74 / 197
第4回活動報告:不正融資を取り締まれ
不正融資の内容を確認しよう(その2)
しおりを挟む
(3) 不正融資の内容を確認しよう <続き>
「ここまでくると、ほぼ詐欺ですね。その業者には、御社の営業マンが依頼するのですか?」
「いえ。そんな証拠が残るようなことはしません。顧客に偽造業者の連絡先を伝えて、顧客から直接連絡してもらっています。何か不正が発覚しても、『当社は知らなかった』と言えばいいだけです。」とウォルターが言った。
「そうすると、偽造指示の証拠を掴むのは難しいのか・・・。」と俺が言うと、
「でも、顧客は文書偽造で逮捕できそうです。」とミゲルが呑気に言った。
「それは困ります。」とウォルターは言った。
「ですよね?」
「・・・とはいえ、不正融資の調査をしていくと、顧客を逮捕してから当社の捜査を進めることになりますよね。顧客は当社の営業に勧められて、書類偽造をしてしまったわけですから。」
「手順としてはそうなるでしょう。それにしても、なぜ顧客はそこまでリスクを冒して、不動産投資をするのですか?」
「説明が難しいですね。端的に言うと、流行っているからです。」とウォルターは答えた。
「流行っている?」
「去年『不動産で不労所得の9割を手に入れよう!』という本が流行ったのをご存じですか?」
「もちろん知ってます。去年の一般書のベストセラーですね。」
「ええ。その本では不動産経営が楽観的に解説されていて、不動産さえ持っていればハッピーな人生が送れると考える人が増えました。」
「へー。そういえば、最近、不動産投資の広告をよく見る気がします。その本の影響かな?」
「ええ。その本の影響です。不動産会社が扱う物件にはいろいろあります。プロ投資家には、立地が悪い物件や利回りが低い物件は売れません。実需(実際に住むために不動産を購入すること)の場合は、広い間取りの物件しか売れません。これらのニーズには合わない単身者用のレジデンスを、当社は個人投資家に売っています。」
「顧客にとっては、儲からなくても買うことに意味があるのかー。すごい状況だ。」
俺は正直驚いている。不動産投資がここまで加熱しているとは知らなかった。
「今まであまり売れなかった単身者用の不動産が売れるようになって、販売価格が高くなりました。販売価格が高くなるのと、借入金を増やさないといけません。そうすると、ますます審査書類を改竄する必要が発生します。」
「すごいなー。ワンルーム投資バブルかー。」俺は感心して言った。
「私もこの業界に長くいますが、もう、無茶苦茶です。」
「でしょうね。私自身はワンルーム投資バブルを知りませんでしたけど、不動産市場が高騰している話は聞きません。不動産の全体的な市場価格は上がっているのですか?」と俺はウォルターに質問した。
「そうですねー。不動産価格は、全体としては上がっていません。例えば、もともと高額なオフィスビルはプロ投資家しか売買しないため、売買価格は変わりません。実需の不動産も、マイホームを買いたい家族が予算内で探すので、販売価格は同じです。流行りに乗って参入してきた個人投資家が買う、シングルタイプのレジデンスの価格だけが昨年比30%くらい上がりました。」
「影響は局所的に起きているのかー。知らなかったな。」
俺は個人投資家が買っている不動産について理解した。
最後に、俺はウォルターに幾つか質問した。
「それで、あなたから御社の内部資料を入手するのは避けた方がいいでしょう。不正融資について本格的に調査を開始する前に、こちらで情報を集めたいと思っています。申請書類や収入証明の偽造が行われたと思われる不動産物件を幾つか教えてもらえませんか?」と俺はウォルターに聞いた。
「それであれば、当社が『Lシリーズ』として販売している物件は、ほぼ全て対象です。」
「最後に一つ。書類を偽造している業者はどこか知っていますか?」
「マラニ印刷という印刷会社です。大きい会社なので、組織的に関与しているわけではないでしょう。ごく一部の従業員だけが関わっていると思います。ただ、私自身は偽造書類を依頼したわけではないので、担当者の名前は分かりません。」
「分かりました。ありがとうございます。」
俺たちはウォルターに礼を言って、総務省に戻ることにした。
これだけ聞けたら、ある程度はこちらで調べられるだろう。
不動産投資に加熱する個人投資家。
相場よりも高く売りたい不動産会社。
個人投資家に多く借入させるための不正融資。
闇は深そうだ・・・・
