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第3章 国債を償還しろ!

国債を償還する方法を考えてほしい(その1)

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※この物語はフィクションです。登場する人物・団体は架空であり、実在のものとは関係ありません。

 僕の名前は志賀 隆太郎(しが りゅうたろう)。28歳独身だ。日本の国家戦略特別室で課長補佐をしている。僕の仕事は国で発生した問題を解決すること。
 国家戦略特別室のメンバーは上司の新居幸子室長と同僚の茜幸子、そして僕を合わせて3人。今日も厄介事が国家戦略特別室にやってくる。

 僕が国家戦略特別室のドアを開けようとしたら、茜の大声が聞こえてきた。

「だーかーらー、そんなの無理に決まってるじゃないですか。返せないんだから、デフォルト(債務不履行)させた方がいいんですよ!」

「そんなこと言わないでさー。何か方法があるはずだよ。頑張ってみようよー」
「無理だって!」
「ねえ、やろーよー」

 僕が出勤したら新居室長と茜が何やら口論していた。新居室長が何かをしたいらしいが、茜はやる気がない。よほど茜の興味を惹かない案件のようだ。

「どうしたんですか?」と僕は二人に聞いた。

「ああ、志賀君。いいところにきた」と新居室長は僕の方を見た。何かを期待している。

「デフォルトとか聞こえてきましたけど?」
「ああ、政府から国債を償還する方法を考えてほしいと依頼があったんだ」
「国債を償還するんですか? 冗談ですよね?」
「本気で考えてる……らしい」
「マジっすか……」
「まぁ、無理だと思うよね。茜なんて端から考えようともしないの」
「ああ、だから、国債は償還できないからデフォルトさせろ、と茜は言ってたんですね」
「まぁね。難しいのは分かってるよ。毎年20兆円ずつ増えていってるからね」

 茜が言いたいことは理解できる。国債残高を減らしていくなんて、今の日本には夢のまた夢のような話だ。
 新居室長は上からの命令で検討しないといけないのだろうけど……まぁ無理だろう。


***


 話を進める前に、日本の財政と国債残高の推移について説明しておこう。
 まず、2023年度の一般会計歳入・歳出<当初予算>を示したものが図表12だ。

【図表12:一般会計歳入・歳出<2023年当初予算>】


出所:財務省

 2023年度の一般会計歳入(当初予算)は国債発行を除けば78兆円、それに対して一般歳出は114.38兆円なので35.6兆円不足する。国債費(国債の償還および利払い)を除いても10.4兆円不足している。
 日本政府はこの財源の不足を解消するために国債を35.6兆円発行している。

 つまり、日本の国家財政は自転車操業を続けていて、いつ破綻してもおかしくない。というより、既に破綻しているといえる。
 これは新聞、テレビなどの報道で周知の事実だと思う。


 一般家庭の家計に置き換えると、月30万円の収入の世帯が、毎月13万円借金して暮らしているのと同じだ。
 毎月43万円の支出のうち、借金の返済が6万円、利息支払いが3万円だから、毎月7万円(13万円-6万円)ずつ借金が増えていく。
 支出を賄える収入がないから、借金は返せる目途がたたない。借金が多すぎて銀行からこれ以上借金できない。だから親戚(日本銀行)からお金を借りて生活している。
 そして、親戚(日銀)から借りた借金を自分では返済できそうにないから、子供や孫に返してもらおうと思っている。これが今の日本政府だ。


 次に、一般歳出(当初予算)の内訳について、2000年度~2023年度の推移を示したものが図表13だ。


【図表13:一般歳出(当初予算)の推移】

  
出所:財務省

 まず、歳出の合計額は2000年の約90兆円から2007年の約80兆円まで下がったものの、2008年のリーマン・ショック後に支出が膨らんで約100兆まで増加した。2000年代は財政健全化のために努力していた日本政府だが、リーマン・ショック後はカネをばら撒くようになった。
 さらに、2020年に発生したパンデミック関連費用(ワクチン費用など)、ウクライナ戦争によるインフレ対策、防衛費の増額により年間の歳出は110兆円を突破した。
 今後も社会保障費の増加、防衛費の増加などが予定されているから、歳出が減ることは当面の間ない。

 内訳では、社会保障費が2000年の約20兆円から2023年度には約37兆円まで増加しており、高齢化の日本の実態を表している。逆に、公共事業費は2000年の10.2兆円から2023年度の6.1兆円に減っている。増加する社会保障費の国民負担を少しでも減らすため、公共事業を減らしているのだろう。
 国債費(利払費、償還費)については、大きな変化はない。国債については毎年10~15兆円を償還しているものの、財政赤字を賄うために新規国債を発行をしているから、平常時で毎年20兆円くらい国債残高が増加している。
 国債残高が増えているにも関わらず利払費が増加していないのだが、この理由については後で触れる。

<その2に続く>
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