転生先は上級貴族の令息でした。元同級生たちと敵対しつつスローライフで戦記します。人気者への道は遠いよ。オタノリのまま貴族生活を満喫したい。

川嶋マサヒロ

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26「やっかいな同級生」

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 翌日も屋敷の中は騒がしい。戦闘への対応やら何やらで、来客がひっきりなしだ。
 窓から庭を眺めているとピンク子猫がやってきた。壁をすり抜けて、部屋の中に入って来る。
『ローデン聖教団は夜間の警備を強化するである。昨夜戦った大聖女はニ名。夜は迎撃体制をとると決まったである』
 その大聖女って昨日は街にはいなかったよなあ。どこにいたの?
『森の奥深くで更なる進行を食い止めていたである』
 なるほどね。
『これからは一名が街の街壁付近を守るである』
 お手並拝見します。他の聖女は来ないんだ?
『地方でも魔獣の動きが活性化していである』
 う~ん……。これは作戦なのかなあ。波があるんだよね?
『そうである。今、魔獣らを指揮している動きはない。そもそも魔人は未確認である』
 そういうものなのか。自然に起きた波なら少しは安心だね。
 でもなあ……。
 僕に刺さっているトゲ。それは厨二病をこの異世界に持ち込もうとしている、アレの存在だ。
『あのメッセージ、意識干渉は私も聞いたである』
 そうだよね。やっぱ知ってるよなあ。
 あれって妄想? それとも強ければなんとかなるモンなの? この世界は。
『目的は進化の具現化と推察する。もしくは夢である』
 アバター化身具現世界を作りたいのかあ。
『理解したのであるか?』
 テキトーに言ってみただけ。
『異世界人同士当たらずも、であるかな』
 ますます、分からん。
 おかしな世界に来たら、おかしなことを考え始めてしまった同級生。
 僕は現実世界でおかしな妄想にふけっていたから、この世界に来て普通になってしまった。まあ、それは極端なたとえだけれど。
 ローデン聖教は僕以外を見つけられないの?
『魔力が強く溢れていれば可能である。ただ弱い、または制御をおぼえたのなら不可能である』
 弱いならたいして問題はない。この世界には大勢いるから。制御、制御かあ……。それが魔力のキモなんだな。
 あのユルクマは?
『本体不明である』

 ん?
 お父さんの馬車が帰ってきた。今日は朝から出たり入ったりだ。

  ◆

 掃討が成功したのか、静かな夜が続いていた。小物は出ているけど騎士や兵士さんたちも頑張ってくれているみたい。こちらの防衛体勢も整ってきたのだろう。
 僕は毎日人形を使って遊ぶ。戦闘シミュレーションというやつだ。
 金髪騎士野郎人形の印象は最悪だよ。こいつの正体はおバカ騎士だったからだ。
 一方、問題のユルクマ人形の印象も悪い。人気者なのがムカつく。

 おっと。お父さんのお帰りだ。
「どうでした?」
「うん。あれ以来、謎の黒騎士は鳴りを潜めたよ」
 二人は気になるネタを話しながら部屋に入って来た。まずいなあ。王政で話題になってるんだ。
「魔人じゃないでしょ。誰かのアバター化身具現よねえ……」
「問題は誰の、だな。冒険者ギルドからは、該当者なしと連絡があった。当然だな」
 王政にもアバター化身具現は認識されているか……。けっこう一般的なんだな。僕だけが持つチートスキルじゃないんだねえ……。ユルクマもいたし。
「魔獣や魔人の仲間なんてあり得ないわよ。疑いは晴れたの?」
「うん。見習い実習の騎士二人は謹慎処分だな。上級貴族だが、対応がアレでは当然の措置だ。悪いがそのうち田舎領地にお帰りだよ」
 ざまあっ! とにかく僕の冤罪が晴れて良かったよ。
 それにしても、上級貴族ってあんなのばっかなのかい。お父さんはもちろん別だけどさ。
「まあねえ。人型アバター化身具現なんて、そうそう見ないし」
「兵士たちに聞けば良かったのさ。ベテランの兵もいたんだし」
 僕のは、レア・・ではあるんだな。
 ユルクマの話題はなしか。なぜ僕の黒騎士だけが警戒される? 色か?
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