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54「進化する混合具現」
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うわっ、すごい魔力だね。隠す気なしか。ビンビン頭に響いてくる。
『取り込んだ人間と魔獣の魔力を抽出し、純化している。その魔導反応が外に放出されているである』
まるで化学反応のときの、熱の放出みたい。
魔の力って、そのものじゃなくて反応こそが肝なんじゃないの?
『おおむね正確である。化学とは何であるか?』
たとえば空気みたいな二つの成分を反応させると水になるんだ。
『水生成魔法であるか』
まあ、ね。さて……。
僕は剣を抜く。両手で握りしめて振りかぶった。
「うおおおーっ!」
叩きつけられた床が噴火する。僕は現れた穴に身を投げた。
こっち側はずいぶんでかいんだな。
中学校の体育館ぐらいは広さがあるし、高さも同じくらいある。
そこの真ん中に気味の悪い触手の柱が立っていた。樹齢何百年の大木みたいだ。壁にはいくつも、宝石のような鉱石が光っている。
寝てるのか……。融合された人間は起きているようだけど。
表面は波打ったり、微妙に動いたりしている。
本人に聞きたいことがあるんだよなあ。
剣を抜いて、その柱を刺してみた。表面がいくつか剥がれ、触手に変化して襲いかかって来る。僕は後に飛び退きながら薙ぎ払う。ちぎれ飛んだそれは、小物の魔獣になった。
それっ!
魔撃を飛ばして倒すが、何匹かは逃れ階段の方に行ってしまった。外に出ても、警備の皆さんが倒してくれるだろう。
「来たか……」
元同級生が、やっとご登場だ。
「来たよ。目が覚めたかな?」
「ふん。なかなかの傑作ができたぜ。人の憎悪だけを集めた人間の敵たち。俺が作り上げた魔人だ」
柱の表面に顔、胴、そして両手足が現れる。魔獣と人の融合体。まるで悪魔だ。
殲滅してやるさ。もう人じゃないんだ。
「ぬおおおっ!」
僕は渾身の魔撃をまとった剣を叩きつける。
が、障壁に弾かれた。
「ちいいっ!」
「バーカ。今の貴様の魔力じゃ無理に決まってんだろ。俺がどんだけの人間を喰ったのか、分かってんのか?」
「無理矢理仲間にした力ってやつか?」
「こいつらだって、こうやって力を使いたかったのさ。貴族のやつらをボコボコにしてやろうって、思ってたに決まってんだろ」
「そんなわけあるかっ!」
取り込まれた人たちは泣いていた。
「どうかな? じきに、王都の連中を喰らいつくしてやるぜ」
「やっぱりあいつに協力するんだ」
「そいつだって食ってやる。この俺様が世界の支配者だっ!」
「僕が止めてやるよ……」
それがラノベ。それが異世界の流儀だ。こいつは悪で、勇者仮面が正義の味方。どんでん返しなんてないよ。
「貴様をすりつぶしてやりたいが、今はこの芸術品の制作に没頭したい。さっさと、どっかに行っちまえよ。エセ同級生」
「じきに決着をつけてやるよ」
外皮から魔獣が一体二体と吐き出される。それを追って僕も外に出た。さっきの小物と戦いに中型が三体加わった。
僕は空中に浮き、その戦いをぼんやりと眺める。
あいつをどうやって倒す? 今の力じゃ無理だよ。あいつは喰らって、無限に自身を強化できる。あっちは本物のインフィニティ。こっちは将来込みのインフィニティ未満だ。
騎士たちの連携はなかなかだ。個人の力も強い。ここは任せても大丈夫だろう。
『人には意思がある。それこそが我らを一体せしめる』
そうやって融合に勝つか……。もう帰ろう。本当の戦いは次だよ。
『取り込んだ人間と魔獣の魔力を抽出し、純化している。その魔導反応が外に放出されているである』
まるで化学反応のときの、熱の放出みたい。
魔の力って、そのものじゃなくて反応こそが肝なんじゃないの?
『おおむね正確である。化学とは何であるか?』
たとえば空気みたいな二つの成分を反応させると水になるんだ。
『水生成魔法であるか』
まあ、ね。さて……。
僕は剣を抜く。両手で握りしめて振りかぶった。
「うおおおーっ!」
叩きつけられた床が噴火する。僕は現れた穴に身を投げた。
こっち側はずいぶんでかいんだな。
中学校の体育館ぐらいは広さがあるし、高さも同じくらいある。
そこの真ん中に気味の悪い触手の柱が立っていた。樹齢何百年の大木みたいだ。壁にはいくつも、宝石のような鉱石が光っている。
寝てるのか……。融合された人間は起きているようだけど。
表面は波打ったり、微妙に動いたりしている。
本人に聞きたいことがあるんだよなあ。
剣を抜いて、その柱を刺してみた。表面がいくつか剥がれ、触手に変化して襲いかかって来る。僕は後に飛び退きながら薙ぎ払う。ちぎれ飛んだそれは、小物の魔獣になった。
それっ!
魔撃を飛ばして倒すが、何匹かは逃れ階段の方に行ってしまった。外に出ても、警備の皆さんが倒してくれるだろう。
「来たか……」
元同級生が、やっとご登場だ。
「来たよ。目が覚めたかな?」
「ふん。なかなかの傑作ができたぜ。人の憎悪だけを集めた人間の敵たち。俺が作り上げた魔人だ」
柱の表面に顔、胴、そして両手足が現れる。魔獣と人の融合体。まるで悪魔だ。
殲滅してやるさ。もう人じゃないんだ。
「ぬおおおっ!」
僕は渾身の魔撃をまとった剣を叩きつける。
が、障壁に弾かれた。
「ちいいっ!」
「バーカ。今の貴様の魔力じゃ無理に決まってんだろ。俺がどんだけの人間を喰ったのか、分かってんのか?」
「無理矢理仲間にした力ってやつか?」
「こいつらだって、こうやって力を使いたかったのさ。貴族のやつらをボコボコにしてやろうって、思ってたに決まってんだろ」
「そんなわけあるかっ!」
取り込まれた人たちは泣いていた。
「どうかな? じきに、王都の連中を喰らいつくしてやるぜ」
「やっぱりあいつに協力するんだ」
「そいつだって食ってやる。この俺様が世界の支配者だっ!」
「僕が止めてやるよ……」
それがラノベ。それが異世界の流儀だ。こいつは悪で、勇者仮面が正義の味方。どんでん返しなんてないよ。
「貴様をすりつぶしてやりたいが、今はこの芸術品の制作に没頭したい。さっさと、どっかに行っちまえよ。エセ同級生」
「じきに決着をつけてやるよ」
外皮から魔獣が一体二体と吐き出される。それを追って僕も外に出た。さっきの小物と戦いに中型が三体加わった。
僕は空中に浮き、その戦いをぼんやりと眺める。
あいつをどうやって倒す? 今の力じゃ無理だよ。あいつは喰らって、無限に自身を強化できる。あっちは本物のインフィニティ。こっちは将来込みのインフィニティ未満だ。
騎士たちの連携はなかなかだ。個人の力も強い。ここは任せても大丈夫だろう。
『人には意思がある。それこそが我らを一体せしめる』
そうやって融合に勝つか……。もう帰ろう。本当の戦いは次だよ。
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