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51「絵画サークル革命論」
しおりを挟む トールに引き上げられるように風呂から出され、岩の上で浄化と火と風の融合した高度な魔法(と後にトール自らが自慢した)で、あっという間に体を乾かされた。
「おーい、ギベオン!奥方が倒れたぞー!」
タオルを股間にひらりとかけられギヴを呼ばれた。
やめてくれ。こんな情けない姿を見られたくないのに。
「全く、湯当たりだなんて、あなたは子供ですか!」
「うう、子供みたいで、ごめんなさい」
大人な話をしていたからこそのぼせてしまったのだが、そこは黙っておく。
ギヴにお姫様抱っこをされ部屋に連れてこられたオレは、藁のベッドに転がされ、ノートのような適当なもので、全裸のまま扇がれている。一応股間にタオルはある。ズレていてもオレに直す余力はないが。
「はー、風が気持ちいい・・・」
扇がれて、ようやくぐらぐらとするめまいが治まってきた。
「くっ、・・・ラド!」
「・・ん?」
風が止まったと思ったらギヴがベッドに突っ伏していた。どうした?
「あ~あ、天然ほど怖いものはないね。ほれ、水だ」
トールからグラスを差し出された。
「・・んん?」
「そんな潤んだ目と、のぼせた顔で“気持ちいい”なんて言うんじゃないよ。襲われるぞ。
ほら、ギベオン!倒れてないで、どいたどいた!俺がラブラドライトにパジャマを着せるよ」
追い立てられ、すごすごと立ち去るギベオン。
出会った時はあんなにクールなトールだったが、今や肝っ玉母さん属性丸出しだ。お世話になります。
なんだかんだで夜もかなりふけた頃、オレたち4人はようやく並んで藁のベッドに寝そべった。
壁際から、ギベオン、オレ、トール、テムの並びだ。
テムが魔法で灯りを小さくする。
「う~、楽しすぎる!オレ、こんなに大勢で寝るの初めて!
──ずっと勉強ばかりしてたから外にも出なかったし、友達なんて全然いなかったから」
藁はふかふかで、シーツを掛けていても、いい匂いがする。
「信奉者はかなりいましたが」
「あはは、そんなのいないって。・・・ギヴ、連れてきてくれてありがとう」
「ラド・・・」
「はい、はーい。明日の予定はどうするんだ?時間がないって言ってたけど、もう一泊ぐらいできる?」
できそうなら、明日は俺の実家に泊まらないか?地底にあるんだけど。ドワーフの町を案内するよ。
「・・・え?」
聞き間違いかな、地底って聞こえたけど・・・。
「本来、俺たちドワーフの住処は地底なんだべ。この村は、人族に対する仮の姿さ」
「・・・ドワーフの町?」
あ、ギヴがわくわくしてる。商売人としても見過ごせないに違いない。
「──もとから、こちらには2泊の予定で来ていたから大丈夫だ」
「ありがとう、テム、トール。すごく楽しみだよ」
楽しみすぎて、うふふっ、と笑いが湧き上がってくる。今日は眠れる気が全くしない。
「──私だけが来ていた時はそんな歓迎のされ方はしていなかったが」
「はは、ギベオン焼きもちだべ。んでも、俺たちの正体を明かしているのは後にも先にもギベオンだけだったべ?それだけ俺たちはお前を買っているってことさ」
「そ、エメラルドは別格なの。焼くなよギベオン」
「焼いてなど・・」
ちょっと拗ねたように見えるギヴが可愛い。
うふふ。
「・・・ありがとう」
ギヴに、テムに、トールに。藁のベッドに、白いシーツと枕に。暖かい暖炉と、素敵な山小屋に。湯当たりした露天風呂に、きらめく全ての星たちに。──オレを取り巻く全ての者たちに感謝します。
ギヴたちの会話を聞きながら、あんなに眠れそうにないと思っていたのに、深い感謝を捧げながらオレは眠りに落ちていた。
翌日、ぱちりとまだ薄暗いうちに目が覚めたオレの目の前には、ギヴの厚い胸板があった。
男同士でくっついているのは、傍から見たらさぞむさ苦しいだろう。だけど、不思議とオレ的には、さほど気にならなかった。いいんだよ、愛があれば。──とか思ってしまう。
だが、ギヴの腕に囲われて出れないな。反対隣にはトールがいて、二人を起こすのも忍びないので、結構な時間動けないでいた。
村長の屋敷の裏庭の大きな石。そこが地底と繋がるポイントの一つだそうで、オレたちもそこが使えるようにトールが魔法で登録してくれた。
石の中に入っていくという不思議な体験の後、着いたそこは、もう、なんていうか、町中だった。レンガの石畳の道に両側にはこれまたレンガ作りのいろいろな店が並んでいる。
地底だけど暗くはない。太陽はないが所々に置かれている石が発光しているんだ。
閉塞感も、ないな。見上げれば空がちゃんとある。雲はないけど、不思議と澄んだ、緑がかった水色の空だ。
「この先に大きな地底湖があって、その湖面の色が岩の天井に映し出されているんだ」
「へえ・・・」
不思議な話だ。
町を案内されながらテムとトールの仲間も紹介された。人の姿とドワーフの姿が半々だった。何故かと訊けば、その時の気分だそうだ。仕事中は基本ドワーフ本来の姿で、その他は割とコロコロ姿を変えているらしい。不思議な話だ。
町の外れにある地底湖にも連れて行ってもらい、一日の最後はトールの実家で手厚いもてなしを受けた。
驚くことばかりの一日はあっという間に過ぎていった。
「おーい、ギベオン!奥方が倒れたぞー!」
タオルを股間にひらりとかけられギヴを呼ばれた。
やめてくれ。こんな情けない姿を見られたくないのに。
「全く、湯当たりだなんて、あなたは子供ですか!」
「うう、子供みたいで、ごめんなさい」
大人な話をしていたからこそのぼせてしまったのだが、そこは黙っておく。
ギヴにお姫様抱っこをされ部屋に連れてこられたオレは、藁のベッドに転がされ、ノートのような適当なもので、全裸のまま扇がれている。一応股間にタオルはある。ズレていてもオレに直す余力はないが。
「はー、風が気持ちいい・・・」
扇がれて、ようやくぐらぐらとするめまいが治まってきた。
「くっ、・・・ラド!」
「・・ん?」
風が止まったと思ったらギヴがベッドに突っ伏していた。どうした?
