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第8章 介護ビジネスを再編しろ!
オジハラ対策を考えてほしい(その1)
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※この物語はフィクションです。登場する人物・団体は架空であり、実在のものとは関係ありません。
僕の名前は志賀 隆太郎。28歳独身だ。日本の国家戦略特別室で課長補佐をしている。僕の仕事は国で発生した問題を解決すること。
国家戦略特別室のメンバーは上司の新居(にい)幸子室長と同僚の茜(あかね)幸子、そして僕を合わせて3人。今日も厄介事が国家戦略特別室にやってくる。
僕が国家戦略特別室に入ろうとしたら、中から声が聞こえる。
「臭いんだよー!」茜の声だ。
新居室長がくさやでも部屋に持ち込んだのだろうか。部屋に入るのが嫌だな……
僕は勇気を出して扉を開く。
「あっ、志賀くん。おはよー!」と新居室長の声が聞こえる。
僕は警戒して匂いを嗅ぐが、特に匂いはしない。異臭騒ぎではないと思う。
「臭いって聞こえてみましたけど、何を話してたんですか?」と僕は新居室長に尋ねる。
「あー、さっき首相から依頼があったんだけど。その件だね」
「どういう件ですか?」
「2件あってね。1件はオジハラ対策を検討してほしいという内容」
「オジハラ? 何ですか、それ?」
「おじさんを差別するハラスメントだね」
「あー、おじさんハラスメントですか。具体的に何が問題なんですか?」
新居室長は考えを整理している。きっと、くだらない依頼をどうすれば真面な依頼に昇華できるかを考えているのだろう。
「えぇっとね、世の中にはいろんなハラスメントがあるよね」
そういうと、新居室長はハラスメントを思い付く限り列挙した。
・パワーハラスメント(パワハラ)
・セクシャルハラスメント(セクハラ)
・マタニティハラスメント(マタハラ)
・モラルハラスメント(モラハラ)
・ロジカルハラスメント(ロジハラ)
・時短ハラスメント(ジタハラ)
・エイジハラスメント(エイハラ)
・ジェンダーハラスメント(ジェンハラ)
・リモートハラスメント(リモハラ)
・スモークハラスメント(スモハラ)
・スメルハラスメント(スメハラ)
すごい量のハラスメントだ。こんなに覚える必要があるかは分からないのだが、新居室長は語呂合わせで覚えているのかな?
「よくそんなに知ってますね」
「ハラスメント研修で散々勉強させられたからね」
新居室長が列挙したハラスメントの中には、僕が聞いたことがないものがあった。
「管理職研修ですね。ところで、時短ハラスメントってどういう意味なんですか?」
「あー、それね。働き方改革で残業しちゃダメって風習があるでしょ」
「ありますね。「残業する場合は上司の承認が必要」ってやつですね」
「そう、それ。定時までに仕事が終わらないのに、残業できないから「帰れ!」って言われる。そういうハラスメントね」
「原因は仕事の割り振りがおかしいからですかね? それとも、本人の仕事が遅いからですかね?」
「どっちもあるんじゃないかな。とにかく、かなり多いらしいよ」
※時短ハラスメントとは、残業の削減に関する具体的な方策がないまま、会社の上層部が社員に対して「残業をせずに早く帰れ」と定時退社を強要することを指します。
政府が推し進めた「働き方改革」。でも、それによってハラスメントが発生する。なかなか難しい世の中になったものだ。
僕がもう一つ分からなかったハラスメントはリモートハラスメントだ。テレワーク関連のハラスメントだと思うのだが……
「リモートハラスメントは、テレワーク特有のハラスメントですか?」
「あぁ、リモハラね。オンライン会議に自宅から参加すると部屋の中が見えることがあるじゃない?」
「ありますね。カメラに映る所は綺麗にしてますけど、映りこむことがありますね」
「例えば、オンライン会議中にアイドルのポスターが見えて「〇〇のファンなの?」って聞くとするでしょ。これは過度にプライベートに介入しているとして、ハラスメントになるのよ」
「えぇっ? それ、ダメなんですか?」
「そうよ、リモハラ。あとは「いい部屋住んでるねー」もリモハラね」
すごい世の中になったものだ。オタクの人は「〇〇のファンなの?」と聞かれたら嬉しいと思っていたのだが、ハラスメントになるらしい……
「そういえば、志賀くんはハラスメントハラスメントって知ってる? ハラハラって言うんだけど」
「ハラハラですか?」
「業務上適切な指導であるにもかかわらず、ハラスメントと騒ぎ立てる行為のことなんだ。被害者意識が強い人に注意すると、このハラスメントに発展しやすいらしいよ」
「注意できないじゃないですか。もう……大変ですね」