「ここまでくると、ほぼ詐欺ですね。その業者には、御社の営業マンが依頼するのですか?」
「いえ。そんな証拠が残るようなことはしません。顧客に偽造業者の連絡先を伝えて、顧客から直接連絡してもらっています。何か不正が発覚しても、『当社は知らなかった』と言えばいいだけです。」とウォルターが言った。
「そうすると、偽造指示の証拠を掴むのは難しいのか・・・。」と俺が言うと、
「でも、顧客は文書偽造で逮捕できそうです。」とミゲルが呑気に言った。
「それは困ります。」とウォルターは言った。
「ですよね?」
「・・・とはいえ、不正融資の調査をしていくと、顧客を逮捕してから当社の捜査を進めることになりますよね。顧客は当社の営業に勧められて、書類偽造をしてしまったわけですから。」
「手順としてはそうなるでしょう。それにしても、なぜ顧客はそこまでリスクを冒して、不動産投資をするのですか?」
「説明が難しいですね。端的に言うと、流行っているからです。」とウォルターは答えた。
「流行っている?」
「去年『不動産で不労所得の9割を手に入れよう!』という本が流行ったのをご存じですか?」
「もちろん知ってます。去年の一般書のベストセラーですね。」
「ええ。その本では不動産経営が楽観的に解説されていて、不動産さえ持っていればハッピーな人生が送れると考える人が増えました。」
「へー。そういえば、最近、不動産投資の広告をよく見る気がします。その本の影響かな?」
「ええ。その本の影響です。不動産会社が扱う物件にはいろいろあります。プロ投資家には、立地が悪い物件や利回りが低い物件は売れません。実需(実際に住むために不動産を購入すること)の場合は、広い間取りの物件しか売れません。これらのニーズには合わない単身者用のレジデンスを、当社は個人投資家に売っています。」
「顧客にとっては、儲からなくても買うことに意味があるのかー。すごい状況だ。」
俺は正直驚いている。不動産投資がここまで加熱しているとは知らなかった。
「今まであまり売れなかった単身者用の不動産が売れるようになって、販売価格が高くなりました。販売価格が高くなるのと、借入金を増やさないといけません。そうすると、ますます審査書類を改竄する必要が発生します。」
「すごいなー。ワンルーム投資バブルかー。」俺は感心して言った。
「私もこの業界に長くいますが、もう、無茶苦茶です。」
「でしょうね。私自身はワンルーム投資バブルを知りませんでしたけど、不動産市場が高騰している話は聞きません。不動産の全体的な市場価格は上がっているのですか?」と俺はウォルターに質問した。
「そうですねー。不動産価格は、全体としては上がっていません。例えば、もともと高額なオフィスビルはプロ投資家しか売買しないため、売買価格は変わりません。実需の不動産も、マイホームを買いたい家族が予算内で探すので、販売価格は同じです。流行りに乗って参入してきた個人投資家が買う、シングルタイプのレジデンスの価格だけが昨年比30%くらい上がりました。」
「影響は局所的に起きているのかー。知らなかったな。」
俺は個人投資家が買っている不動産について理解した。
最後に、俺はウォルターに幾つか質問した。
「それで、あなたから御社の内部資料を入手するのは避けた方がいいでしょう。不正融資について本格的に調査を開始する前に、こちらで情報を集めたいと思っています。申請書類や収入証明の偽造が行われたと思われる不動産物件を幾つか教えてもらえませんか?」と俺はウォルターに聞いた。
「それであれば、当社が『Lシリーズ』として販売している物件は、ほぼ全て対象です。」
「最後に一つ。書類を偽造している業者はどこか知っていますか?」
「マラニ印刷という印刷会社です。大きい会社なので、組織的に関与しているわけではないでしょう。ごく一部の従業員だけが関わっていると思います。ただ、私自身は偽造書類を依頼したわけではないので、担当者の名前は分かりません。」
「分かりました。ありがとうございます。」
俺たちはウォルターに礼を言って、総務省に戻ることにした。
これだけ聞けたら、ある程度はこちらで調べられるだろう。
不動産投資に加熱する個人投資家。
相場よりも高く売りたい不動産会社。
個人投資家に多く借入させるための不正融資。
闇は深そうだ・・・・
0
あなたにおすすめの小説
救世の結界師マールちゃん~無能だと廃棄されましたが、敵国で傭兵のおっさん達に餌付けされてるので、今さら必要と言われても戻りません~
ぽんぽこ@3/28新作発売!!
