上 下
24 / 24

兜町の男

しおりを挟む

小角は武に『テロリストの資金源を断ってほしい』と依頼しようと考えている。
一方の武は『小学生には無理でしょ・・・』と思っている。

武は依頼を断る口実を探すために小角に質問した。

「ピーチ・ボーイズの資金源を断つのは、おじさんたちの仕事じゃないの?」

「それがな、我々が動くのは難しいのだ。我々と地球には不可侵条約があってな・・・」
小角は意味深な言い方をした。

武は『不可侵条約』に少し興味を持った。

「どういうこと?」

「ダグラス・ピーチはこの惑星ではテロリストだ。この惑星では犯罪者として逮捕することもできるし、裁くこともできる。しかし、ダグラス・ピーチは地球では違法な行為をしているわけではない。法に触れない行為をしている人間を、我々は地球では逮捕できないし、攻撃したり、その行為を妨害したりすることはできない」

小角の説明は回りくどいから、武には何が言いたいのか分からない。

「ちょっと分かりにくいんだけど・・・」と武は言った。

「例えば、地球のある会社が自動車を製造しているとする。我々の科学文明の方が進んでいるから、我々が地球で会社を作って自動車を製造すると、我々の方が勝ってしまうだろう。そうすると、地球の科学技術の発展を阻害することになる」

「営業妨害ってことかな?」

「そうだ。不可侵条約とは営業妨害禁止条約だな。ダグラス・ピーチの資金源を止めようとすると、我々が地球のビジネスを邪魔することになる。だから、我々が動くのはダメなんだ」

「へー。そうなんだ」武は興味なさそうに言った。

「だから、お主たちにピーチ・ボーイズの資金源を断ってほしいのだ」小角は改めて言った。

武はこの話に興味を持てない。それに、菊さんの方をチラッと見たら首を振っている。お菊さんも乗り気じゃないようだ。
武は小角の依頼を断ることにした。

「気持ちは分かるけど、僕たちには無理だよ。フィクサーと戦えと言われても、僕には何をしたらいいか分からない」

「フィクサーと戦う方法か・・・。それなら問題ないぞ。専門知識を持った人物を紹介しよう」小角はそう提案した。

「専門知識を持った人物がいるんだったら、その人に頼んだらいいじゃない?」

「ダメだ。彼は地球人じゃない。今回の件を実行すると不可侵条約に引っかかるから、彼に依頼はできない」と小角は言った。

「でも、僕たちには無理だよ。別の人を探してよ」

小角は何としても武たちに依頼を受けてもらいたいから悪あがきを続ける。

「受けるかどうかはともかく、一度、彼に会ってくれないか? この件を手伝ってくれるかどうかは、話を聞いてから判断してくれればいい」

「いやだよー」

「そこを何とか・・・。頼む!」

小角は一向に引く気配はない。
武はこのまま押し問答をするのが面倒になってきた。
話を聞くだけだったらいいか・・・と思い始めた。

「会うだけだよ・・・」と武は仕方なく言った。

「ありがとう。感謝する」
そう言うと、小角は椅子に縛られたまま武に頭を下げた。

武はお菊さんのところに行って、拘束を解いた。
お菊さんは武を睨んでいる。
余計なことを言ってしまったようだが、小学生男子に二言は無い。

「それで、その人はどこにいるの?」

「兜町にいる。前鬼に案内させるから菊と3人で行ってくれ」

「分かったよ」

――兜町ってどこにあるんだろう?

土地勘のない武には兜町がどこにあるのか分からない。
でも今は考えても仕方がないことだ。
武はお菊さんと一緒に、前鬼の案内でゲートに向かった。


<第3章終わり>
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

変人しかいないアパートにて。不毛すぎるアタシの毎日

コダーマ
青春
【うちに突然、桃太郎が住みつきだした!】  家に帰ると何かいる。  チョンマゲ結って、スーツにピンクのネクタイ。  ワラジを履いたメガネ男。  「桃太郎」と名乗ったソイツは、信じられないことにアタシの部屋に居座る気だ。  高校受験に失敗したリカが住むのは、完璧美人の姉が経営するアパート(ボロ)。  キテレツな住人たちを相手に、リカは関西人のサガで鋭いツッコミを入れまくる。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

教え子に手を出した塾講師の話

神谷 愛
恋愛
バイトしている塾に通い始めた女生徒の担任になった私は授業をし、その中で一線を越えてしまう話

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

冬の水葬

束原ミヤコ
青春
夕霧七瀬(ユウギリナナセ)は、一つ年上の幼なじみ、凪蓮水(ナギハスミ)が好き。 凪が高校生になってから疎遠になってしまっていたけれど、ずっと好きだった。 高校一年生になった夕霧は、凪と同じ高校に通えることを楽しみにしていた。 美術部の凪を追いかけて美術部に入り、気安い幼なじみの間柄に戻ることができたと思っていた―― けれど、そのときにはすでに、凪の心には消えない傷ができてしまっていた。 ある女性に捕らわれた凪と、それを追いかける夕霧の、繰り返す冬の話。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

いつかの月ひとめぐり

おくむらなをし
現代文学
毅(たけし)は会社の金をくすねてボコボコにされ河川敷に捨てられた。 その日、父親からの連絡で聞かされたのは、兄が職場で倒れ意識不明の状態だという事。 ワケあって兄に預けていた娘の今後について話し合うため、毅は一時帰省する。 たったひと月、けれど大切なひと月の話。 ◇この物語はフィクションです。全31話、完結済み。

処理中です...