「そうだね。世の中、変な方向に進んでいる気がする」
僕は時々思う。日本はどこに向かおうとしているのだろうか……
<その2に続く>
僕の名前は志賀 隆太郎。28歳独身だ。日本の国家戦略特別室で課長補佐をしている。僕の仕事は国で発生した問題を解決すること。
国家戦略特別室のメンバーは上司の新居(にい)幸子室長と同僚の茜(あかね)幸子、そして僕を合わせて3人。今日も厄介事が国家戦略特別室にやってくる。
僕が国家戦略特別室に入ろうとしたら、中から声が聞こえる。
「臭いんだよー!」茜の声だ。
新居室長がくさやでも部屋に持ち込んだのだろうか。部屋に入るのが嫌だな……
僕は勇気を出して扉を開く。
「あっ、志賀くん。おはよー!」と新居室長の声が聞こえる。
僕は警戒して匂いを嗅ぐが、特に匂いはしない。異臭騒ぎではないと思う。
「臭いって聞こえてみましたけど、何を話してたんですか?」と僕は新居室長に尋ねる。
「あー、さっき首相から依頼があったんだけど。その件だね」
「どういう件ですか?」
「2件あってね。1件はオジハラ対策を検討してほしいという内容」
「オジハラ? 何ですか、それ?」
「おじさんを差別するハラスメントだね」
「あー、おじさんハラスメントですか。具体的に何が問題なんですか?」
新居室長は考えを整理している。きっと、くだらない依頼をどうすれば真面な依頼に昇華できるかを考えているのだろう。
「えぇっとね、世の中にはいろんなハラスメントがあるよね」
そういうと、新居室長はハラスメントを思い付く限り列挙した。
・パワーハラスメント(パワハラ)
・セクシャルハラスメント(セクハラ)
・マタニティハラスメント(マタハラ)
・モラルハラスメント(モラハラ)
・ロジカルハラスメント(ロジハラ)
・時短ハラスメント(ジタハラ)
・エイジハラスメント(エイハラ)
・ジェンダーハラスメント(ジェンハラ)
・リモートハラスメント(リモハラ)
・スモークハラスメント(スモハラ)
・スメルハラスメント(スメハラ)
すごい量のハラスメントだ。こんなに覚える必要があるかは分からないのだが、新居室長は語呂合わせで覚えているのかな?
「よくそんなに知ってますね」
「ハラスメント研修で散々勉強させられたからね」
新居室長が列挙したハラスメントの中には、僕が聞いたことがないものがあった。
「管理職研修ですね。ところで、時短ハラスメントってどういう意味なんですか?」
「あー、それね。働き方改革で残業しちゃダメって風習があるでしょ」
「ありますね。「残業する場合は上司の承認が必要」ってやつですね」
「そう、それ。定時までに仕事が終わらないのに、残業できないから「帰れ!」って言われる。そういうハラスメントね」
「原因は仕事の割り振りがおかしいからですかね? それとも、本人の仕事が遅いからですかね?」
「どっちもあるんじゃないかな。とにかく、かなり多いらしいよ」
※時短ハラスメントとは、残業の削減に関する具体的な方策がないまま、会社の上層部が社員に対して「残業をせずに早く帰れ」と定時退社を強要することを指します。
政府が推し進めた「働き方改革」。でも、それによってハラスメントが発生する。なかなか難しい世の中になったものだ。
僕がもう一つ分からなかったハラスメントはリモートハラスメントだ。テレワーク関連のハラスメントだと思うのだが……
「リモートハラスメントは、テレワーク特有のハラスメントですか?」
「あぁ、リモハラね。オンライン会議に自宅から参加すると部屋の中が見えることがあるじゃない?」
「ありますね。カメラに映る所は綺麗にしてますけど、映りこむことがありますね」
「例えば、オンライン会議中にアイドルのポスターが見えて「〇〇のファンなの?」って聞くとするでしょ。これは過度にプライベートに介入しているとして、ハラスメントになるのよ」
「えぇっ? それ、ダメなんですか?」
「そうよ、リモハラ。あとは「いい部屋住んでるねー」もリモハラね」
すごい世の中になったものだ。オタクの人は「〇〇のファンなの?」と聞かれたら嬉しいと思っていたのだが、ハラスメントになるらしい……
「そういえば、志賀くんはハラスメントハラスメントって知ってる? ハラハラって言うんだけど」
「ハラハラですか?」
「業務上適切な指導であるにもかかわらず、ハラスメントと騒ぎ立てる行為のことなんだ。被害者意識が強い人に注意すると、このハラスメントに発展しやすいらしいよ」
「注意できないじゃないですか。もう……大変ですね」
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僕は時々思う。日本はどこに向かおうとしているのだろうか……
<その2に続く>
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