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第1章 物流・運送業界の2024年問題を解決しろ!

茜の提案(その1)

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※この物語はフィクションです。登場する人物・団体は架空であり、実在のものとは関係ありません。

「物流・運送業界の2024年問題」を解決するための会議がスタートした。まずは新居室長が発言する。

「今回もベストな解決策を提案できるように、全力を尽くしましょう!」
「「はい!」」
「それでは、今日は誰からいきますか?」

 新居室長はチラッと僕の方を見た。茜の政策提案は極端なものが多いから、僕から発言してほしいようだ。
 僕が手を挙げようとしたら、隣から声が聞こえた。

「はい! 私から!」
 茜が手を上げた。

 茜は会議室の空気を読まずに解決案を説明し始めた。茜の「物流・運送業界の2024年問題」を解決するための政策提案はこんな内容だった。


***


 茜の政策提案を一言でいうと、外国人の就労ビザを緩和して海外からドライバーを呼び込む作戦だ。これは既に政府でも検討されている。

 日本の就労ビザの取得は世界的に見ても厳しい。日本には10以上の就労ビザがあるのだが、一般の労働者向けのビザである「特定技能ビザ」を取得するためには日本語のテストに受からなければいけない(特定技能1号の場合)。

 でも考えてみてほしい。
 長距離トラックドライバーに高度な語学力が必要だろうか?

 接客業で日本語が必要なのは分かる。でも、長距離トラックドライバーは運転中に誰かと頻繁に話すことはないし、荷物の積み下ろしの際に必要なだけだ。極論すれば、長距離トラックドライバーに必要な日本語は片言レベルでも十分だ。
 さらに、日本語の話せないドライバーはトラックの運転だけを担当し、荷物の積み下ろしの時は日本人が対応すれば何の問題もない。日本語を話す必要さえない。

 茜の政策提案は外国人の語学力を考慮した現実的なものだった。

 外国人ドライバーのビザ取得の要件を緩和して長距離トラックドライバーを海外から呼んでくる。
 外国人ドライバーは高速道路だけを走行し、一般道を走行しない。図表1をイメージしてもらえばいい。
 出発地と目的地周辺では日本人ドライバーが配送するから、外国人ドライバーは日本語を話す必要がない。さらに、2024年問題で不足する労働力不足を補うだけだから、日本人ドライバーの雇用は保証される。


【図表1:茜の提案するドライバーの担当範囲】



 茜がこの案を提案したのは、業界が抱えている問題に対応するためだ。

 例えば、長距離ドライバーが東京・大阪間を運転する場合、移動距離は約500キロ、時間にすると6~7時間掛かる。
 ドライバーは一日で東京・大阪間を往復できないから、荷物を届けた後に睡眠をとる必要がある。トラックを停める場所が普通の宿泊施設にはないし、ホテルに泊まるとかなりの出費になるから、車内で寝ることもある。
 長距離ドライバーは一度家を出たら、その日のうちに家に帰れないから家族には会えないし、車内泊するから疲労が溜まる。

 労働環境が良くないから若い人は長距離ドライバーになりたがらない。若い人材が入ってこないから長距離ドライバーは高齢化し、将来の労働力不足を加速していく。そんな悪循環が生じている。
 でも、逆に言えば、労働環境が改善されてその日のうちに家に帰れるのであれば、若い人の中にもドライバーになる人が増えてくるはずだ。

 ラストワンマイルの配送(最終拠点からエンドユーザーへの配送)も労働環境は良いとは言えない。EC取引の増加で配送する数は多いし、何度も再配達しないといけないから、仕事がなかなか終わらない。

 でも、長距離ドライバーよりも若い人が多い。その理由は何か?

 大型免許取得のハードル以外に、労働環境による部分が大きい、と茜は考えているようだ。
 長距離ドライバーも普通の人だ。家族に毎日会いたいし、恋人に毎日会いたいと思うだろう。ごく自然なことだ。

 茜の案は長距離輸送をバケツリレー方式にして、最初と最後だけ日本人ドライバーが担当し、中間は外国人ドライバーが担当する。

――想像以上にまともだ……

 僕はいい案だと思った。

 新居室長は茜のことが好きではない。幸子が被っているのもあるが、性格による部分が大きいだろう。
 でも、そんな新居室長も「いいんじゃない」と言っている。反応は上々だ。

 だから、僕たちは茜の政策提案に問題がないかをスーパーコンピューター垓(がい)で検証することになった。

<その2に続く>
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