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第8章 介護ビジネスを再編しろ!

介護ロボットを使ったらどうかな?(その2)

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※この物語はフィクションです。登場する人物・団体は架空であり、実在のものとは関係ありません。

【図表51:要介護者数と介護職員数、介護給付費の関係<再掲>】



「介護ロボットを活用できない場合、要介護者の数が増えれば介護職員の数は増えます。介護施設等には人員配置基準がありますから、その基準に従って介護職員数は左側の点線のように増えるはずです」

※例えば、介護施設の人員配置基準は「3:1」の比率なので、入居者3人に対し、最低1人の常勤の介護職員(または看護師)を配置します。

 新居室長は「そうだね」と言っているから、僕は説明を続ける。

「介護ロボットを使えば、介護職員数を大幅に増やさなくても介護ができます。そうすると、人員配置基準は「3:1」から変更してもいいはずです。例えば「5:1」とか「10:1」にできれば介護職員不足の問題は軽減されます」
「そうね」

「介護報酬は介護サービスのコストを賄うための政府支出です。仮に、要介護者が増えても介護職員数が増えなければ、介護事業者のコストは増えません」
「つまり、国や自治体から支給する介護給付費の総額は大きく変わらない。そういうこと?」
「そうです。総額が変わらなかったら、介護給付費の単価が下がります」

「そうすると……介護ロボットを導入すれば、介護職員不足の解消と介護給付費の削減に役立つかもしれないわね」
「僕はそうだと考えています。もちろん、最終的に社会保障費の削減が目的ですから、介護ロボットがリーズナブルな価格だったら、という前提ですけど」
「へー、面白そうね」

 新居室長は考えているが、介護ロボットの導入にネガティブな印象はなさそうだ。

「これでシミュレーションしてみましょうか?」と僕が尋ねたら、「いいんじゃない」と新居室長は言った。

 僕はスーパーコンピューター垓に、政府が介護ロボットを介護事業者に低額貸与する法案可決をインプットした。
 無償貸与にしてもいいのだが、少しでも金銭負担を発生させた方が介護ロボットを大事に使うだろうと考えたからだ。介護ロボットは高価なので、介護事業者に乱暴に扱われて壊されると困る。

 垓のシミュレーションは20分で終了した。
 時間はそれなりだから、結果は悪くない気がする。

 僕たちは垓の作成したシミュレーション結果のダイジェスト映像を確認することにした。

 ***

 垓のダイジェスト映像は介護施設での日常を映していた。

 この介護施設は介護ロボットを最大限に活用しており、介護職員の負担が軽減されているとダイジェスト映像は説明している。
 画面には介護職員が被介護者を入浴させる様子が映し出されていた。

 介護職員は介護ロボットを操作して入居者の部屋に入ってきた。
 この介護ロボットはかなり大きい。設置されているベッドと同じくらいの大きさだ。透明ではないものの、映画マトリックスで主人公たちが繋がれていた容器を連想させる。近未来的な形に僕はワクワクしている。

<その3に続く>
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