「あ~あ、天然ほど怖いものはないね。ほれ、水だ」
トールからグラスを差し出された。
「・・んん?」
「そんな潤んだ目と、のぼせた顔で“気持ちいい”なんて言うんじゃないよ。襲われるぞ。
ほら、ギベオン!倒れてないで、どいたどいた!俺がラブラドライトにパジャマを着せるよ」
追い立てられ、すごすごと立ち去るギベオン。
出会った時はあんなにクールなトールだったが、今や肝っ玉母さん属性丸出しだ。お世話になります。
なんだかんだで夜もかなりふけた頃、オレたち4人はようやく並んで藁のベッドに寝そべった。
壁際から、ギベオン、オレ、トール、テムの並びだ。
テムが魔法で灯りを小さくする。
「う~、楽しすぎる!オレ、こんなに大勢で寝るの初めて!
──ずっと勉強ばかりしてたから外にも出なかったし、友達なんて全然いなかったから」
藁はふかふかで、シーツを掛けていても、いい匂いがする。
「信奉者はかなりいましたが」
「あはは、そんなのいないって。・・・ギヴ、連れてきてくれてありがとう」
「ラド・・・」
「はい、はーい。明日の予定はどうするんだ?時間がないって言ってたけど、もう一泊ぐらいできる?」
できそうなら、明日は俺の実家に泊まらないか?地底にあるんだけど。ドワーフの町を案内するよ。
「・・・え?」
聞き間違いかな、地底って聞こえたけど・・・。
「本来、俺たちドワーフの住処は地底なんだべ。この村は、人族に対する仮の姿さ」
「・・・ドワーフの町?」
あ、ギヴがわくわくしてる。商売人としても見過ごせないに違いない。
「──もとから、こちらには2泊の予定で来ていたから大丈夫だ」
「ありがとう、テム、トール。すごく楽しみだよ」
楽しみすぎて、うふふっ、と笑いが湧き上がってくる。今日は眠れる気が全くしない。
「──私だけが来ていた時はそんな歓迎のされ方はしていなかったが」
「はは、ギベオン焼きもちだべ。んでも、俺たちの正体を明かしているのは後にも先にもギベオンだけだったべ?それだけ俺たちはお前を買っているってことさ」
「そ、エメラルドは別格なの。焼くなよギベオン」
「焼いてなど・・」
ちょっと拗ねたように見えるギヴが可愛い。
うふふ。
「・・・ありがとう」
ギヴに、テムに、トールに。藁のベッドに、白いシーツと枕に。暖かい暖炉と、素敵な山小屋に。湯当たりした露天風呂に、きらめく全ての星たちに。──オレを取り巻く全ての者たちに感謝します。
ギヴたちの会話を聞きながら、あんなに眠れそうにないと思っていたのに、深い感謝を捧げながらオレは眠りに落ちていた。
翌日、ぱちりとまだ薄暗いうちに目が覚めたオレの目の前には、ギヴの厚い胸板があった。
男同士でくっついているのは、傍から見たらさぞむさ苦しいだろう。だけど、不思議とオレ的には、さほど気にならなかった。いいんだよ、愛があれば。──とか思ってしまう。
だが、ギヴの腕に囲われて出れないな。反対隣にはトールがいて、二人を起こすのも忍びないので、結構な時間動けないでいた。
村長の屋敷の裏庭の大きな石。そこが地底と繋がるポイントの一つだそうで、オレたちもそこが使えるようにトールが魔法で登録してくれた。
石の中に入っていくという不思議な体験の後、着いたそこは、もう、なんていうか、町中だった。レンガの石畳の道に両側にはこれまたレンガ作りのいろいろな店が並んでいる。
地底だけど暗くはない。太陽はないが所々に置かれている石が発光しているんだ。
閉塞感も、ないな。見上げれば空がちゃんとある。雲はないけど、不思議と澄んだ、緑がかった水色の空だ。
「この先に大きな地底湖があって、その湖面の色が岩の天井に映し出されているんだ」
「へえ・・・」
不思議な話だ。
町を案内されながらテムとトールの仲間も紹介された。人の姿とドワーフの姿が半々だった。何故かと訊けば、その時の気分だそうだ。仕事中は基本ドワーフ本来の姿で、その他は割とコロコロ姿を変えているらしい。不思議な話だ。
町の外れにある地底湖にも連れて行ってもらい、一日の最後はトールの実家で手厚いもてなしを受けた。
驚くことばかりの一日はあっという間に過ぎていった。
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