こちら国家戦略特別室

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第3章 国債を償還しろ!

消費税を増税しよう!(その1)

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※この物語はフィクションです。登場する人物・団体は架空であり、実在のものとは関係ありません。

 さて、国債の償還方法を提案することが今回の国家戦略特別室の任務だ。
 茜は解決策を提案しそうになかったから、僕は新居室長に方針を確認することにした。

「国債を償還する方法を考えるとしても、その前に収支を均衡させる必要がありますよね?」
「もちろん。財政を均衡させるためには歳出を減らすか、歳入を増やすか……」
「2023年度の当初予算では国債の発行(35.6兆円)と償還(16.8兆円)の差は約19兆円です。実質的に19兆円の赤字国債の発行が予定されているわけです」
「そうね」
「歳入を19兆円増やすか、歳出を19兆円減らすか。歳出を減らすとしても19兆円は難しいですよね」
「社会保障費や防衛費は増えていくだろうから、歳出を大幅に減らすのは難しい。そうすると歳入を増やすしかないね」
「歳入を19兆円増やすために増税するとして……所得税21.1兆円、法人税14.6兆円、消費税23.4兆円ですから、まずは税額の大きい消費税から検討した方がよさそうですね」
「まぁ、そうなるよね」
「消費税の税収は23.4兆円ですから、歳入を19兆円増やすためには、消費税の税率を10%から18%に上げる……」
「18%か……高いな」

※増加分は19兆円÷23.4兆円×10%=8%として計算しています。

 僕の提案に新居室長は「増税か…」とため息をついた。

「政治家は嫌がるでしょうね」と僕は新居室長に声を掛ける。

 日本の消費税(付加価値税)率は世界的に高い水準ではない。例えば、ハンガリーは27%、スウェーデン、デンマーク、ノルウェーは25%、アイスランド、ギリシャ、フィンランドは24%だ。軽減税率は採用されているものの、欧州諸国の消費税(付加価値税)率は日本よりも遥かに高い。

「それはそうだよ……増税したら選挙で勝てないかもしれないから。むしろ、減税できないかって言ってきそうな気がする……」
「減税なんて無理ですよ。今の財政で減税できるわけないじゃないですか」
「そうだよね……」

「減税なんていう政治家は信用しちゃいけない」今まで黙っていた茜がボソッと言った。

 実質的に財政破綻している日本政府が対応可能な方法は限られている。多少無茶な方法でも一つ一つ試していくしかない、と僕は思っている。

「とりあえず、消費税を増税する前提でシミュレーションしてみませんか?」
 僕はそう新居室長に提案した。

「そう……だよね」
 新居室長は乗り気ではないものの、選択肢が少ないことは分かっているようだ。

 僕はスーパーコンピューター垓に、消費税率を20%に引き上げる法案成立をインプットした。消費税率を上げれば消費が落ち込む可能性がある。18%だと財源が不足すると思ったから20%とした。

 垓のシミュレーションは10分で終了した。
 それなりに時間が掛かったから、良い結果が出たのかもしれない。

「期待できるかもしれませんね」と僕が言ったら、新居室長は渋い顔をしている。もし成功だったとしても、説明に行くのが嫌なのだろう。

 僕たちは垓の作成したシミュレーション結果のダイジェスト映像を確認することにした。


<その2に続く>
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