ファンタジー
「ウチの子、可愛いうえに最強すぎるんだが――!?」
魔の森の隣、辺境伯家。 そこで八歳のメイド・マールは、食事も与えられず“要らない人間”として扱われていた。
――そしてある日ついに、毒と魔獣の禁忌領域《魔の森》へ捨てられてしまう。
「ここ……どこ?」
現れた魔獣に襲われかけたその瞬間。
救いに現れたのは――敵国の”イケオジ”傭兵隊だった。
「ほら、食え」
「……いいの?」
焚き火のそばで差し出された“温かいお粥”は、マールに初めての「安心」と「ごはん」を教えてくれた。
行き場を失った幼女は、強面のおじさん傭兵たちに餌付けされ、守られ、少しずつ笑えるようになる―― そんなシナリオだったはずなのに。
旅の途中、マールは無意識に結界を張り、猛毒の果実を「安全な食べ物」に変えてしまう。
「これもおいしいよ、おじさん!食べて食べて!」
「ウチの子は天才か!?」
ただ食べたいだけ。 だけどその力は、国境も常識もくつがえす。
これは、捨てられた欠食幼女が、敵国でお腹いっぱい幸せになりながら、秘められた力で世界を巻き込んでいく物語。
※若干の百合風味を含みます。
他人の寿命が視える俺は理を捻じ曲げる。学園一の美令嬢を助けたら凄く優遇されることに
千石
ファンタジー
【第17回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞】
魔法学園4年生のグレイ・ズーは平凡な平民であるが、『他人の寿命が視える』という他の人にはない特殊な能力を持っていた。
ある日、学園一の美令嬢とすれ違った時、グレイは彼女の余命が本日までということを知ってしまう。
グレイは自分の特殊能力によって過去に周りから気味悪がられ、迫害されるということを経験していたためひたすら隠してきたのだが、
「・・・知ったからには黙っていられないよな」
と何とかしようと行動を開始する。
そのことが切っ掛けでグレイの生活が一変していくのであった。
他の投稿サイトでも掲載してます。
※表紙の絵はAIが生成したものであり、著作権に関する最終的な責任は負いかねます。
企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する
namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。
転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。
しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。
凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。
詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。
それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。
「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」
前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。
痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。
そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。
これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。
濡れ衣を着せられ、パーティーを追放されたおっさん、実は最強スキルの持ち主でした。復讐なんてしません。田舎でのんびりスローライフ。
さら
ファンタジー
長年パーティーを支えてきた中年冒険者ガルドは、討伐失敗の責任と横領の濡れ衣を着せられ、仲間から一方的に追放される。弁明も復讐も選ばず、彼が向かったのは人里離れた辺境の小さな村だった。
荒れた空き家を借り、畑を耕し、村人を手伝いながら始めた静かな生活。しかしガルドは、自覚のないまま最強クラスの力を持っていた。魔物の動きを抑え、村の環境そのものを安定させるその存在は、次第に村にとって欠かせないものとなっていく。
一方、彼を追放した元パーティーは崩壊の道を辿り、真実も勝手に明るみに出ていく。だがガルドは振り返らない。求めるのは名誉でもざまぁでもなく、ただ穏やかな日々だけ。
これは、最強でありながら争わず、静かに居場所を見つけたおっさんの、のんびりスローライフ譚。
英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~
ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国の辺境で、ただ静かに生き延びたいと願う少年、ヴァン。
彼に正義感はない。あるのは、前世の記憶と、母が遺した『物理法則を応用した高圧魔力』という危険な理論だけだ。
敵の大軍が迫る中、ヴァンは剣も振るわず、補給線と心理を切り裂く。
結果、敵軍は撤退。代償も、喝采も、彼には無意味だった。
だが、その「効率的すぎる勝利」は帝国の目に留まり、彼は最高峰の『帝国軍事学院』へと引きずり出される。
「英雄になりたいわけじゃない。生き残りたいだけだ」
謎の仮面メイド『シンカク』、命を取引に差し出した狼耳の少女『アイリ』。
少年は選択する。正義ではなく、最も費用対効果の高い道を。
これは、合理が英雄譚を侵食していく、学園ミリタリーファンタジー。
【※作者は日本語を勉強中の外国人です。翻訳ソフトと辞書を駆使して執筆しています。至らない点もあるかと思いますが、物語を楽しんでいただければ幸いです。】
「役立たず」と追放されたが、俺のスキルは【経験値委託】だ。解除した瞬間、勇者パーティーはレベル1に戻り、俺だけレベル9999になった
たまごころ
ファンタジー
「悪いがクビだ、アレン。お前のような戦闘スキルのない寄生虫は、魔王討伐の旅には連れていけない」
幼馴染の勇者と、恋人だった聖女からそう告げられ、俺は極寒の雪山に捨てられた。
だが、彼らは勘違いしている。
俺のスキルは、単なる【魔力譲渡】じゃない。
パーティメンバーが得た経験値を管理・分配し、底上げする【経験値委託(キックバック)】という神スキルだったのだ。
俺をパーティから外すということは、契約解除を意味する。
つまり――今まで彼らが俺のおかげで得ていた「かさ増しステータス」が消え、俺が預けていた膨大な「累積経験値」が全て俺に返還されるということだ。
「スキル解除。……さて、長年の利子も含めて、たっぷり返してもらおうか」
その瞬間、俺のレベルは15から9999へ。
一方、勇者たちはレベル70から初期レベルの1へと転落した。
これは、最強の力を取り戻した俺が、雪山の守り神である銀狼(美少女)や、封印されし魔神(美少女)を従えて無双し、新たな国を作る物語。
そして、レベル1に戻ってゴブリンにも勝てなくなった元勇者たちが、絶望のどん底へ落ちていく「ざまぁ」の記録である。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる