転生先は上級貴族の令息でした。元同級生たちと敵対しつつスローライフで戦記します。人気者への道は遠いよ。オタノリのまま貴族生活を満喫したい。

川嶋マサヒロ

文字の大きさ
上 下
22 / 64

21「二度目の誘惑」

しおりを挟む
 そして夜。スヤスヤとした安眠は、またも例のヤツに邪魔されてしまった。

『山川中学校二年A組の諸君よ。聞こえているか? 俺はこの異世界を統率するためにやって来た』

 まったく……。赤ん坊は寝ている時間だよ。ん~、力が弱いから意識のない時にしか接触できないのかな? シャンタル将来聖女のように、強くはないのかもしれんなあ。

『世界を平和に導き征服する。俺の下僕たちよ。もうスキルを手に入れたのかな?』

 入れたよっ!

『だとしても無敵の俺にはかなうまい。だから従えいっ! この俺の理想を実現するために、二年A組で道を切り開くんだっ! 俺たちの力を結集するのだ。お前たちの不安は安心に変わるであろう』

 しかしこいつ。導入部分が前回と似てるな~。原稿の使い回しはいけないよ。

『後進国ばかりがより集まった劣等異世界を、我らが知っている文明、芸術、先進社会のように――……』

 いやー、かなり同じ事言ってるねえ。コイツめ。一年でさしたる成果が上がらなかったな。ざまあ。
 一歳になっても厨二を継続中か。そろそろこの世界の現実を知って、それなりに対応してくれよ~。

『――文明とは文化とは何かを知らない異世界人に、叩き込んでやらねばならぬ』

 無理でしょう。さすがに少数の僕らで、この異世界をなんとかしようだなんて。
 少数が多数を支配するのは漫画やアニメの世界だけ。あとラノベも。

『そして我関せずを貫いている者たちよ。命が惜しければこの私に統率されるのだ。この世界の異分子として抹殺される前に目覚めるのだ。同志たちよ』

 だから僕は、貴族だけど中流に振る舞って静かに生きていくつもりさ。もちろん冒険はするけどね。異世界だし。

『我々はついに一歳を迎えた。この世界のスキルを手に入れる者も数多く出てくるだろう。その力を使い我らに協力せよ。我らでこの異世界を支配する。俺たちには可能だっ!』

 それは大いなる誤解、勘違い。少数の大勢が賛同してこそ、それが可能なだよ。
 悪側と分かれば調子に乗った多数は皆去っていく。だから少数がことを成した、と思われたんだ。
 君はまだ、ただの少数。たぶん見た目で強い力を手に入れて勘違いしてるんだろうけど、それは単なる厨二病。銃を持ってても百人相手なら素手にだって勝てないよ。ゾンビ映画はフィクションだけど真実さ。
 僕は素手として使い倒されるのは御免だ。もちろんゾンビもね。最後に逃げるくらいなら、最初から加わらないよ。
 それにしても、我ら――か……。もう誰かと接触しているような口ぶりだな。
 集まれって言ってた意味が分かった。早くにアバター化身具現に目覚めたヤツもいたはずだ。赤ちゃん以上の力を手に入れたヤツらがいるのか。

『歯向かうものは抹殺する。日和見を決めたなら、追い込んでやる。分かったな』

 おっと。本音がでたね。

『我ら転生者たちでこの世界を救う。征服する。賛同する者は我がもとに集まれ』

 知らんがなー。知らん知らん。
 確かに今、この世界に民主主義などひとかけらもない。この国は王制だ。王が頂点に立ち貴族が支配し、権力が力であり、力とは暴力のことなのだ。
 僕たちが住んでいた世界だって、似たようなもんでしょう。
 もっと小さいけど、学校だってそうさ。学力や人柄で評価が決まり、そのまんまそれは階級になって生徒たち皆が意識していた。
 そちらが足りなければファッションやら運動神経か、何かにすがって皆が優位を争っていた。

『俺たちが統率する』

 それが本音かあ。
 この世界は遅れているんじゃない。ただちょっと形が違うだけなんだよ。僕の両親は、あの日本に比べて別に上とか下とか何かとは思わない。

 いや、ずいぶんと考えてしまったけどさ。
 これは異世界に馴染みのある、僕個人の感想です。
 この同級生はあきらめないのかな? 毎年誕生日にこれを聞かされるのかあ……。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-

ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。 困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。 はい、ご注文は? 調味料、それとも武器ですか? カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。 村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。 いずれは世界へ通じる道を繋げるために。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

処理中です...