんとお母さんが見えた。
共同で一体の魔獣を倒す。さすがに元勇者パーティーメンバー。伊達じゃないね。
冒険者衣装の二人が、騎士たちを押しのけ前に前にと出てきている。
まるで授業参観に、両親が二人そろって来ているようなバツの悪さだ。僕を一人屋敷に残して外出なんてけしからーん!
お母さんは隙をみて、魔人に魔弾を飛ばす。が、障壁が阻む。しかし砕かれた。
イケる! こっちを援護してくれている。
下段に構えた剣を斜めに振り上げる。隙を狙うっ!
脇腹に刃が食い込み、すかさず魔力を注入した。胴体が内部から爆発して魔人はよろめきながら後退。だが倒せない。
ヤッベ!
もう一体が活動を始めた。騎士と冒険者たちに向かって突進する。
『聖獣変幻!』
シャンタル化け猫が衝突してそれを阻んだ。しかし倒せない。
くそおおっ! せめて一体でも。活躍にはほど遠い。ユルクマもいまひとつ振るわない。どうすれば……。
夜空が光り足元が照らされる。断続的な稲妻が雲もない空間を交差していた。
異常気象だよ。何かの前兆か? これ以上の、ピンチに――
落雷が直撃。魔人が真っ二つだ。
光の中に人影が見える。剣を振り下ろした状態で屈んでいる。何者!?
ここでまさかの追加キャラ投入。誰だ?
全身グレーの体が細い剣を振るって赤い光の軌跡を描いた。それが背後に突き抜け薔薇の紋章となる。ポーズを決めた。
全体に色が着く。金髪に赤いドレス。銀の軽装甲。お姫様ふうの出で立ち。まるで薔薇の騎士。いや、悪役令嬢騎士。
人形と同じだっ! 悪役令嬢人形? 実在したんだ~。転生者、クラスのヤツなのか?
シャンタルが子猫に戻って肩に乗る。
知ってる?
『いや。未知のアバターである』
でも、人形があるよ。そっちが先なのかあ? これは販売のテコ入れになるな……。
魔人の切り口から触手が発生し互いに引き合う。そのままくっつき復活した。
あれで倒せないのか……。
悪役令嬢の薔薇紋章がそのままぶつかり、魔人は四散する。破片は魔獣の姿になるが、そのまま爆砕して消滅。なんと魔人を簡単に倒してしまった。バラバラになった後の再生も許さず破壊した。
すごい技だ……。
『攻撃の魔法陣である』
すごいけど、僕はどうだ? かっ、活躍だ。主役の僕が活躍しなくちゃ。このままじゃ、獲物を総取りされてしまう。
ユルクマはもう一体の魔人と戦ってている。僕は剣を振りかざし、もう一体に向かった。
残った魔人は障壁をいくつも展開し、こちらの攻撃をシャットアウト。渾身の剣を振り下ろすが、魔人は具現の剣で軽々と受ける。
こいつは強い。半魔身より格段に強い。
ぐあっ!
現れた触手が腹を貫く。串刺しにされた。やばい。やばいよ。
『剣に魔法を込めるである』
そうだ。魔力反応だ。僕の力を反応させるんだ。剣が青白く光り大剣になった。剣を砕き、障壁を砕く。頭部を叩き割り、そのまま胴体に食い込んだ。
注入、注入、注入!
中に魔力を流し込み、反応を念じる。魔人の体中にひび割れが広がり爆発した。
やったー! 他のヤツは?
ユルクマの手がドリルみたいに回転を始めた。そして腕が伸び、魔獣にぶっ刺さる。炎が噴き上がり、胴体が破片となり飛び散った。そしてそのまま、炎に包まれる。紅蓮を注入したのか。
魔人の破片は液体状になり引き始めた。
『再生させるであるな。かつ本体も強化される』
これじゃ、不死身だよ……。
屋敷跡は光も収まり、そこから触手キメラが這い出してきた。魔人の残骸は、そこに吸い込まれる。
騎士団と冒険者たちは散らばった魔獣と戦っている。再び噴火が起き、火の弾丸が飛び散った。戦況はまた悪化するだろう。
いたたた。痛いなあ……。
お腹が痛い。痛いけど穴はふさがっている。黒い鎧も修復されつつあった。
具現か。こちらも結構不死身だよな……。
融合が解けるだけか。いや、気を取られるな。僕の敵は目の前の三体だ。だけど、こっちは一人。いきなり無理筋過ぎるだろ。まずいな……。
『時間を稼ぐである』
僕だって、せめてそれくらいはね……。
動物の皮膚を持つ人間の体。胸や腕には獣の顔。頭には角。体の表面にいくつもある気泡が弾ける。完全になるには、もうちょっと時間がかかるのか……。
これが魔人。
右端のヤツが剣を具現させた。先手必勝だ。やるしかない。
あっ!
