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第9章 日本の国際競争力を高めろ!

生産性を向上しよう!(その1)

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※この物語はフィクションです。登場する人物・団体は架空であり、実在のものとは関係ありません。

 僕は移民によって日本の人口を増やすことに関して賛成だ。でも、移民については国会やマスコミで反対する意見が出ることが予想される。

 僕は外国人移住者を増やす案が政府から拒絶された場合のために、別の案を考えることにした。
 何度も登場させて申し訳ないのだが、GDPは以下で計算される。

・GDP = 1人当たりGDP × 人口

「人口」を増やす方法については先ほど検討したから、今度は「1人当たりGDP」を向上させる方法を考えることにする。「1人当たりGDP」を増やすことは「一人当たりの生産性」を向上させるということだ。

 ――生産性を上げる方法か……

 そんなことが分かれば民間企業がとっくにやっているはずだ。
 業務改善やコスト削減などいろんな方法を試している。僕がちょっと考えたくらいで正解が出てくるとも思えない。
 良い案が思いつかない僕は、茜に話しかけた。

「一人当たりの生産性を上げる、良い案はないかな?」
「生産性ねー。物価を上げる、業務効率を上げる、労働時間を増やす。このどれかかな?」

 インフレは物価を上昇させるから日本国内の経済規模を増加させる。GDPの増加にも有効だ。
 ただ、前に政府に提案して却下されたことがある。インフレを起こすと高齢者の支持率が落ちるという理由だった。

「物価を上げるのは前のシミュレーションで試したよね」
「試したよ。インフレを起こして国債を償還しようとしたときだなー」
「あの時は、高齢者の支持率が下がるからって、政府に却下されたよね」
「まぁね。でも、論点が別だから今回はオッケーになるかもしれないよ」
「確かに……おじいちゃんだから覚えてないかもね」

※詳しくは『第3章 国債を償還しろ!』をご覧下さい。

 却下される可能性は高いものの、すんなりと承認されるかもしれない。

 前回はインフレを起こして国債の実質的な価値を引下げることを目的としていた。国債の実質的な残高を下げることができたから、シミュレーション結果は悪くなかった。だが、年金生活者から苦情が来て支持率が下がると言われて却下された。

 前回のシミュレーションでは年間のインフレ率を10%にしていた。急激な価格高騰が起これば賃金上昇が追い付くまで実質賃金はマイナスになり、一時的に労働者の生活は苦しくなる。年金生活者である高齢者の打撃はもっと大きい。日本国民のほとんどが政権を支持しないだろう。

 でも、インフレ率をもう少し緩やかにすれば国民を誤魔化せるかもしれない。
 例えばインフレ率を5%にして年金給付額も物価上昇に合わせて上げていけば、労働者や高齢者の不安も解消されるような気がする。

 それに、今回のインフレの目的は国債の償還ではなくGDPを増加させることだ。首相を含め政権幹部は高齢者だから、前回の政策提案を却下したことを忘れている可能性はある。

 僕は試してみる価値があると判断した。

 インフレでGDPを増加させる案を新居室長に提案したら、「いいよ。やってみようよ」と新居室長からは前向きな返答があった。

 僕はスーパーコンピューター垓に、10年間年率5%のインフレ率と賃上げを企業に要請する税制改正の可決をインプットした。
 日本の物価・給与水準は他の先進諸国と比べて低い。10年間年率5%のインフレを起こし、合計50%の物価・給与上昇をさせれば先進諸国と同じくらいの水準になるのではないかと思ったからだ。

 垓のシミュレーションは20分で終了した。悪くなさそうだ。

 僕たちは垓の作成したシミュレーション結果のダイジェスト映像を確認することにした。

<その2に続く>

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