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第2回活動報告:カルテルを潰せ
カルテルを疑え(その8)
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(5)カルテルを疑え <続き>
俺は具体的に銅価格を引き下げる仕組みを、内部調査部のメンバーに説明することにした。
「『カルテル潰し作戦』の具体的な内容は、こんな感じだ(図表2-6)。」そう言って俺は、ホワイトボードに取引の流れを書いた。
【図表2-6:銅の輸入・国内販売の流れ】
「まず、ジャービス王国が出資して、秘密裏に会社を設立する。会社名は内部調査部を英語にすると『internal investigation』だから、仮に『i2』としよう。」
「なぜ2からスタート?」とルイーズが言った。
「本当は英語の最初のアルファベットのiを2個にして、『ii』とかの方がいんだろうけど。『アイアイ』って、母音が4個も続くから言いにくいでしょ。それに、お猿さんみたいだ。」と俺は答えた。
※アイアイとは、哺乳綱霊長目アイアイ科アイアイ属に分類される霊長類。リスとコウモリとサルを寄せ集めたような姿で、悪魔の使いとも言われる。
「『ii』ってiが2個続いているから、正しくは『i×i』又は『i^2(iの2乗:i squared)』でしょ。
『i2』は『i+i』又は『i×2』じゃないと変だよ。」とルイーズが言った。
いつものように、変なところに拘りがあるようだが、今回はとにかく、2が気に入らないようだ。
「『i squared(アイ・スクエアード)』って、言いにくくない?『i2(アイ・ツ―)』の方が言いやすいと思うよ。」と俺は反論する。
「じゃあ、ダニエルは『アイ・ツ―』って呼べばいいじゃない。私は『アイ・スクエアード』って呼ぶから。」とルイーズは言った。
どうやら交渉は決裂したようだ。
こういう時、他のメンバーは話に入ってこない。ミゲルでさえ、下を見ている。
俺は気を取り直して、説明を続けることにした。
「まず、i2が銅を仕入れる外国の会社または鉱山会社は、外務省に手配してもらおうと思う。外交関係で銅産出国とも付き合いがあるから、どこか紹介してくれるだろう。」俺はホワイトボード(図表2-6)を指して言った。
「次に、銅の輸入に使うタンカーと港は、国内商社に知られないように、軍船と軍港を利用しよう。国内商社が利用している船舶会社や港を使うと、銅の輸入がバレる可能性がある。
さらに、仕入れてきた銅は、政府系鉱山会社のジャービス鋼業を経由して市場で売却しようと思う。ジャービス鋼業が販売すれば、他の商社は、輸入によって供給量が増えたのではなく、ジャービス国内の鉱山会社の生産量が増えたと思うはずだ。」と俺は言った。
「さすが部長!その後は、カルテルが崩れて銅価格が下落していくわけですね。」と太鼓持ちのミゲルが続いた。
「いかにもダニエルらしい、卑怯な手口だね。」と俺の説明を聞いたルイーズがボソッと言った。今日は、いちいち突っかかってくる。
「それにしても、やりすぎじゃない?民業圧迫と言われそう。」とルイーズは話を続けた。
「いや、そんなことない。カルテルを結んで自由競争を阻害している方が悪い。
カルテルを摘発できないのであれば、『カルテル潰し作戦』に移行した方が、時間も手間も省略できる。それに、国家権力に喧嘩を売ったことを、後悔させてやらないといけない。」
「誰も喧嘩を売ってない。アンタが勝手に逆恨みしているだけ。」とルイーズは投げやりに言った。
俺は気を取り直して、話を続ける。
「それで、新しく設立する会社(i2)は銅を6か月間輸入・販売した後は清算するつもりだ。俺が社長になるわけにいかないから、施設長をしていた経験から、ミゲルが就任してくれないかな?経歴、年齢、見た目がちょうどいいと思うんだ。」と俺はミゲルに聞いた。
俺に急に社長就任を打診されたミゲルは困惑している。いろんなことを考えているのだろう。
少し考えた後、ミゲルは俺に「一つ確認したいのですが」と言った。
「何かな?」
「私が社長に就任しても、銅の輸入取引の保証人になったり、運転資金の借入の保証人になったりしなくても大丈夫ですか?」とミゲルは遠慮がちに俺に質問した。
ミゲルはロイの件があったから、保証人にはなりたくないと思っているようだ。
銅の輸入取引となると、規模は小さくない。もし保証人になって何かあったら大変だと思うのは当然だろう。
「もちろん。保証人になる必要はない。資金は全てジャービス政府が出すからリスクはゼロ。6カ月の短期派遣だ。さらに、社長手当も付けよう。」と俺は言った。
「そういうことであれば、社長就任の件、お受けします。」とミゲルは納得した。
「じゃあ、『カルテル潰し作戦』の準備に取り掛かろう!」
「ところで、役割分担はどうするの?」とルイーズが俺に言った。
「ミゲル、ガブリエル、ロイ、ポールは手分けして、新会社の設立、銀行口座の開設、銅の輸入に必要な許認可等の申請をお願いしたい。それと、ルイーズとスミスは、俺に着いてきてくれるかな。銅の輸入取引を進めるためには根回しが必要だから、説明に行かないといけない。」
会議はそういう流れで散会した。
『カルテル潰し作戦』の決行だ!