ユルクマが猛獣の本能で襲いかかる。右手の爪が更に巨大化した。
強化? いや感心している場合ではない。僕も負けじと突撃し、だめもとで剣を打ちかける。お約束の展開だけどこれしかないと、魔人とチャンバラバトルを展開した。
魔人の動きはまだ鈍い。まあ、時間稼ぎにはなるか……。
視界の端にお父さんとお母さんが見えた。
共同で一体の魔獣を倒す。さすがに元勇者パーティーメンバー。伊達じゃないね。
冒険者衣装の二人が、騎士たちを押しのけ前に前にと出てきている。
まるで授業参観に、両親が二人そろって来ているようなバツの悪さだ。僕を一人屋敷に残して外出なんてけしからーん!
お母さんは隙をみて、魔人に魔弾を飛ばす。が、障壁が阻む。しかし砕かれた。
イケる! こっちを援護してくれている。
下段に構えた剣を斜めに振り上げる。隙を狙うっ!
脇腹に刃が食い込み、すかさず魔力を注入した。胴体が内部から爆発して魔人はよろめきながら後退。だが倒せない。
ヤッベ!
もう一体が活動を始めた。騎士と冒険者たちに向かって突進する。
『聖獣変幻!』
シャンタル化け猫が衝突してそれを阻んだ。しかし倒せない。
くそおおっ! せめて一体でも。活躍にはほど遠い。ユルクマもいまひとつ振るわない。どうすれば……。
夜空が光り足元が照らされる。断続的な稲妻が雲もない空間を交差していた。
異常気象だよ。何かの前兆か? これ以上の、ピンチに――
落雷が直撃。魔人が真っ二つだ。
光の中に人影が見える。剣を振り下ろした状態で屈んでいる。何者!?
ここでまさかの追加キャラ投入。誰だ?
全身グレーの体が細い剣を振るって赤い光の軌跡を描いた。それが背後に突き抜け薔薇の紋章となる。ポーズを決めた。
全体に色が着く。金髪に赤いドレス。銀の軽装甲。お姫様ふうの出で立ち。まるで薔薇の騎士。いや、悪役令嬢騎士。
人形と同じだっ! 悪役令嬢人形? 実在したんだ~。転生者、クラスのヤツなのか?
シャンタルが子猫に戻って肩に乗る。
知ってる?
『いや。未知のアバターである』
でも、人形があるよ。そっちが先なのかあ? これは販売のテコ入れになるな……。
魔人の切り口から触手が発生し互いに引き合う。そのままくっつき復活した。
あれで倒せないのか……。
悪役令嬢の薔薇紋章がそのままぶつかり、魔人は四散する。破片は魔獣の姿になるが、そのまま爆砕して消滅。なんと魔人を簡単に倒してしまった。バラバラになった後の再生も許さず破壊した。
すごい技だ……。
『攻撃の魔法陣である』
すごいけど、僕はどうだ? かっ、活躍だ。主役の僕が活躍しなくちゃ。このままじゃ、獲物を総取りされてしまう。
ユルクマはもう一体の魔人と戦ってている。僕は剣を振りかざし、もう一体に向かった。
残った魔人は障壁をいくつも展開し、こちらの攻撃をシャットアウト。渾身の剣を振り下ろすが、魔人は具現の剣で軽々と受ける。
こいつは強い。半魔身より格段に強い。
ぐあっ!
現れた触手が腹を貫く。串刺しにされた。やばい。やばいよ。
『剣に魔法を込めるである』
そうだ。魔力反応だ。僕の力を反応させるんだ。剣が青白く光り大剣になった。剣を砕き、障壁を砕く。頭部を叩き割り、そのまま胴体に食い込んだ。
注入、注入、注入!
中に魔力を流し込み、反応を念じる。魔人の体中にひび割れが広がり爆発した。
やったー! 他のヤツは?
ユルクマの手がドリルみたいに回転を始めた。そして腕が伸び、魔獣にぶっ刺さる。炎が噴き上がり、胴体が破片となり飛び散った。そしてそのまま、炎に包まれる。紅蓮を注入したのか。
魔人の破片は液体状になり引き始めた。
『再生させるであるな。かつ本体も強化される』
これじゃ、不死身だよ……。
屋敷跡は光も収まり、そこから触手キメラが這い出してきた。魔人の残骸は、そこに吸い込まれる。
騎士団と冒険者たちは散らばった魔獣と戦っている。再び噴火が起き、火の弾丸が飛び散った。戦況はまた悪化するだろう。
いたたた。痛いなあ……。
お腹が痛い。痛いけど穴はふさがっている。黒い鎧も修復されつつあった。
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