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私の困った体質(アリスの話)
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「それにしても、今日は犬が5匹、猫が4匹と鳥が9羽・・・・・結構集まっているわね」
私はアリス。私は生まれつき動物が寄ってくる体質。だから、朝起きたら私のベッドに動物たちが入ってきて寝ている。これが、他の人とは違う私の日常。
原因は分からないが、私は一種の魅了魔法なのだと考えている。ただ、私の魅了は一般的なイメージとはちょっと違う。私の魅了の対象は動物だけ。残念ながら人間には全く効果がない。
人間を魅了できたら悪女のような振舞いもできるのに・・・と考えなくもない。
だけど、毎朝起きると隣に知らない男の人が寝ている状況を想像すると、人間に効果がないことを喜ぶべきなのだろう。
私が道を歩いていると、次々に動物たちがやってくる。その動物たちは私の後をついてくるから、私はいつもたくさんの動物たちを引き連れて歩いている。
だから、街の人は私を『園長さん』と呼ぶ。
好き好んで毎日動物を引き連れているわけではないけど、動物に好かれること自体は嫌じゃない。むしろ、嬉しいことだ。
でも、正直なところ、毎日はちょっと・・・と思っている。
私だって普通の人間だ。毎日機嫌がいいわけじゃない。怒っている時もあれば、落ち込んでいる時もある。
落ち込んでいるときに小鳥がやってくれば、素敵な歌声で私の心を癒してくれる。これはこの体質のメリットといえる。
でも、疲れているときに大型獣、たとえばライオンがやってくるのを想像してほしい。私を食べないとは思うけど、気が気じゃない。余計に疲れる。これはこの体質のデメリット。
私はもうすぐ15歳。生まれてから約15年間こんな感じ。もうこの体質にも慣れたけどね。
ちなみに、夜になると私の魅了の効果が弱まって、自然と動物たちはねぐらに帰っていく。そして、また朝になると私のところにやってくる。
私は今、食料の買い出しのために街の商店に行く途中。できるだけ動物に会わないルートを通りながら目的地(商店)を目指すつもりだ。私を見つけた動物がついてくるから。
と思って動物の少なそうなルートを通っていたのだけど、いつもより多く引き寄せてしまったようだ。
しかたないから、大名行列のまま商店まで歩いていく。
「なんだ、あれは?」
「お母さん、あれなーにー?」
「園長さんよ! 今日も猫さんがいっぱいだねー」
―― また誰かが私の噂をしている・・・
でも、いつもの事だから私は気にしない。
私は周囲の視線と噂話を気にせずに商店に向かっていく。
私が歩いていくと、いかにもお金持ちそうな身なりの青年が声を掛けてきた。
「ちょっと、君。これは何事だ?」
従者を10人ほど引き連れているから、どこかの貴族の息子なのだろう。
私に声を掛けてくる金持ちは、「世間を騒がせるとは何事だ?」と説教してくるタイプ、動物好きだから触らせてほしいタイプに分かれる。
私は青年が後者であることを期待しながら、質問に答えた。
「私は動物を引き寄せる体質なのです。お騒がせしてすみません」
私はそういって青年に一礼した。悪くない対応だと思う。
「何それ? おもしろいね」
「おもしろいですか?」
「うん、おもしろい。僕も動物と一緒に歩いてもいいかな?」と青年は私に尋ねた。
この青年は動物が好きなのだろうか? 『動物好きに悪い人はいない』というし・・・
私が「その商店までいくだけですが、それでもよろしければ」と青年に言った瞬間、「ダメです」と従者の一人が注意した。
「えぇ? ちょっとだけ。ちょっとならいいじゃない?」
「ダメです、王子。遊んでいる暇はありません。我々は急いでビアステッド村まで行かないといけません」
―― え? 王子?
この人、王子なの?
