転生先は上級貴族の令息でした。元同級生たちと敵対しつつスローライフで戦記します。人気者への道は遠いよ。オタノリのまま貴族生活を満喫したい。

川嶋マサヒロ

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33「墜ちた暗黒の騎士」

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 魔獣出現地域には、当然僕の方が先に到着した。ユルクマの出番なしだぜ。ふふふ。
 しかし――。
 どこにもいないね。
「おいっ、あれって――」
「そうだ勇者仮面だぜ」
 参ったなあ。バレちゃったよ~。有名人にはプライベートなんてないね。
 厳戒体制とは言え、王都の大通りともなればそれなりに人がいる。こんな姿で突っ立ってたら、そりゃ目立つよな。野次馬が集まってきた。
「聖人ミカエル・コサキだ。本当にいたんだ」
 んー、あのヘンな名前か。聖人ってなんだ?
 ここは活躍して人気ダメ押しだ。敵はっと――。
ステルス隠密である。周辺の気配を探ると念じるのだ』
 うん。あれって……。
 高い建物の壁に何やら違和感がある。僕は飛び上がりそこに近づいた。壁のように見えたが、ここは壁じゃない。剣で切り掛かるとそいつが姿を現した。カメレオンふうの爬虫類魔獣(動物ではないけど便宜上)だ。しかしすぐ背景に溶け込む。
 そのまま壁を伝い下の方へ降りていった。建物の側面に入る。僕もすかさず追いかけると、横道に降りて素早く逃げた。
 角の先から人の悲鳴が聞こえた。まずいぞ。
 そこには数人が倒れていた。うめいたり、唸っていたりで、致命傷には程遠いようだ。良かった。
 何事かと後から野次馬がやって来た。介抱は任せて、僕はステルス隠密魔獣を追う。
「うわっ」
「がっ」
「ぐわあっ」
 ヤツは出会い頭に人を打ち倒しながら逃げている。まずい。これはまずいんじゃないのか?
 僕は再び大通りに出た。
 な、なにぃ~っ!
 そこにはユルクマが立ちはだかっていた。先回りしていたのだ。
 きっ、汚いぞ~っ!
 シャキーンとクマ爪が伸びる。そのままあっさり、ステルス隠密魔獣を討ち倒してしまった。体の大半が爆砕する。
 や、やられた~。
 追いついた野次馬たちが叫ぶ。
「クマさんが犯人を止めているぞ!」
「さすがクマさん」
 後から兵士も数名追いかけて来た。更に通りの野次馬も集まって来る。まずい、まずいじゃない。これはよくある主人公ピンチの展開。
「あいつが、やったんだー!」
 キターーーッ! 見当違いの犯人認定。
「あいつに何人もやられちまった!」
「逃がすなっ!」
 僕は不条理にも指を突きつけられる。そのままスーっと横に動くと、それはユルクマを指した。
 よーしっ。
「こいつだ。この黒いのだ」
 しかし指は再び僕に。犯人をユルクマになすりつける作戦は失敗だ。
 あっ! ユルクマが逃げた。じゃ僕も。とうっ!
 空に跳び上がりクマの行き先を追う。路地に入り込み見通しが悪くなる。こちらをこうとしていた。
 くそっ! 見失った……。
 貧民街近くでユルクマの気配が消える。
『今夜は魔獣の進行は、もうないであるな』
 カメレオンはこっちを油断させてからの偵察要員かあ。あれって爬虫類だよね? 魔獣でいいの?
『能力は爬虫類由来であっても、体はほぼ獣である』
 偵察ねえ……。
 貧民街は弱点だと思ってたけど、あそこにはユルクマがいる。つまり王政もそれを理解して騎士や兵士をあまり送らないようにしているのだろう。
 バカ騎士あたりはユルクマに手を出して返り討ちにあうだろうしね。
 今夜の僕って活躍したかな~。
『まったくダメである』
 帰ろうか。もう寝るっ!
『戦いの後は休息である』
 ほとんど戦っていないけどさっ!
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