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50「男自信、みなぎる!」

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 自室に帰ったシルヴェリオは、ヴァレンテとイデアに事の顛末を話した。
「いやはや、令嬢完オチですなあ。さすがお坊ちゃま。お見事!」
「どうってことないな。普通だよ」
「そのような話ではないかと思っていました」
 いつもの否定がない。イデアはまるで予言者のごときに言った。それがどのようなスキルかシルヴェリオは興味を持つ。
「どういうことだ?」
「突然手を差し出され、触れられると思ったのです。そのような時女性は思わず拒否してしまうものなのですよ。たとえ相手が誰であれ」
「そうなのか?」
「そうです。あのような態度をとってしまい、フランチェスカ様はとても後悔したのではないでしょうか?」
 スキルではない女子イデアの意見と、三人娘の意見が一致した。確信となる。
「そうか……。そうか、そうか、そうか、そうなのかっ!」
 シルヴェリオは表情が晴れた。貴公子の完全復活だ。立ち上がり胸をそらす。
 そして並ぶ絵画を眺める。
「そうです。その通りですわ。ごめんなさい、びっくりしちゃって」
「ふふっ……、可愛いやつめ」
 絵画との前向き会話も復活した。なお絵画フランチェスカのセリフはヴァレンテとイデアには聞こえない。
「これからはそれなりの手順、もっと段取りが必要かと……」
「そうか、そうだな。時間をかけてじっくりか。ふふふ……」

 二人は退出し、シルヴェリオは真っ白いキャンバスを立て筆を握る。創作衝動を抑えきれない。
 目を閉じると躍動するフランチェスカの姿が見えた。最高の一瞬を切り取る。
 魔獣に挑む決意の瞳。翼が生えたかのような肢体したい。下絵を一気に仕上げる。

  ◆

 雑貨と小物の店【ミコラーシュ】。こちらは平穏なものだった。穏やかな令嬢たちを接客し、感謝される気分は悪くない。
 カウンターの端に置かれる小箱が目に付いた。
「これは何ですか?」
「修理の依頼だ。ちょっと見てみろ」
 その箱にはセルモンティ家の伝票が貼られている。フランチェスカの品だ。中には小ぶりのペンダントがあり、中心の魔核が割れている。
「交換の依頼だよ。突然割れたそうだ」
「込められた魔力の不具合ですかね?」
 シルヴェリオはとぼける。これはあの・・娼婦が着けていたペンダントだ。ラファエロ神父が何らかの魔力を込めてフランチェスカに渡していた、ストーク追跡のスキルを阻害していた元凶だ。
「修理の依頼はどのような……」
「新しい魔核の装着だ。スキルの入らない程度の」
 シルヴェリオはピンセットを取り、破片をつまみ上げる。
「元の魔核もその程度ですか……」
 スキル主の消滅により、込められた魔力が一気に解放され本体ごと弾けたのだ。
 低位の魔核をここまで仕上げるこのスキルは、シルヴェリオにはなかった。
(魔人の魔核利用は、人間より上なのか……)

 更に続きがある。午後の納品にセルモンティ家宛の品があったのだ。中を見たいとの衝動を抑えつつ、シルヴェリオはプロの仕事に徹した。
 品出しが終わると、奥からレティが来た。その箱をカウンターに置く。
「見てみろ」
「いいんですか?」
「かまわんぞ。商品だからな。意見を聞かせてくれ」
 恐る恐る開けると、そこにはビキニアーマーが収まっていた。
(なんとっ!)
「初めオーダーメイドを受けたんだ。需要があるか分からんが、評判によってはこれから積極的に受ける」
 複数の工房が製作したパーツを縫製した一品。全体に複数の魔核が装着されていた。
「細かい寸法まで指定されたよ。本人の適性に完全に一致させたと、注文に来たメイドが言っていた」
 武具に魔核を仕込む理屈と同じだ。魔力の充填と解放。しかし配置と数には他の意図も感じた。
(放出される魔力量が大きい?)
 箱に入っている注文書類を見た。全てが指定される、まるで武器の設計図だ。
「ちょっとした実験だな。なかなか優秀な戦闘メイドのようだ」
 レティもまた意図を感じているようだ。衣装に仕込むのは前衛的ともいえる。
「それから顧客情報は絶対に漏らすなよ」
 シルヴェリオはついつい寸法までを目で追っていた。
「分かっております」
「特に胸のサイズだな。令嬢たちは気にしているから」
「好みの問題でしょう。気にするようなことではないですね」
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