私のイメージする王族は意地が悪い、庶民をゴミのように扱う人たちだ。私が普通に口を聞いたことに気を悪くしてなければいいのだけれど・・・
「5分だけ。5分だけならいいじゃない?」と王子はダダをこねている。まるで朝が苦手な子供を見ているようだ。
―― 私のイメージする王子と違う・・・
端正な顔立ち、ブロンドの髪、スラっとしていて、背も高い。部下に対しても偉そうな言い方をしないから、人当たりは良さそうだ。
私が王子を不思議そうに見ていたら、王子は私に話しかけた。
「ねえ。君は動物たちに芸とかさせられないの?」
「少しならできます。お見せしましょうか?」
「お願い! やってみて!」
「かしこまりました」
王子の命令だから従うしかない。それに、この王子だったら問題にならないような気がする。
「動物たち、我の命に従え・・・・おすわり!」
私がそういうと、数十の動物たちは一斉に地面に座った。王子や従者の連れている馬も座っている。
「王子、大変です。我々が乗っていた馬もお座りをしています!」と従者の一人が王子に言った。
「そう・・・みたいだね。これだけの数の動物を操れるのはすごいな。君、名前は?」
王子は笑いながら言った。
「アリスです。アリス・フィッシャーです」
「僕はカール・ハース。よろしく!」
そういうと王子は私に握手を求めた。
私は王子と握手をしていいのか躊躇(ためら)いながらも、王子の手を取った。
一向に急ぐ気配のない王子にしびれを切らした従者。
「王子、馬が座ったまま動こうとしません。ビアステッド村がワイバーンに襲われていて、今にも壊滅しそうなのに・・・」
「アラン、心配する必要はないよ」
王子は自信に満ちた顔をして言った。
「村に向かうことができないのに、どういうことですか?」
「いま僕たちの馬はアリスの命令しか聞かない」
「そうですけど・・・」
「つまり、アリスに僕たちと一緒に来てもらえばいいんじゃないかな?」
「この女性と一緒にワイバーン討伐に向かうのですか?」
「そうだよ。しかたないじゃない。ということで、アリス、君も一緒に来てくるかな?」
王子は笑顔で私に言った。
―― え? 私もワイバーン退治に行くの?
そもそも、王子が『動物に芸をさせてほしい』と言ったから、私は動物たちをお座りさせた。私に非はない。
それに、私は戦闘経験のない、買い物途中の普通の女の子。
「買い物途中だから・・・」と言えば許してくれるだろうか?
一抹の不安を抱えながらも、私はダメ元で言ってみた。
「食料の買い出し中なのです。今からはちょっと・・・」
「大丈夫だよ。僕の従者がアリスの代わりに買い物してくるから。買い物リストはある?」
笑顔で言うから、私はうっかり買い物リストを王子に渡してしまった。
買い物リストを受取った王子は、従者にそれを渡した。
「ほら、代わりに買い物して家に届けておく。だから、買い物のことは心配しなくても大丈夫だ」
「はあ・・・」
「これで僕たちと一緒に行けるね!」
王子は笑顔でそう言うと、私に手を差し出した。
「かしこまりました・・・」
しかたなく私が王子の手を取ると、王子は私を白馬の上に引き上げた。
私を乗せた馬は嬉しそうにビアステッド村に向けて走り始めた。後ろからは犬と猫が続く。
―― なんて面倒な事に巻き込まれたのかしら・・・
こうして私は、ワイバーン討伐のためにビアステッド村へ向かうことになった。
私はアリス。私は生まれつき動物が寄ってくる体質。だから、朝起きたら私のベッドに動物たちが入ってきて寝ている。これが、他の人とは違う私の日常。
原因は分からないが、私は一種の魅了魔法なのだと考えている。ただ、私の魅了は一般的なイメージとはちょっと違う。私の魅了の対象は動物だけ。残念ながら人間には全く効果がない。
人間を魅了できたら悪女のような振舞いもできるのに・・・と考えなくもない。
だけど、毎朝起きると隣に知らない男の人が寝ている状況を想像すると、人間に効果がないことを喜ぶべきなのだろう。
私が道を歩いていると、次々に動物たちがやってくる。その動物たちは私の後をついてくるから、私はいつもたくさんの動物たちを引き連れて歩いている。
だから、街の人は私を『園長さん』と呼ぶ。
好き好んで毎日動物を引き連れているわけではないけど、動物に好かれること自体は嫌じゃない。むしろ、嬉しいことだ。
でも、正直なところ、毎日はちょっと・・・と思っている。
私だって普通の人間だ。毎日機嫌がいいわけじゃない。怒っている時もあれば、落ち込んでいる時もある。
落ち込んでいるときに小鳥がやってくれば、素敵な歌声で私の心を癒してくれる。これはこの体質のメリットといえる。
でも、疲れているときに大型獣、たとえばライオンがやってくるのを想像してほしい。私を食べないとは思うけど、気が気じゃない。余計に疲れる。これはこの体質のデメリット。
私はもうすぐ15歳。生まれてから約15年間こんな感じ。もうこの体質にも慣れたけどね。
ちなみに、夜になると私の魅了の効果が弱まって、自然と動物たちはねぐらに帰っていく。そして、また朝になると私のところにやってくる。
私は今、食料の買い出しのために街の商店に行く途中。できるだけ動物に会わないルートを通りながら目的地(商店)を目指すつもりだ。私を見つけた動物がついてくるから。
と思って動物の少なそうなルートを通っていたのだけど、いつもより多く引き寄せてしまったようだ。
しかたないから、大名行列のまま商店まで歩いていく。
「なんだ、あれは?」
「お母さん、あれなーにー?」
「園長さんよ! 今日も猫さんがいっぱいだねー」
―― また誰かが私の噂をしている・・・
でも、いつもの事だから私は気にしない。
私は周囲の視線と噂話を気にせずに商店に向かっていく。
私が歩いていくと、いかにもお金持ちそうな身なりの青年が声を掛けてきた。
「ちょっと、君。これは何事だ?」
従者を10人ほど引き連れているから、どこかの貴族の息子なのだろう。
私に声を掛けてくる金持ちは、「世間を騒がせるとは何事だ?」と説教してくるタイプ、動物好きだから触らせてほしいタイプに分かれる。
私は青年が後者であることを期待しながら、質問に答えた。
「私は動物を引き寄せる体質なのです。お騒がせしてすみません」
私はそういって青年に一礼した。悪くない対応だと思う。
「何それ? おもしろいね」
「おもしろいですか?」
「うん、おもしろい。僕も動物と一緒に歩いてもいいかな?」と青年は私に尋ねた。
この青年は動物が好きなのだろうか? 『動物好きに悪い人はいない』というし・・・
私が「その商店までいくだけですが、それでもよろしければ」と青年に言った瞬間、「ダメです」と従者の一人が注意した。
「えぇ? ちょっとだけ。ちょっとならいいじゃない?」
「ダメです、王子。遊んでいる暇はありません。我々は急いでビアステッド村まで行かないといけません」
―― え? 王子?
