39 / 131
第5章 ゼロゼロ融資の崩壊を防げ!
住宅ローンは固定派? 変動派?(その2)
しおりを挟む
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体は架空であり、実在のものとは関係ありません。
僕は変動金利の方がいいとは思うのだが、固定金利派の言い分も分かる。将来のことが心配だから、固定金利の方が安心だと考える人がいるからだ。だから、固定金利の住宅ローンが存在する。
ちなみに、住宅金融支援機構の2023年4月の調査では、住宅ローン利用者の72.3%が変動型、18.3%が固定期間選択型、9.3%が全期間固定型を選択している。つまり、純粋な固定金利の住宅ローンを選択している人は、全体の10%にも満たない。
【図表29-2:住宅ローンの金利タイプ】
※出所:住宅金融支援機構
住宅ローンの固定金利は長期金利に影響を受ける。ここ最近は日銀の金融政策の修正によって長期金利が上昇しているから、さらに変動型の比率が増えているはずだ。
変動金利派2に対して、固定金利派1に別れた国家戦略特別室。
新居室長は、茜に続き僕も変動金利派だと分かったので、肩身が狭いようだ。
「だってさー、将来のことは誰にも分からないでしょ。私は変動金利で住宅ローンを借りてから本当に払い続けられるかが不安なんだよ」と新居室長は小声で言う。
気持ちは分からなくはない。将来のことは誰にも分からないからだ。
ただ、将来の安心料として固定金利を選択してコストを払っていることも事実だ。僕は新居室長に説明することにした。
「まあ、気持ちは分からなくはないですね」
「そうでしょ。不安でしょ」
「でも、冷静に考えて下さい。固定金利は変動(上下)しやすいけど、変動金利は変動(上下)しにくいですよね」
「そうね」
「それに、もし上がったとしても2%まで変動金利が上がるとは思えません」
「でもさ、アメリカの住宅ローン金利みたいに急激に上がったらどうするの? 短期金利が5%超えていて、住宅ローンの固定金利も7%を超えてるんだよ」
米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)によれば、2023年10月時点の米国の住宅ローン市場において30年固定の住宅ローン金利(週平均)は7.49%である。日本以外の国(例えば米国や欧州)の金利変動は大きいから固定金利の需要は高い。
「ここは日本ですから、そこまでは上がらないと思いますよ。それに、そんなに金利が上昇したら国債の利払いができませんから」
「まあ、そうね」
「ちなみに、住宅ローンを固定金利で借りたら、変動金利で借りる場合よりもどれくらい差があると思います?」
「計算してないから分からない」
「結構、違ってくるはずですよ」
「そうね。違うのは分かるけど、安心料として割り切るしかないかな……」
「とりあず、固定金利は2.5%として、変動金利は上がったり下がったりするから平均0.5%とします」
元本5,000万円、30年間の年1回の元利均等返済(毎回、元金と利息の合計額を定額支払う返済方法)とした場合、金利2.5%と0.5%の場合の年間返済額(元本返済額、利息支払額)を表示したものが図表29-3と図表30だ。
※ちなみに、元金を均等に返済していく返済方法を「元金均等返済」といいます。
【図表29-3:固定金利2.5%の元利金返済額<単位:千円>】
※年一回返済として計算しています。
【図表30:変動金利0.5%の元利金返済額<単位:千円>】
※年一回返済として計算しています。
元利均等返済は毎回同じ金額を支払っていくため、返済時の元本に応じて利息返済額を計算し、支払額から利息返済額を差し引いた金額を元本返済額とする。
元本の返済によって残高が減少すると支払利息の金額も減少していく。だから、年数が経過するにしたがって、利息返済額が減少し、元本返済額が増加していく。
金利2.5%の場合は返済額の合計が7,166万円、うち利息返済額が2,166万円だ。
年間返済額は239万円、月額約20万円の返済となる。住宅ローンの負担額としてはかなり重い金額になる。
一方、金利0.5%の場合は返済額の合計が5,396万円、うち利息返済額が396万円だ。
年間返済額は180万円、月額約15万円の返済となる。住宅ローンの負担額として小さくはないが、金利2.5%の場合に比べて月額返済額が5万円少なくてすむ。
30年間の返済額は金利0.5%よりも金利2.5%の場合の方が1,770万円多くなる。
言い換えると、金利を30年間固定する安心料として1,770万円払っていることになる。かなり大きな金額だ。