俺は具体的に銅価格を引き下げる仕組みを、内部調査部のメンバーに説明することにした。
「『カルテル潰し作戦』の具体的な内容は、こんな感じだ(図表2-6)。」そう言って俺は、ホワイトボードに取引の流れを書いた。
【図表2-6:銅の輸入・国内販売の流れ】
「まず、ジャービス王国が出資して、秘密裏に会社を設立する。会社名は内部調査部を英語にすると『internal investigation』だから、仮に『i2』としよう。」
「なぜ2からスタート?」とルイーズが言った。
「本当は英語の最初のアルファベットのiを2個にして、『ii』とかの方がいんだろうけど。『アイアイ』って、母音が4個も続くから言いにくいでしょ。それに、お猿さんみたいだ。」と俺は答えた。
※アイアイとは、哺乳綱霊長目アイアイ科アイアイ属に分類される霊長類。リスとコウモリとサルを寄せ集めたような姿で、悪魔の使いとも言われる。
「『ii』ってiが2個続いているから、正しくは『i×i』又は『i^2(iの2乗:i squared)』でしょ。
『i2』は『i+i』又は『i×2』じゃないと変だよ。」とルイーズが言った。
いつものように、変なところに拘りがあるようだが、今回はとにかく、2が気に入らないようだ。
「『i squared(アイ・スクエアード)』って、言いにくくない?『i2(アイ・ツ―)』の方が言いやすいと思うよ。」と俺は反論する。
「じゃあ、ダニエルは『アイ・ツ―』って呼べばいいじゃない。私は『アイ・スクエアード』って呼ぶから。」とルイーズは言った。
どうやら交渉は決裂したようだ。
こういう時、他のメンバーは話に入ってこない。ミゲルでさえ、下を見ている。
俺は気を取り直して、説明を続けることにした。
「まず、i2が銅を仕入れる外国の会社または鉱山会社は、外務省に手配してもらおうと思う。外交関係で銅産出国とも付き合いがあるから、どこか紹介してくれるだろう。」俺はホワイトボード(図表2-6)を指して言った。
「次に、銅の輸入に使うタンカーと港は、国内商社に知られないように、軍船と軍港を利用しよう。国内商社が利用している船舶会社や港を使うと、銅の輸入がバレる可能性がある。
さらに、仕入れてきた銅は、政府系鉱山会社のジャービス鋼業を経由して市場で売却しようと思う。ジャービス鋼業が販売すれば、他の商社は、輸入によって供給量が増えたのではなく、ジャービス国内の鉱山会社の生産量が増えたと思うはずだ。」と俺は言った。
「さすが部長!その後は、カルテルが崩れて銅価格が下落していくわけですね。」と太鼓持ちのミゲルが続いた。
「いかにもダニエルらしい、卑怯な手口だね。」と俺の説明を聞いたルイーズがボソッと言った。今日は、いちいち突っかかってくる。
「それにしても、やりすぎじゃない?民業圧迫と言われそう。」とルイーズは話を続けた。
「いや、そんなことない。カルテルを結んで自由競争を阻害している方が悪い。
カルテルを摘発できないのであれば、『カルテル潰し作戦』に移行した方が、時間も手間も省略できる。それに、国家権力に喧嘩を売ったことを、後悔させてやらないといけない。」
「誰も喧嘩を売ってない。アンタが勝手に逆恨みしているだけ。」とルイーズは投げやりに言った。
俺は気を取り直して、話を続ける。
「それで、新しく設立する会社(i2)は銅を6か月間輸入・販売した後は清算するつもりだ。俺が社長になるわけにいかないから、施設長をしていた経験から、ミゲルが就任してくれないかな?経歴、年齢、見た目がちょうどいいと思うんだ。」と俺はミゲルに聞いた。
俺に急に社長就任を打診されたミゲルは困惑している。いろんなことを考えているのだろう。
少し考えた後、ミゲルは俺に「一つ確認したいのですが」と言った。
「何かな?」
「私が社長に就任しても、銅の輸入取引の保証人になったり、運転資金の借入の保証人になったりしなくても大丈夫ですか?」とミゲルは遠慮がちに俺に質問した。
ミゲルはロイの件があったから、保証人にはなりたくないと思っているようだ。
銅の輸入取引となると、規模は小さくない。もし保証人になって何かあったら大変だと思うのは当然だろう。
「もちろん。保証人になる必要はない。資金は全てジャービス政府が出すからリスクはゼロ。6カ月の短期派遣だ。さらに、社長手当も付けよう。」と俺は言った。
「そういうことであれば、社長就任の件、お受けします。」とミゲルは納得した。
「じゃあ、『カルテル潰し作戦』の準備に取り掛かろう!」
「ところで、役割分担はどうするの?」とルイーズが俺に言った。
「ミゲル、ガブリエル、ロイ、ポールは手分けして、新会社の設立、銀行口座の開設、銅の輸入に必要な許認可等の申請をお願いしたい。それと、ルイーズとスミスは、俺に着いてきてくれるかな。銅の輸入取引を進めるためには根回しが必要だから、説明に行かないといけない。」
会議はそういう流れで散会した。
『カルテル潰し作戦』の決行だ!
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