この人、王子なの?
私のイメージする王族は意地が悪い、庶民をゴミのように扱う人たちだ。私が普通に口を聞いたことに気を悪くしてなければいいのだけれど・・・
「5分だけ。5分だけならいいじゃない?」と王子はダダをこねている。まるで朝が苦手な子供を見ているようだ。
―― 私のイメージする王子と違う・・・
端正な顔立ち、ブロンドの髪、スラっとしていて、背も高い。部下に対しても偉そうな言い方をしないから、人当たりは良さそうだ。
私が王子を不思議そうに見ていたら、王子は私に話しかけた。
「ねえ。君は動物たちに芸とかさせられないの?」
「少しならできます。お見せしましょうか?」
「お願い! やってみて!」
「かしこまりました」
王子の命令だから従うしかない。それに、この王子だったら問題にならないような気がする。
「動物たち、我の命に従え・・・・おすわり!」
私がそういうと、数十の動物たちは一斉に地面に座った。王子や従者の連れている馬も座っている。
「王子、大変です。我々が乗っていた馬もお座りをしています!」と従者の一人が王子に言った。
「そう・・・みたいだね。これだけの数の動物を操れるのはすごいな。君、名前は?」
王子は笑いながら言った。
「アリスです。アリス・フィッシャーです」
「僕はカール・ハース。よろしく!」
そういうと王子は私に握手を求めた。
私は王子と握手をしていいのか躊躇(ためら)いながらも、王子の手を取った。
一向に急ぐ気配のない王子にしびれを切らした従者。
「王子、馬が座ったまま動こうとしません。ビアステッド村がワイバーンに襲われていて、今にも壊滅しそうなのに・・・」
「アラン、心配する必要はないよ」
王子は自信に満ちた顔をして言った。
「村に向かうことができないのに、どういうことですか?」
「いま僕たちの馬はアリスの命令しか聞かない」
「そうですけど・・・」
「つまり、アリスに僕たちと一緒に来てもらえばいいんじゃないかな?」
「この女性と一緒にワイバーン討伐に向かうのですか?」
「そうだよ。しかたないじゃない。ということで、アリス、君も一緒に来てくるかな?」
王子は笑顔で私に言った。
―― え? 私もワイバーン退治に行くの?
そもそも、王子が『動物に芸をさせてほしい』と言ったから、私は動物たちをお座りさせた。私に非はない。
それに、私は戦闘経験のない、買い物途中の普通の女の子。
「買い物途中だから・・・」と言えば許してくれるだろうか?
一抹の不安を抱えながらも、私はダメ元で言ってみた。
「食料の買い出し中なのです。今からはちょっと・・・」
「大丈夫だよ。僕の従者がアリスの代わりに買い物してくるから。買い物リストはある?」
笑顔で言うから、私はうっかり買い物リストを王子に渡してしまった。
買い物リストを受取った王子は、従者にそれを渡した。
「ほら、代わりに買い物して家に届けておく。だから、買い物のことは心配しなくても大丈夫だ」
「はあ・・・」
「これで僕たちと一緒に行けるね!」
王子は笑顔でそう言うと、私に手を差し出した。
「かしこまりました・・・」
しかたなく私が王子の手を取ると、王子は私を白馬の上に引き上げた。
私を乗せた馬は嬉しそうにビアステッド村に向けて走り始めた。後ろからは犬と猫が続く。
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