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第5回活動報告:仮想通貨の詐欺集団を捕まえろ

会社に提案しにいこう(その3)

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(12)会社に提案しにいこう <続き>

私はジャービット・エクスチェンジへの提案事項を説明する。

「今日は、当社からの提案をお伝えしに来ました。こちらからの提案について、まず、資料のこのページを見て下さい。」私は、書面の該当箇所を指して言った。

<提案事項のサマリー>
==============
提案1:ジャービットの株式を既存株主からi5が1JDで買取る。その後、i5はジャービットに5億JDを出資する。

提案2:ジャービットの株式を既存株主から1億JDで買取る。その後、ジャービットは投資有価証券を既存株主(現経営陣)に1億JDで売却する。i5はジャービットに4億JDを出資する。

前提事項1:ジャービットの発行済株式100%をi5が取得。
前提事項2:ジャービットの純資産額を16億JDと評価。
その他:現経営陣の2年間の留任。
==============

※JD(ジャービス・ドル)はジャービス王国の法定通貨です。1JD=1円と考えて下さい。

「内容について、ご説明します。まず、当社が御社のスポンサーになるにあたって、ジャービットの発行済株式の100%を既存株主から取得することを前提とします。
次に、デューデリの結果、ジャービットの純資産を16億JDと評価しています。
これに対して、御社は顧客から1ジャービット・コインを2万JDで買取ることを希望しています。顧客は10万ジャービット・コインを保有しているため、顧客への支払総額は20億JDです。
すなわち、ジャービットの純資産は16億JD、顧客への支払総額は20億JDなので、実質純資産額はマイナスです。このため、ジャービットの株式価値はゼロと評価しています。」

「評価結果はこれ(図表5-5)ですね。投資有価証券の評価額は上場予定の2社が5億JD、その他が1億JD。預金10億JDと投資有価証券6億JDを合計して、純資産が16億JDですね。」とホセが言った。

【図表5-5:ジャービットの貸借対照表(再掲)】


「そうです。今回は民事再生を前提にしているため、換金可能額をメインに評価しています。
上場承認がおりた2社は直ぐに換金可能なため、売出価格で計算をして5億JDと評価しています。他の非上場株式については帳簿上の1株当たり簿価純資産額を基に評価しています。」と私は説明した。ホセから追加の質問が出ないので、話を進める。

※簿価純資産額法とは、対象会社の帳簿上の純資産額を発行済株式総数(自己株式を除く)で除して(割る:÷)、保有株式数を乗じて(掛ける:×)計算する株式価値の計算方法です。

「ジャービットの評価を前提とした、当社からの提案は2つです。」

そう言って私は2つの提案事項を説明した。

「まず、今回の我々の投資対象は暗号資産の発行会社と交換業者です。ジャービットの保有する投資有価証券にいくら価値があったとしても、メインの投資対象ではないため高い評価額にはなりません。このため、上場承認された2社を除く投資有価証券を1億JDと評価しています。
また、我々はジャービットが投資有価証券を継続保有しても、しなくてもどちらでも構わないと考えています。このため、現経営陣に投資有価証券を取得するか否かを決めてもらおうと思っています。」と私は言った。

「我々が投資有価証券を取得する場合(提案2)は、御社に1億JDでジャービット株式を譲渡します。このジャービット株式の売却代金で、非上場会社60社の株式を取得すればよい、ということですか?」とホセが言った。

「そういうことです。提案2は、経済実態として、ジャービット株式と非上場会社60社の株式の交換取引と同じことです。提案1は、そういうオプションはありません。」

「それで、提案1と提案2のどちらかを、私たちに選んでほしいと。」とホセは言った。

「はい。それとは別に、もう一つ依頼事項があります。少なくとも1人以上の役員に、ジャービット・エクスチェンジの社長として、留任をお願いしたいと考えています。長期間は年齢的に難しいと代理人弁護士のビルから聞いていますから、2年間だけ引受けて下さい。」

「それでは、私たちが判断する事項は、御社からの提案のうち1つを選ぶこと、2年間の留任を受入れるかどうか、の2点でよろしいですか?」とホセは私に聞いてきた。

「そうです。その2点が当社からの提案です。」

「分かりました。」とホセは言った。

「ちなみに、i5からの出資額はこの書面では5億JDと記載しています。これは、全ての顧客からジャービット・コインを2万JDで買取った場合にジャービットに追加で必要な資金が5億JDだからです。実際にはジャービット・コインを売却しない顧客もいるでしょうから、買取資金に追加で必要となるのは、5億JDを下回るとは思いますが。」と私はi5からジャービットへの出資額の根拠を説明した。

「足りない場合は、追加出資してもらえますか?」と弁護士のビルが聞いてきた。
もう一度倒産すると困るからだろう。

「それはご心配なく。もし運転資金など追加の資金が必要な場合は、i5からジャービットに対して、融資するか出資して資金不足額を補填する予定です。」と私は質問に答えた。

ホセたちは私たちからの提案について考えているようだ。

すぐに結論は出ないかも知れないな・・・。

<続く>
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