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第3章 国債を償還しろ!

所得税と法人税を増税しよう!(その1)

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※この物語はフィクションです。登場する人物・団体は架空であり、実在のものとは関係ありません。

 消費増税のシミュレーションに失敗した僕たち。他の政策を考えないといけない。

「財源を確保しないといけない、これは間違っていないと思うよ」
 落ち込んでいる僕に、新居室長は優しく言った。

「私もそう思う。他の財源を試してみたらいいんじゃない?」と茜が続いた。

 支出面で19兆円確保しようとすると、社会保障費36.9兆円を半減させる、地方交付金16.4兆円を全廃するくらいの荒療治が必要となる。これは現実的ではない。

 消費税がダメなら、所得税か法人税ということになる。金額の小さな税目を増やしても19兆円を確保することはできない。
 2023年の当初予算では所得税が21.1兆円、法人税が14.6兆円である。所得税を約2倍、法人税を2.3倍にしないといけない。こちらも大増税になるだろう。
 単独では無理だろうから、所得税率と法人税率を50%ずつ引き上げる、そういう対応になるはずだ。

 僕の考えがまとまらないのを見ていた茜が発言した。

「消費増税は国民に分かり易いから、反感を買いやすいんだよ。増税するとしても、分かり難い税金、文句が出にくい税金を上げるべきだと思うよ」
「分かり難い……っていうと?」
「例えば、日本のサラリーマンはいくら控除されてるか知らないでしょ?」
「そうだね……ステルス増税ってこと?」
「そうよ。日本は社会保険料と税金の徴収に素晴らしいシステムを有している」
「源泉徴収だよね?」
「納税者本人が社会保険料や税金を払わなくても、給与を払う時に会社が代わりに徴収して払ってくれる。そして、給与所得者は何にどれだけ引かれているか知らない……」
「また、グレーなところを突いてくるなー」

「この前、首相が4万円還付するって発言して叩かれたでしょ。あれは、給与所得者はいくら税金を払ってるか知らないから、有難味がないんだよ」
「まあね。それで、何をどれくらい上げるの?」
「その前に、これを見て!」

 茜は2人の給与明細を比較した表をスクリーンに表示した。

【図表17-1:2人の給与月額】



※上記は東京都在住の40歳以上の未婚男性として計算しています。住民税は基礎控除のみとして年額を計算して月額に補正しています。


「月収30万円の人と月収100万円の人か……いいなー100万円も貰えて」
「それはいいから。給与明細をちゃんと見たことがない人も多いと思うけど、サラリーマンの所得税って実は大した金額を払ってない」
「どういう意味?」
「社会保険料(健康保険料と年金)は本人と企業が折半で払っているのもあるけど、月収30万円の人の場合は社会保険料だけで30%も納めてる。それに対して、所得税はたった2%。小さいでしょ」
「まあ、日本は累進課税だから月収100万円の人の所得税は給与の10%超えてる。逆に年金は下がってる」
「ああ、厚生年金の上限は月額65万円だからそれ以上高くならない。逆に言えば、そこを増やせば徴収額は増えるかも」

「本人負担と企業負担を合わせると、月収30万円の人は月12万円も払ってて、月収100万円の人は月44万円も払ってる。でも、誰も気にしてないよね?」
「だから、社会保険料率や所得税率を上げても、誰も気付かない……」
「そういうこと!」

「あと、会社は税率を上げても払うしかないから、個人ほど文句は出ない。法人税率もついでに上げましょう」
「あっそう……」

 僕は他に案がないので、茜の提案に従うことにする。

<その2に続く>

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