<その3に続く>
僕は変動金利の方がいいとは思うのだが、固定金利派の言い分も分かる。将来のことが心配だから、固定金利の方が安心だと考える人がいるからだ。だから、固定金利の住宅ローンが存在する。
ちなみに、住宅金融支援機構の2023年4月の調査では、住宅ローン利用者の72.3%が変動型、18.3%が固定期間選択型、9.3%が全期間固定型を選択している。つまり、純粋な固定金利の住宅ローンを選択している人は、全体の10%にも満たない。
【図表29-2:住宅ローンの金利タイプ】
※出所:住宅金融支援機構
住宅ローンの固定金利は長期金利に影響を受ける。ここ最近は日銀の金融政策の修正によって長期金利が上昇しているから、さらに変動型の比率が増えているはずだ。
変動金利派2に対して、固定金利派1に別れた国家戦略特別室。
新居室長は、茜に続き僕も変動金利派だと分かったので、肩身が狭いようだ。
「だってさー、将来のことは誰にも分からないでしょ。私は変動金利で住宅ローンを借りてから本当に払い続けられるかが不安なんだよ」と新居室長は小声で言う。
気持ちは分からなくはない。将来のことは誰にも分からないからだ。
ただ、将来の安心料として固定金利を選択してコストを払っていることも事実だ。僕は新居室長に説明することにした。
「まあ、気持ちは分からなくはないですね」
「そうでしょ。不安でしょ」
「でも、冷静に考えて下さい。固定金利は変動(上下)しやすいけど、変動金利は変動(上下)しにくいですよね」
「そうね」
「それに、もし上がったとしても2%まで変動金利が上がるとは思えません」
「でもさ、アメリカの住宅ローン金利みたいに急激に上がったらどうするの? 短期金利が5%超えていて、住宅ローンの固定金利も7%を超えてるんだよ」
米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)によれば、2023年10月時点の米国の住宅ローン市場において30年固定の住宅ローン金利(週平均)は7.49%である。日本以外の国(例えば米国や欧州)の金利変動は大きいから固定金利の需要は高い。
「ここは日本ですから、そこまでは上がらないと思いますよ。それに、そんなに金利が上昇したら国債の利払いができませんから」
「まあ、そうね」
「ちなみに、住宅ローンを固定金利で借りたら、変動金利で借りる場合よりもどれくらい差があると思います?」
「計算してないから分からない」
「結構、違ってくるはずですよ」
「そうね。違うのは分かるけど、安心料として割り切るしかないかな……」
「とりあず、固定金利は2.5%として、変動金利は上がったり下がったりするから平均0.5%とします」
元本5,000万円、30年間の年1回の元利均等返済(毎回、元金と利息の合計額を定額支払う返済方法)とした場合、金利2.5%と0.5%の場合の年間返済額(元本返済額、利息支払額)を表示したものが図表29-3と図表30だ。
※ちなみに、元金を均等に返済していく返済方法を「元金均等返済」といいます。
【図表29-3:固定金利2.5%の元利金返済額<単位:千円>】
※年一回返済として計算しています。
【図表30:変動金利0.5%の元利金返済額<単位:千円>】
※年一回返済として計算しています。
元利均等返済は毎回同じ金額を支払っていくため、返済時の元本に応じて利息返済額を計算し、支払額から利息返済額を差し引いた金額を元本返済額とする。
元本の返済によって残高が減少すると支払利息の金額も減少していく。だから、年数が経過するにしたがって、利息返済額が減少し、元本返済額が増加していく。
金利2.5%の場合は返済額の合計が7,166万円、うち利息返済額が2,166万円だ。
年間返済額は239万円、月額約20万円の返済となる。住宅ローンの負担額としてはかなり重い金額になる。
一方、金利0.5%の場合は返済額の合計が5,396万円、うち利息返済額が396万円だ。
年間返済額は180万円、月額約15万円の返済となる。住宅ローンの負担額として小さくはないが、金利2.5%の場合に比べて月額返済額が5万円少なくてすむ。
30年間の返済額は金利0.5%よりも金利2.5%の場合の方が1,770万円多くなる。
言い換えると、金利を30年間固定する安心料として1,770万円払っていることになる。かなり大きな金額だ。
<その3に続く>
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説



サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる